蔚山にとって天野純は? 過去に因縁の現地サポ直撃!スマホを見せて衝撃の一言も…本人はブーイング歓迎「愛されている証拠(笑)」

4月17日に開催されたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の準決勝・第1戦で、蔚山現代と横浜F・マリノスが激突。ホームの前者が1-0で接戦をモノにした。

日韓頂上決戦において、大きなトピックとなったのが、今季に横浜に復帰した天野純である。この32歳のレフティは、蔚山からその宿敵、全北現代に電撃移籍した過去があるのだ。

2022年1月、天野は横浜から蔚山にレンタル移籍。すぐさま攻撃を牽引する中心選手となり、17年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。だがわずか1年で退団し、全北へ。ホン・ミョンボ監督は怒りを露わにし、「お金は重要じゃない、残留すると話していたのに、私に嘘をついて出て行った。これまでに出会った日本人の中で過去最悪だ」と糾弾した。

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しかし、天野も黙っていない。翌日に緊急会見を開き、「メディアを通じてああいう風な発言をされたのは残念ですし、ショック」と吐露。そのうえで、蔚山から正式オファーはいつまで経っても届かず、「本気で向き合ってくれている感じがしなかった。契約延長の意思はないんだな、現場とクラブの間の温度差があるんだなと戸惑っていました」と明かしていた。

そうした、浅からぬ因縁があるなかで迎えた凱旋。案の定と言うべきか、ホームサポーターはまず、スタメン発表時に天野の名が呼ばれると、一斉にブーイング。試合開始後も、ボールに触れるたびに敵意をむき出しにし、85分にイエローカードが提示された際には、歓声が起こった。

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では実際、蔚山サポーターは最大のライバルに去っていた日本人MFをどう思っているのか。キックオフ前、若者グループの1人に話を訊くと、現在蔚山に在籍する江坂任も交え、次のように教えてくれた。

「アタルはグッドプレーヤーだ。蔚山には良い日本人選手がいる。そして2年前には同じ日本人のジュン・アマノがいた。Kリーグ内において非常に優秀な選手だったけど、ぶっちゃけ蔚山ファンは彼が好きではない。僕らの間にはいくつかの歴史があるからね。彼はライバルチームである全北に移籍した。だから今日の試合はよりエキサイティングになるね」

また、木陰に腰を下ろしていた他の男性サポーターは、「アマノ? ノー、ノー。バッド」とズバリ。理由を尋ねると、適切な英単語が分からなかったようで、韓国語を日本語に翻訳したスマホの画面を見せてくれた。そこにはたった一言、こう書かれていた。

「裏切り者」

ただしかし...ここまで話を進めておいてなんだが、確かなのは、彼らが天野を心底憎んでいるわけではないということだ。今回記事で扱わなかった人々を含め、みなどこか嬉しそうで、エンターテインメントとして楽しんでいる様子が窺えた。

他らなぬ天野本人も前向きに捉えているようで、試合後の取材エリアでブーイングの話題を振ると、彼は「愛されている証拠なので」といたずらに笑みを浮かべた。

韓国・蔚山での激戦は、天野純の存在の大きさを感じる一戦となった。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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