「もう」は「まだ」なり

 まだ買うのは早いと思っているうちに値段が上がってしまって手が出せなくなったり、逆にここらが買い時か、と決断するとまだまだ値段が下がったり…広く知られる相場格言〈『もう』は『まだ』なり/『まだ』は『もう』なり〉は江戸時代の指南書に由来する言葉らしい▲独断や独善に陥ってはいないか、と自分の判断を疑ってみよ-という戒めは相場や投資に限った話ではなさそうだが、市場の先を見極める難しさは江戸時代も現代もそれほど変わらないようだ▲日経平均株価が昨日まで3日連続して下落し、2カ月ぶりに3万8000円を割り込んだ。中東情勢の緊迫に加え、為替介入への警戒感が重荷に-と経済面に▲正直なところ、門外漢の筆者には細かな解説が「ちんぷんかんぷん」を通り越して謎の呪文に思える。それにしても〈3万9000円割れ〉の記事を前日に見たばかりだ。今の状況は「もう」なのか、それとも「まだ」なのか▲興味深い相場格言は数多い。〈トレンドはフレンド〉…流れに逆らってはいけないらしい。そうかと思うと〈人の行く裏に道あり花の山〉…では、いったいどうすれば▲昨日の夕方。株価の動きを伝えるニュースの「終値」がふっと「終わりね」に聞こえた…と書いたら、不吉だ、不謹慎だと叱られるだろうか。(智)

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