歴史的円安水準 県内のインバウンドの影響は?

外国為替市場の円相場は17日、1ドル=154円65銭前後と以前として円安傾向が続いています。この影響で海外からの外国人観光客、いわゆるインバウンド需要は高まっていますが県内への経済波及効果はあるのでしょうか?取材しました。

今月10日のニューヨーク為替市場での円相場は1ドル153円台と、約34年ぶりの円安水準をつけました。この歴史的な円安について九州経済研究所の福留一郎部長は次のように分析します。

九州経済研究所 福留一郎経済調査部長
「当面はこの動きが続くという風に見ないといけないと思う。なぜかというと、アメリカが景気がずっと過熱気味で収まる気配がない。少なくとも一年ぐらいはこの傾向が続く可能性があると見た方がいい」

円安は、海外からの輸入品の価格上昇につながり、私たちには「物価高」として影響がある一方、日本を訪れる外国人観光客にとっては、よりお金を使いやすい状況が生まれていると言えます。

17日朝のマリンポートかごしまです。コロナ禍以前の水準に回復したクルーズ船の寄港。クルーズ船の乗船客に円安について聞いてみました。

Q.円安のことを知っていますか?
「はい、あなたにとっては残念なことです。米ドルにとっては良いことです」
「以前は日本は物価が高いことで知られていたが、今はもっと安いようだ」
Q.円が安いと買い物を楽しみたい気持ちになる?
「もちろん!」
Q.何を買いたい?
妻「靴、バック、ドレス」夫「私には何もありません」

外国人観光客の買い物需要は鹿児島の街に影響しているのでしょうか?
天文館のかごしま特産品市場には欧米からの観光客が訪れていました。市場の関係者は最近の外国人観光客の傾向をこう話します。

県商工会連合会・鳥丸亮さん
「コロナ禍前と比べて、来られるお客様の人種が多様化しているのは何となく感じます。いわゆるアジア圏以外のヨーロッパ、アメリカ圏の方がたくさんご来店いただいています」

これについて福留さんはデータで裏付けます。県内に入港するクルーズ船の数は従来に戻っているものの、10万トンを超える大型船の割合が減少しています。

九州経済研究所・福留一郎経済調査部長
「コロナ禍前は大型船で、特に中国の観光客が大挙して押し寄せて、いわゆる“爆買い”が鹿児島にもあった。今、その傾向は中国が国内景気の鎮静化で中国からのクルーズ船が少なくなった。一方、欧米から来ているのは、大型のクルーズ船とは違って中型小型、ラグジュアリーとかプレミアムのクラス」

中型、小型のクルーズ船の客層はいわゆる富裕層が多くを占めます。彼らは生活用品を大量に買うのではなく、訪れた土地でその文化を楽しむ傾向があるようです。

市場にいた外国人女性
Q.円安だからたくさん買い物をする?
「必ずしもそうではない。私たちは文化やおいしいお店、提供されているものを楽しんでいる」

外国人観光客の増加は必ずしも、店舗や飲食店の売り上げに直結しているわけではなさそうです。

県商工会連合会・鳥丸亮さん
「消費行動の違いはあるかと思うが、せっかく鹿児島にきてくれたのだから、鹿児島のいい物を積極的に発信してたくさん買っていただけるよう、我々も努力していきたい」

九州経済研究所・福留一郎経済調査部長
「客層に合わせてそれぞれ戦略が異なるので、そこを追及していかないと。もうコロナ前の常識は通用しないという気持ちでいかないといけない、という風に思います」

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