「小1の壁」だけじゃない!長期休み問題や学校トラブルの対処法【親野先生×保護者座談会】

By 学研キッズネット編集部

「小1の壁」を乗り越えても、子どもの年齢が上がるにつれて悩みや不安は複雑化していくもの。

それを「新たな壁」と捉えるのか、子どもの成長として捉えればよいのか、保護者の悩みは尽きません。

前回に続き、今回も教育評論家の親野智可等先生と、学研キッズネットに所属する探Qキッズの保護者に、今直面している壁にどう向き合い、どう乗り越えればよいのかお話を聞きました。

座談会メンバー

親野智可等先生
小学校で23年間教師を務め、教育評論家へ。子育て、親子関係、勉強法などのアドバイスが保護者の共感を集める。執筆活動や講演会、メディア出演などさまざまな分野で活躍中。

渡邊さん小学5年生男児の保護者。小1の時は通勤、コロナ禍以降は在宅勤務へとシフト。
吉岡さん小学3年生女児、小学1年生男児の保護者。現在はフルタイムで勤務。

学校生活に慣れてきたタイミングで直面!長期休みに習い事、塾選びなどの「壁」も!

渡邊さん:入学後、新生活にも慣れて落ち着いてきた頃に直面するのが「夏休みをどうするか問題」。

3年生までは学童に通っていたのでそのときはよかったのですが、4年生になると通えなくなる学童もあるので、過ごし方の選択肢がわかれていくんですよね。

夏休みが40日間も続くので、どこにいく?何をする?という悩みが尽きません。

吉岡さん:何もしない……というわけにいかないですもんね。ちなみに渡邊さんは、どのように過ごしていますか?

渡邊さん:サッカーやトライアスロンなどの習い事でスケジュールを埋めています。

昨年は、大学が子どもを対象にしたキャンプスクールを主催しているというのをチラシで偶然見つけて、沖縄の離島に行きました。区の補助金が出るので、安く利用できたんです。

親野先生:それはすばらしい!子ども向けのイベントやサービスって意外とたくさんあるので、保護者がアンテナを張るというのはすごく大事。

自治体、雑誌、ネット、さまざまなところから積極的に情報を得ないとね。

吉岡さん:私は長期休みもそうなのですが、土日の使い方をこれからどうしようかなと悩んでいるところ。

今までの週末は家族みんなで出かけていたのですが、学年が上がるにつれて友達と約束をしてくることが増えてきたんですよね。

子どもの遊びを優先すべきか、それとも中学受験を見据えて勉強に重きを置いた方がよいのか……。

渡邊さん:過ごし方に関して言うと、我が家は習い事の整理について子どもと話をする際に、ひと悶着ありました。

習い事の日程がどうしてもかぶってしまうので、「こっちをやめる?」と聞いたら「ママがそうしたいならいいよ」って。

習い事に思い入れがないのかな?と思っていたのですが、「来月で本当にやめるね」と最終確認をしたら「僕は続けるよ」って。その時の気分でサッと変わってしまうみたいで。

吉岡さん:うちは仕事の関係で子どもの登校前に家を出ないといけなくて。

鍵をかけ忘れてもいいように、外出先から施錠できるように家をスマート化しているけど、鍵を閉めないで出かけたり、電気もつけっぱなし!何度も注意してるのに……。

親野先生:子どもはワーキングメモリーが少ないから、入ってきた情報が流れていきがち。

大事なことも意外と忘れてしまうから、マインドマップとして紙に書き出したり、何度も確認したりといったフォローをしていけるといいですね。

友達関係やいじめ問題。子どものトラブルに保護者はどう関わるべき!?

親野先生:家庭面での悩みはまだまだありそうだけど(笑)学校ではどうなのかな。

吉岡さん:女の子だからなのか、友だちの中で輪ができてしまうようで。

この子を誘いたいけど、このグループには……ということもでてきて、子ども同士の付き合い方に親がどう介入すればよいのか、どう見守れば良いのかも悩んでいます。

渡邊さん:学年が上がるにつれて、子どもの交友関係の悩みが増えていきますよね。

今は電子マネーでなんでも買えるから、お友だちにジュースを奢ってあげた、なんて話も聞きます。

親野先生:お小遣いは家庭によって考え方や方針が違うから、むずかしいよね。

親子でお金について話し合うというコミュニケーションで、金銭感覚を身につける必要です。

吉岡さん:そういえば、学校でのトラブルの相談は、どうしていますか?

