【漫画】卒業式を迎えた女子高生二人、それぞれの“失恋”が痛々しくも美しい……SNS漫画『春を想う』

「卒業式」は、それまでの人間関係を否応なく一度“清算”する日でもある。それを機に前進する関係もあれば、断たれてしまう関係もあり、さまざまなドラマが交差する一日だ。3月下旬にXで公開された創作漫画『春を想う』は、卒業を迎えた2人の女子高生の“失恋”が胸を打つ、切ない作品になっている。

明るいギャル・桜庭と生真面目な女子生徒・椿希(つばき)は、高校の卒業式を迎えていた。男子生徒が意中の女子に公開告白するなど、大盛り上がりの式になったが、二人はどこか寂しげだ。そんななか、桜庭は椿希を海に誘ってーー。

本作を手掛けたのは、幼少期からノートに漫画を描くようになり、高校生の時に『まんが甲子園』に出場。そこで編集者からスカウトを受けたことをキッカケに、本格的に漫画制作に取り組むようになったというおにぎりさん(@koko_meme_8)。現在はコミカライズの仕事に取り組んでいるおにぎりさんに、胸が締めつけられる本作を制作した経緯など聞いた。(望月悠木)

■妄想を詰め込んだキャラ

――『春を想う』を制作した理由を教えてください。

おにぎり:実は今年の3月まで専門学校に通っており、本作は卒業制作として描きました。当時はちょうど連載準備をしていたタイミングで、かなりバタバタした日々を送っていたため、「なるべく短くサクッと終わる話にしたい。でも適当なものは描きたくない」という葛藤を抱きながら描きました(笑)。

――なぜ“卒業式の出来事”を描いたのですか?

おにぎり:息詰まってしまって散歩をしている時、「もうすぐ3月なのに寒いな~」「卒業寂しいな~」とかいろいろ考えていたら、ふと「“卒業”を題材に描こう!」と思いつきました。そこから卒業式の憧れのシチュエーションを考え、そこからは思いの外、アッという間に完成しました。

――桜庭と椿希の2人も“憧れ”から生まれたキャラだと。

おにぎり:はい。2人のキャラは私の萌えを詰め込みました(笑)。“正反対の2人”というシチュエーションがとても好きで「絶対描きたい」と思っていたため、真面目でネガティブな椿希と明るくてポジティブな桜庭という正反対な2人が生まれました。「この正反対の2人がどう出会い、どう仲良くなっていったのか、椿希は桜庭をいつ好きになったのか」と妄想を膨らませながらストーリーを決めていきました。

――本作ではセリフ量が少なく、表情の機微や動作などで感情を表現するシーンが多かった印象です。

おにぎり:特に「セリフ量を少なくしよう」と思って描いたわけではありません。ただ、とある方から「セリフがなくてもキャラの感情がわかる漫画ってすばらしい作品だと思う」と話していて、それからは「あまり言葉で説明しすぎないようにしよう」と意識しています。もし本作でも椿希や桜庭の感情からいろいろな感情が伝わったら嬉しいです。

■ラストカットの2人の表情の意味

――表情から喜怒哀楽を読者に伝えるうえで意識していることは?

おにぎり:意識というのかはわかりませんが、表情を描く時はなるべくキャラになりきって描くようにしています。少し恥ずかしいんですけど……本作では、海に向かって叫ぶ桜庭を見る椿希の表情は頑張って感情移入しながら描きました。

――ラストカットの正反対の2人の表情も良かったです。

おにぎり:“正反対の2人”というのがテーマだったので、「最後も正反対で終わらせたいな」と考えてこの表情にしました。2人がなにを考え、なぜあの表情になったのかは読者さんにいろいろ解釈してみてほしいです。

――また、髪の毛がサラサラに描かれていたシーンもも鮮やかでした。

おにぎり:実は髪を描くのがすごく苦手で……(笑)。編集さんにも「硬いね」と言われています。そこで「実物を見ながら描いてみては?」とアドバイスをもらって今も頑張っています。

――専門学校を卒業して今後どのように漫画制作に取り組んでいきたいですか?

おにぎり:将来的には読んだ人の心に響くような漫画が描けるようになりたいです! また現在は、漫画アプリ「Palcy(パルシィ)」(講談社、ピクシブ)で『どうしようもなく辛かったよ』という作品のコミカライズ連載をしています。原作者さんの感情表現がとてもリアルで私も勉強しながら描かせていただいてます。本作とはまた違う、中学生ならではの輝かしいばかりではない青春の痛みが描かれた作品になっています。この機会にぜひご覧ください!

(望月悠木)

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