映画館がない喜界島で映画上映会 子どもたちがヘッドホンで楽しむ

鹿児島・奄美群島にある喜界島で3月、映画の上映会が開かれました。映画館のない島で「住民に喜んでもらおう」と、地域おこし協力隊の男性が企画しました。通常の映画館とは異なる鑑賞方法を取り入れ、映画館に行ったことがない子どもから、久々に映画を見た大人まで、島の人たちは多いに満足したようです。

奄美大島の東に位置する喜界島。

人口約6300人の島には娯楽施設がほとんどありません。

そんな中、「島の人たちがわくわくできるような取り組みがしたい」と一人の男性が立ち上がりました。

東京出身で2021年から鹿児島県喜界町で、地域おこし協力隊として働いている谷川理さん、41歳。

喜界町地域おこし協力隊・谷川理さん
「サラリーマン時代のいつか分からないときのボーナスで買ったものだな」

ボランティアスタッフと2人で自宅から大きなソファを運び出しています。

ソファを軽トラックに乗せて向かった先は、、、

喜界町地域おこし協力隊・谷川理さん
「今回、ライブハウスを映画館にしたいなというところで、ライブハウスの機材とプラスアルファで、ゆっくり映画が見られる環境が作れたらと思ってソファを持ち込もうと思います」

島には40数年前に映画館が1軒あったそうですが、現在は営業していません。

谷川さんが企画したのは飲食店を兼ねたこのライブハウスでの上映会です。

自宅のソファ以外に町の施設にある椅子なども借りて、次々とライブハウスに持ち込み映画館に仕立てていきます。

ライブハウスのオーナー・栄忠則代表
「この店でやるとは予想していなくて。子どもたちが喜んでくれる姿を見るのが一番。やっぱり元気を僕らももらえますので、非常に楽しみにしています」

この場所で谷川さんが上映会を開くのは2年ぶりです。

喜界町地域おこし協力隊・谷川理さん
「大きいスクリーンで、みんなで映画を見る時間を共有しながら楽しむというのを島でもできたらいいなという風に思いましたし、島の子どもたちだったり、映画に触れるきっかけとか機会づくりというのが、協力隊の活動を通じてできたらそれは面白いと思った」

地域おこし協力隊として、喜界島のPRや観光資源の発掘に力を入れている谷川さん。前の職場で知り合った映画関係者を通じて、この上映会にこぎつけました。

そして、上映会当日。

続々と住民たちが集まってきました。

上映会に来た住民
母「新鮮なことで、子どもたちもすごい楽しみにしていて」
子「マリオの映画が楽しみ」

映画を見に来た子ども
「(映画館で映画を見たことは?)いやないです。まったく。わくわくしている。(映画館のイメージは)ポップコーンを食べてテレビ見て帰るところ」

奄美支局・麓伊賀久記者
「今回の映画の上映の特徴の一つが、こちらのヘッドホンを使った上映です」

会場に入る前に住民が受け取っているこのヘッドホン。最新技術が使われています。

中ではハンバーガーやポップコーンなども販売され、映画館さながらの雰囲気です。

そして、上映が始まります。静かな雰囲気静まりかえった会場。

映画の音声は先ほどのワイヤレスのヘッドホンに同時に送信されています。

「サイレントシアター」と呼ばれる上映システムで、隣の人の雑音を気にせず、映画の世界に没入することができます。

静かな会場には時々、笑い声だけが響き訪れた人は食い入るように映画を見ていました。

今回上映されたのは3作品で、このうち瀬戸内町などで撮影されたドキュメンタリー映画「夫とちょっと離れて島暮らし」では、主演俳優と監督のトークショーも行われました。

映画を見た住民
「めっちゃ面白かった。ポップコーンは映画を見ながら食べるというのもあって、めっちゃうまかった」

映画を見た子ども女子2人組
「喜界島には映画館がないので、こういうところで見られるのはうれしい」

映画を見た住民
「大きな画面で、ヘッドホンの音質も良くて、いい環境で映画が見られるのすごくいいなと思った」

喜界町地域おこし協力隊・谷川理さん
「実際映画が終わってから感想聞いたら、すごく良かったとか、また見たいという声をいただいたので、準備が大変だったが、喜界島で実施することができて本当に良かったと思いました。次回につなげていけたらと思う」

喜界島を盛り上げたいと奮闘する谷川さんの手作りの上映会は島の人たちの記憶や思い出に残るイベントになったようです。

上映会は2日間開かれ、計164人の住民が鑑賞しました。

© 鹿児島テレビ放送