以前、担任の先生に「困ったことがあれば話してください、場合によっては席替えもできます」と言われたことがあって。

クラス内でのトラブルに対して、学校側も色々と工夫をされているんですよね。

親野先生:私が教師をしていた頃は、クラス内での上下関係や序列をうまないためにも、席替えは毎月行っていました。

子どもたちには人間関係を広げてほしいし、そこで学ぶこともたくさんありますから。

吉岡さん:子どもの人間関係において何か困りごとがあったときに、どういうタイミングでどのように先生に話せばよいのかも親としては悩みます。

親野先生:まずはできるだけ早い段階で先生と良好な関係を築くことが大切です。

何か問題があったときに、そこで初めて人間関係を作ろうとするとギクシャクしてしまう。だからこそ、授業参観や懇談会に積極的に出席して、先生と顔馴染みになっておくと安心です。

大人の交渉術を存分に発揮して、クレームではなく、お悩み相談という形にできるといいですね。

渡邊さん:担任の先生に言いにくいことがあった場合は、どうすればいいでしょうか。

親野先生:学年主任、教頭先生、校長先生と相談する相手を変えていく必要があります。

自分の子どもだけでなくクラス全体に関わる内容なら、PTA役員を介して学校に伝えるのもひとつの方法。子どものために、勇気を持って行動してください。

子どものSOSに気づくために必要な「共感」と「観察」

渡邊さん:うちは男の子だからなのか、多くを語ってくれない気がしていて。学校のトラブルにちゃんと気づけるかなという心配もあります。

親野先生:「何かあったらお父さん・お母さんになんでも言ってね。いつでもあなたの味方だから、どんなことでも大丈夫」と伝えておきましょう。

大切なのは、普段から子どもの話を共感的に聞くこと。

日頃から子どもとコミュニケーションをとって共感的に聞いていれば、話しにくいことも素直に言えるようになります。

そもそも、子どもが話してくれないとトラブルが起こったときに状況を把握することができません。情報を集める意味でもたっぷり聞いてあげましょう。

それに並行して、子どもの様子を観察することも忘れずに。顔をよく見ると、もう限界なのかなというのが分かります。

意外と見落としがちなのは子どもの持ち物チェック。たとえば鉛筆が全て折れていたり、ランドセル・靴・衣服などが異常に汚れていたら、いじめのサインかもしれません。

子どもの旬を見逃さない。その積み重ねが自己肯定感に

渡邊さん:そう聞くと、自分自身に余裕を持つことが大事だな、と。仕事と家庭の両立でいっぱいいっぱいになっているところはあるかもしれません……。

親野先生:保護者の抱えすぎ問題をどうにかすべきですよね。あれもこれもとやりすぎると、親にとっても子どもにとっても悪循環になってしまいます。

今何を優先すべきなのか、今何が必要なのか、“選択と集中”を意識できるといいですね。

何事も、タイミングが大事。よくあるのが、子どもが話しかけているときに「少し待ってて!これが終わってから」と親が言ってしまうパターン。

これだと子どもは悲しいので、「できたねえ。すごい」など、ひとまず受け入れてから、「これだけやっちゃうから、ちょっと待っててね。後でよく見せて」と言ってあげてほしいですね。

この順番なら、子どもも安心して待つことができますから。

吉岡さん:時短家事を取り入れるなど、工夫して負担を減らしていこうと思います!!

親野先生:親御さん自身がエンジョイし、今日1日を親子で楽しく過ごす。それだけでも、子どもの自己肯定感はアップします。

良好な親子関係づくりには、子どもの「今」と保護者の「今」を大切にすることが、不可欠なんですね。

親子関係がよくなると、子どもが早い段階で困りごとを親に相談できます。そこで、保護者が受け止め、ポジティブに向き合うことができれば、他者信頼感が生まれる。

その積み重ねが、自立につながります。この先どんな「壁」にぶつかっても「困ったときは相談していいんだ」「誰かに相談されたときは力になろう」というように。

悩みが増えていくのは、子どもの立派な成長の証。想像している「壁」が必ずしも自分の問題になるとは限りません。お互いの「今」を大切にしながら、柔軟に対応できるといいですね。

取材・文/末永陽子 編集/石橋沙織 撮影/我妻慶一

学研キッズネット編集部

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