霜降り明星・粗品の圧倒的な物量と出力 その活動の真意はどこにあるのか

17日、霜降り明星・粗品が自らのYouTubeの個人サブチャンネル「粗品のロケ」で最新動画を公開した。そのタイトルは「女子高生太客にサプライズで手作りケーキをプレゼントする粗品【女子高生太客に会う#2】」というもの。粗品が先日まで高校生だった若い女性ファンを招き、ケーキを手作りして19歳の誕生日を祝うという内容だ。

この動画に先だって15日には不器用ながらにケーキを手作りする様子も公開している。

そして、この女性ファン「一生おたくちゃん」は先日同チャンネルで公開された「Finance Fun」という、ファンの中から粗品に金を貸せる人間をオーディションするという、ちょっとどうかしている企画の参加者の一人である。一生おたくちゃんはアルバイトで貯めたなけなしの10万円を粗品に貸すために持参し、当の粗品から「安すぎる」「10万では何の足しにもならん」と冷たくあしらわれ、早々に退出させられた女性なのである。

冷たいのか、優しいのか。ファンにどう思われたいのか。視聴者を怒らせたいのか、感動させたいのか。上品なのか、下品なのか。

12日に放送された『酒のツマミになる話』(フジテレビ系)に出演した際には「YouTuberおもんないっすよね」「芸人なのにYouTuberおもろいやんって言ってるヤツ、めっちゃ嫌いで」「宮迫とか」と発言し、物議を醸したばかりの粗品。この発言は、多分に共演していた元雨上がり決死隊・蛍原徹との対立構造を煽る演出でもあったが、多くのYouTuberたちがここぞとばかりに反応を示したことで大いに界隈を盛り上げている。

自身が同番組で「トップYouTuberには再生回数負けている。確かにすごい」と語っている通り、粗品は現在、もっとも活発にYouTubeで活動している芸人のひとりだ。コンビによるメインチャンネルの「しもふりチューブ」は毎日更新で登録者210万人、個人のメインである「粗品 Official Channel」も毎日更新で、登録者は192万人と間もなく200万人を超える勢いだ。さらに「粗品のロケ」は週3本更新で登録者58万人。3つのチャンネルを合わせて登録者数は延べ460万人。週に17本の動画を更新していることになる。

さらに直近の17本の動画の再生回数の合計は、397.8万回だ。「再生回数負けている」と謙遜する粗品だが、毎週コンスタントに400万回再生近くを稼ぐYouTuberなど、どこにもいない。再生回数という側面から見ても、YouTubeというメディアへの粗品の貢献度は極めて高い。

粗品が本気でYouTuberを貶めようとするなら、「数字でも自分が上」と言ってしまうことは容易い。ネット上で反論を呼ぶことを想定したうえで、あえて“ツッコミどころ”を残しているということだ。

こうした粗品の振る舞いから、その真意を読み取ることは難しい。だが、自らのイメージやキャラクターが固着することを徹底的に拒んでいるように見える。

直近の24時間だけでも、「粗品のロケ」のケーキ企画のほかに、「粗品 Official Channel」では競馬で1000万賭けた話を披露するライブ映像の切り抜き、「しもふりチューブ」では相方のせいやとともになか卯の豚から丼を食べている。さらに『水曜日のダウンタウン』(TBS系)ではポスト松本人志という立場で30秒ネタの賞レース「30-1GP」の審査員を務め、『読売日本交響楽団 粗品と絶品クラシック』(日本テレビ系)という、読響の演奏をほぼノーカットで流すという挑戦的なクラシック音楽番組のナビゲーターも担当している。音楽でいえば、この日は粗品の初のアルバムである『星彩と大義のアリア』(ユニバーサルミュージック)の発売日だ。その全曲で粗品はプロデュース、作詞、作曲、歌唱を手掛けている。

こうした圧倒的な表現の物量・出力が粗品という人物の説得力を生んでいる。日本の芸能の歴史においても、活動の量と幅において稀有な人材であるはずだ。

さまざまな粗品の振る舞いから、その真意を読み取ることは難しい。だが、おそらくはどこかへたどり着くはずだというロマンが、この人にはある。

(文=新越谷ノリヲ)

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