「共感ハンパない!」新社会人に好評のマンガといえば? 仕事に恋に大忙し“社会人生活”を描く名作3選

職場の人たちとの付き合い方、仕事とプライベートの両立など、社会人にはさまざまな悩みの種があるもの。この春から学校を卒業し、さっそく社会の荒波に揉まれてうんざりしている人も多いかもしれない。今回はそんな人に向けて、新社会人に勇気を与えてくれる3つの名作マンガを紹介していきたい。

働くことの楽しさを描いた『重版出来!』

松田奈緒子の『重版出来!』は、2023年6月まで『月刊!スピリッツ』(小学館)で連載されていた作品。2016年には黒木華主演でTVドラマ化もされた。

主人公の黒沢心は、「週刊バイブス」というコミック雑誌の編集部に配属された新入社員。怪我で柔道選手としての道を絶たれた彼女は、マンガを愛する強い気持ちを胸に全身全霊で仕事に打ち込んでいく。笑いあり、涙ありの“スポ根”的なお仕事マンガだ。

出版社の編集部に営業部、さらには書店員や漫画家など、出版に関わるあらゆる人々が登場するのが同作の面白いところ。取材の積み重ねによって、それぞれの仕事内容がリアルに描き出されており、「どんな仕事も1人では完結せず、多様な人とつながっている」ということが上手く表現されている。

人と人のつながりが大切なのは、出版業界に限った話ではないので、どんな職種でも共感しながら読めるのではないだろうか。何より、心の何事にも一生懸命な姿勢に元気をもらえるはずだ。

社会に馴染めない人のお仕事ライフ『まじめな会社員』

冬野梅子の『まじめな会社員』は、令和に生み出された新時代のお仕事マンガ。『コミックDAYS』(講談社)で2022年5月まで連載されていた。

主人公の菊池あみ子は30歳の契約社員。物事を俯瞰して捉えることができる人物らしく、身の回りに起きる出来事をすべて言語化してくれる。マッチングアプリで出会った人といつの間にか“定型文”で喋っていること、会社の人に読書会に誘われるも、自分がいくと「いかにも」だと思われそうだということ……。かなり自意識過剰に見えるものの、そこがユーモラスで、生々しくもある。

恋愛が1つの軸になっているものの、会社の人間関係の描き方も面白い。たとえばさりげなく女性社員に“求愛行動”する男性社員の描写は、ちょっと意地が悪い目線だがリアリティは抜群。また他の社員から「変わった子」として見られていることを自覚し、波風を立てないようにイメージ通り振る舞うあみ子の姿には、大いに共感を誘われる。

さらに作中では現実と同じように、途中でコロナ禍がやってきて、環境が一変。現実と地続きの“社会人ライフ”を描いた作品として、唯一無二のリアリティだ。なんとなく会社に馴染めないという人には、とくに刺さる物語ではないだろうか。

社内でこっそり燃え上がる恋『あせとせっけん』

『あせとせっけん』は山田金鉄が『週刊Dモーニング』、『モーニング』(講談社)で連載していた純愛社会人ラブコメディ。単行本の累計発行部数は440万部を突破しており、2022年にはTVドラマ化された。

物語の舞台となるのは「リリアドロップ」という化粧品&バス用品メーカーで、幼い頃から汗っかきであることがコンプレックスだった経理部の女子・八重島麻子と、“匂いフェチ”の商品開発部プランナー・名取香太郎による恋愛が描かれていく。

「新商品のせっけんを開発するため」という名目で、香太郎は会社の至るところで麻子の匂いを嗅ぐことを求めるように。人目を忍んでこっそり2人きりで会い、匂いを嗅ぐ・嗅がせる関係は、職場恋愛ならではの背徳感が漂っている。

学生が主人公のラブストーリーは、大抵片想いや両片想いの状態が長く続き、告白することがゴールになるもの。しかし同作ではあっさりと2人が身体を重ね、そこから先の物語として丁寧に関係が深まっていく。社会人ラブコメにしか許されないテンポのよさで、ちょっとオトナな関係が描かれているのだ。

いずれの作品も、絶妙なバランス感覚でファンタジーとリアリティを両立させているのが魅力。“社会人あるある”に共感できるはずなので、気になるマンガがあった人はぜひ手に取ってみてほしい。

© 株式会社blueprint