熊本県/県南地域の新工業団地計画、24年度内に候補地選定へ

熊本県は八代や芦北、球磨川流域の各地域で構成する県南地域への県営工業団地の整備に向け、2023年度後半から適地調査を進めている。県の企業立地課によると、25ヘクタール程度の用地取得が可能であることを条件に、複数の候補地が挙がっているという。関係市町村の意見を踏まえつつ、24年度内に候補地を1カ所選定することを目指している。早ければ25年度に基本設計に着手する見込み。
新たな工業団地整備の検討は、半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が県北地域の菊陽町進出に伴う経済波及効果を、県南地域にも拡大させるのが狙い。24年度当初予算では調査など関連事業費として1133万2000円を計上した。
23年度後半に着手した適地調査では交通アクセスや工業用水などの観点を踏まえつつ、県北の菊池市で整備してきた県営工業団地「菊池テクノパーク」など、先行事例を参考に25ヘクタール程度の用地取得ができる候補地を抽出。同課は候補地の地点といった詳細については協議中のために非公表とした。
基本設計から造成工事の完了までには5~6カ年は必要となるが、企業の投資熱が冷める前に分譲開始できるかが課題となる。同課は菊池市の工業団地整備では地元との調整を行ったことで、基本設計から造成完了までの期間を4カ年に短縮できた事例を基に、「なるべく早期に分譲開始できるよう、地元との調整に取り組みたい」としている。
TSMCの菊陽町進出に伴い、同町の周辺など県北地域では半導体関連産業をはじめとした企業立地の動きが加速している。一方、県南地域ではTSMC進出による経済効果を感じられないとの声も生まれている。これを受け、蒲島郁夫前知事が23年12月の県議会で県南地域への工業団地整備を目指す考えを表明した。
誘致企業は半導体関連産業を念頭に置きながらも、物流企業や農産物生産の地域特性を生かせる食品関連といった業種の誘致も視野に入れる。

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