AI合成動画が海外でミーム化 観客煽るラッパーを、映画やアニメのキャラに置き換え

観客で超満員の野外ステージに颯爽と登場し、爆音のサウンドと共にフロアを沸かせる……。最近、SNSや動画サイトで、こんな動画を観たことはありませんか?

観客を煽っているのは、映画やアニメの登場キャラクターや著名人、そして話題の渦中にある人物たち。このミーム動画は「Lil Yachty Walks Out On Stage」と呼ばれる動画を、AI動画編集アプリで加工したものです。

今回は、そんなテンション爆上げのミーム動画の元ネタとヒットした経緯を解説します。

ミームの元ネタは米ラッパーのリル・ヨッティ

ミーム動画の元ネタになったのは、米ラッパーのリル・ヨッティ(Lil Yachty)さん。

2021年8月にシカゴで開催された夏フェス「The Lyrical Lemonade Summer Smash」でステージに登場するリル・ヨッティさんを捉えた動画が起源です。

爆音で流れているのは、リル・ヨッティさんの「COFFIN」という楽曲。

リラックスした様子のリル・ヨッティさんと、登場を前に爆発寸前のリスナーたちの対比が効いた動画になっています。

「The Extra」というYouTubeチャンネルが、2022年6月にこの動画を投稿。

「Lil Yachty with the HARDEST walk out EVER(筆者訳:Lil Yachtyのこれまでで一番ヤバい登場シーン)」とのタイトルで、現在、約450万回再生を記録しています。

AI動画編集アプリを紹介する投稿からミーム化

この動画が、ヒップホップ以外の文脈で取り上げられたのが、2024年4月9日。

A.I.WarperというXのアカウントが、AI動画編集アプリの「Viggle AI」を紹介する目的で、Lil Yachtyさんを2019年の映画『ジョーカー』でホアキン・フェニックスさんが演じたジョーカーに加工。

その加工の仕方を含めて一連のスレッドに投稿し、多くの注目を集めました(外部リンク)。

この投稿を受けて、リル・ヨッティさんを有名人に入れ替えた動画が拡散。SNSで検索すると、漫画『呪術廻戦』の伏黒甚爾に置き換えたものなど様々な動画がヒットしています(外部リンク)

著作権や肖像権の問題がついてまわるミーム動画

国外ではこうして有名になった「Lil Yachty Walks Out On Stage」のミーム。

日本では、銀行詐欺の疑いで英語圏と日本語圏を跨ぎ注目を集めている、大谷翔平投手の元通訳・水原一平さんがミーム動画化されたことで知られるようになりました。

(なおSNSでは、今回の「Lil Yachty Walks Out On Stage」の他にも、水原一平さんを登場させたミーム画像・動画が散見されています)

「Viggle AI」を用いた今回の動画の加工精度は粗く、ひと目見ただけで見分けがつくもの。ですが、こうしたミーム動画には、著作権や肖像権侵害の問題がつきもの。

また、AIでフェイク動画がつくれる状況を懸念する声が上がっていることも忘れてはなりません。

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