ずれなかった“日奈久断層帯の南側”でもM7級地震の恐れ 熊本地震8年で専門家「まだエネルギーをため続けている」

全国各地で大きな地震が発生している。4月14日・16日で熊本地震から8年が経過した。熊本地震は2つの断層が動いて発生した地震だが、専門家は8年前にずれなかったエリアが、まだエネルギーをため続けていると指摘する。そのメカニズムを聞いた。

2つの断層帯が相次いで動いた

熊本地震は2016年4月14日と16日に起きた地震で、地震の強さを示すマグニチュードは6.5と7.3。ともに最大震度7を観測した。宮崎県内でも16日は椎葉村・高千穂町・美郷町で震度5強を観測している。

死者は熊本・大分合わせて276人。下敷きになったり土砂災害に巻き込まれたりした「直接死」が50人。「災害関連死」が221人、「大雨による関連死」が5人だった。避難生活によるストレスなどで亡くなった人が多かったことも熊本地震の特徴と言える。

熊本地震のメカニズムについて、専門家に聞いた。

京都大学防災研究所宮崎観測所・山下裕亮 助教:
熊本地震は布田川(ふたがわ)・日奈久(ひなぐ)断層帯がずれたことで発生した地震。九州の中には大きな断層帯がいくつかあるが、布田川断層帯と日奈久断層帯というのは、九州の中でも超ド級の断層帯と言っていい。我々研究者にとっては熊本で大きな地震が起きるというのは当然のように考えていた

熊本地震では、布田川断層帯と、日奈久断層帯の“北端の一部”が2回の地震でずれた。となると気になるのは、日奈久断層帯の“南側”だ。山下助教はこう断言する。

南側はエネルギーをため続けている

京都大学防災研究所宮崎観測所・山下裕亮 助教:
日奈久断層帯は大きな断層帯だが、北端しか動かなかった。南の方がまだエネルギーをため続けている。ここで地震が起きる可能性がある、というよりも、“必ず起きる”。10年後なのか20年後なのか100年後なのかは予測ができないが、必ず起きる。

山下助教によると、全体としてバランスを保っていた断層帯のうち北側から力が抜けてしまった状態なので、より南側に力がかかって地震が起きやすくなっているという。断層のずれ方にもよるが、八代海では津波が起きる可能性も十分にあるという。

残りの断層帯(日奈久区間と八代海区間)がずれた場合のマグニチュードを単純に足すと、7.6程度になる。国の想定によると、熊本県内はもちろんだが、隣の宮崎県内でも県境が近い山沿いでは最大震度6弱、平野部で震度5弱が予想されている。

ここで九州の主要な活断層について見ていく。宮崎県内には主要活断層がない。安心してよいのか?

京都大学防災研究所宮崎観測所・山下裕亮 助教:
全国を見ると、主要活断層がない県は3つしかない。これは大きな活断層で、よくわかっているものだけ。地震の断層というものは無数にある。これがないからと言って、地震が発生しないわけではない。

次に1996年から直近までのM0.5以上の地震をプロットした地図を見ると、赤い線(活断層)がない場所でもM6.5クラスの地震が発生している。この規模の地震は実は活断層が見えていなくても起きる。宮崎県内でも霧島山周辺や県北エリアで地震が発生している。地下には見えていない断層が実は無数にある。残念ながら、日本全国どこにいても安心はできない。

地震は“起こるもの”と考えを改めて

日頃から、地震に対してどう向き合うのが良いのか。山下助教に聞いた。

京都大学防災研究所宮崎観測所・山下裕亮 助教:
一般的に内陸の地震は震源が浅い。震源が浅い場合は、震源近くで大きく揺れる場所ほど、緊急地震速報が間に合わない。これは科学の限界。揺れたと思ったら、自分で身を守るしかない。熊本地震の時、熊本で大きな地震が起きるとは思わなかった方が結構いた。実際には、日本全国どこにも安全な場所はない。地震は“起こるもの”として考えを改めていただき、今できることから備えを始めてほしい。

山下裕亮助教:京都大学防災研究所宮崎観測所。観測地震学が専門。日向灘の地震などを研究している。

(テレビ宮崎)

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