弁当忘れたら自力調達 保護者は“立入禁止”…当番制なしで築く親子の「理想的距離感」

大阪・和泉市の中学硬式チーム「南大阪ベースボールクラブ」【写真:チーム提供】

南大阪ベースボールクラブは“当番制なし”の先駆け…「準備や想像力、感謝の気持ち覚えて」

目的は「選手の自立」と「対応力の育成」にある。大阪・和泉市の中学硬式野球チーム「南大阪ベースボールクラブ」は2011年の創設から一貫して、保護者の当番制を導入していない。弁当を忘れた選手にも大人は手助けせず、解決法を考えて経験を積むチャンスと捉えている。

南大阪ベースボールクラブの出身選手には元DeNAの青柳昴樹さんをはじめ、多くの甲子園球児がいる。2011年にチームを立ち上げた時から、選手の育成を指導の柱に置く方針は変わっていない。

そして、今では増えてきた「保護者の当番制なし」も当初と同じ。チームを率いる池西亮太監督は「当番制がないチームの先駆けだと思っています」と力を込める。保護者の当番制には賛否両論が巻き起こっているが、池西監督は保護者がチームに関わることを否定していない。

「保護者の当番はチーム運営の方法の1つなので、悪いことだとは全く思っていません。私たちのチームは選手が大人の力を借りずに対応できる力を育てたいので、保護者にはグラウンドに来ることを控えてもらっています」

南大阪ベースボールクラブでは、選手がチームに入る前の説明会で、保護者に当番制を導入していない理由を伝える。練習の見学やサポートをしたい保護者は、他のチームを選んだ方が、親子で楽しんで野球をできると考えている。

練習も試合も保護者がグラウンドにいないため、選手は弁当を忘れたら自力で何とかするしかない。チームメートからおかずを分けてもらったり、指導者からお金を借りてコンビニへ弁当を買いに行ったりする。池西監督は「保護者が近くにいると、選手はやってもらえることが当たり前になり、準備への意識や考える習慣がつかなくなってしまいます。野球の技術以上に、想像力や周りへの配慮、感謝の気持ちを覚えてもらいたいと思っています」と話す。

選手を指導する池西亮太監督(左)【写真:チーム提供】

選手たちにチェックシートを推奨…試合前の調整に生きてくる

全体練習以外の過ごし方も選手に任せている。池西監督やコーチ陣は自宅での自主練習で選手からアドバイスを求められれば、現在の課題克服や長所を伸ばすメニューを伝える。また、選手にはチェックシートを勧めている。どんな練習をどのくらいしたのかメモする習慣をつけると、試合前の調整に生きてくるという。池西監督が語る。

「気分が乗らならない日は練習をしなくてもよいので、記録はするようにします。試合で結果が出ている時は意外と素振りの回数が少ない、練習試合においては受け身にならず仕掛けが早い、といった選手なりの法則があります。それを見つけるためのチェックシートです」

チェックシートは体裁が決まっているわけではなく、提出の必要もない。池西監督は「どのくらいの選手が活用しているのか、わかりませんね」と笑う。選手が成長する環境を整えたり、選択肢を示したりするところに指導者の役割がある。(間淳 / Jun Aida)

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