「銀行詐欺罪」は最長禁錮30年…水原元通訳の量刑は? 違法賭博発覚への「妨害工作」次々判明

入団会見で、ハンドジェスチャーもしながら通訳をする水原一平容疑者(C)ロイター

2021年オフに「最優秀通訳賞」にも輝いたかつての片腕は、自身の「ネコババ」がバレないように、通訳という立場を利用して「妨害工作」を繰り返していた。

大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手(29)の元通訳の水原一平容疑者(39)が、大谷の預金口座から1600万ドル(約24億6000万円)以上を不正送金したとして、「銀行詐欺罪」で訴追された。

水原容疑者は賭博疑惑発覚前、大谷の代理人を務めるネズ・バレロ氏や、同氏から会計業務を依頼された会計士による口座確認を繰り返し阻んでいた。

米連邦検察が連邦地裁に提出した訴状によると、バレロ氏が水原容疑者に何度も大谷の口座について問い合わせたものの、水原容疑者は「ショウヘイは『プライベートな口座なので誰にも監視させたくない』と言っている」と虚偽の説明をしていた。

「大谷の口座に利息が発生したり、多額の贈与が行われた場合、確定申告を行う必要がある。そこで22年10月、大谷の税金申告を担当する会計士が、水原通訳を通じて大谷と面会するアポイントを取った。ところが当日になって現れたのは水原通訳1人で、大谷は何も知らされていなかった。水原通訳は『大谷選手は病気だ』とウソをつき、『大谷選手は口座の非公開を望んでおり、利息や贈与はなかった』と口からでまかせを言っていた」(現地記者)

バレロ氏は捜査官の調べに対し、「水原氏の言葉を信じない理由はなかった」と答え、大谷本人に直接、確認していなかった。バレロ氏もファイナンシャルアドバイザーらからの問い合わせに対し、水原容疑者が説明した通り、「大谷選手は口座の非公開を望んでいる」と答えていたという。

「大谷は代理人や会計士が口座を管理していると思い込んでいた。水原通訳が自分と代理人や会計士にまったく違う説明をしていることも知らなかった。もちろん、水原通訳には自身の口座の管理を任せていなかった」(前出の現地記者)

■被害額の大きさと期間、回数がポイント

切羽詰まった水原容疑者は、大谷に「借金を肩代わりしたことにして欲しい」と口裏合わせを懇願したが、大谷に拒否され、すべてのウソがバレた。

銀行詐欺罪は、最長で禁錮30年の刑が科される重罪だが、どれくらいの量刑に問われるのか。

水原容疑者は21年12月から24年1月にかけ、約1万9000回、スポーツ賭博を行っていた。1日の最大賭け金は約2450万円で、損失は約62億円に上る。ニューヨーク州とワシントンDCの弁護士資格を持つ山中眞人弁護士は「金額が大きいことと犯行が長期間にわたり、不正回数が多いことがポイントとなります」と、こう続ける。

「過去には被害額100万ドルの銀行詐欺罪に問われ、司法取引した結果、13年の禁錮になった判例があります。水原容疑者が不正アクセス罪でも起訴され、有罪となれば司法取引をしたとしても13年超の可能性があります」

大谷を最も支えた最優秀通訳が一転、「世紀の大ドロボー」として歴史に名を刻むことになる。

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