バドミントン桃田賢斗、日本代表引退を表明「世界を目指すところまでいけない」 現役は続行、20年交通事故から「気持ちと体にギャップ」

会見に登壇した桃田賢斗【写真:中戸川知世】

元世界ランク1位、スーツで会見「とても長いようで短く、幸せな時間でした」

バドミントン男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)が18日、都内の会見で日本代表からの引退を表明した。かつて世界ランク1位に君臨した29歳。最大2枠となる今夏のパリ五輪出場権獲得が絶望的となっていた。27日からの国・地域別対抗戦のトマス杯(中国・成都)が日本代表として戦う最後の大会となるが、今後はSJリーグや全日本総合選手権など国内大会に出場しながらバドミントン教室など競技普及にも力を注いでいく。

桃田は所属するNTT東日本の川前直樹監督と会見した。桃田は「再び世界のトップを目指すのは体力面、精神面において限界と感じ、決意いたしました」とコメント。所属のNTT東日本などに感謝した。

「自分の口から感謝をお伝えしたいと思い、このような場を設けさせていただきました。引退の理由は2020年1月の交通事故から苦しいこともたくさんありましたし、自分の中で思うようなプレーができず、試行錯誤はしてきたけど、気持ちと体のギャップというか、そういうのが続いた中でもう一度世界を目指すところまでいけないと判断しました。ただ、(教室などで)バドミントンをしている方々ともっともっと羽を打つ時間がほしいと思い、代表引退を決意しました。

(日本代表は)ほとんどがしんどい時間でしたが、凄く貴重な経験をさせていただき、充実した時間でした。(不祥事で)僕自身たくさんの人に迷惑をおかけして支えていただき、ここまでずっと何のストレスもなく続けさせていただけたのも周りの人たちのサポート、応援のおかげ。とても長いようで短く、トータルすれば凄く幸せな時間でした」

昨年5月に始まった五輪代表選考は、世界連盟(BWF)が発表する4月30日付の五輪予選ランクで決定。シングルスは16位以内なら各国最大2枠の出場権を獲得できる。3月の全英オープン終了時点で2奈良岡功大(IMG)が日本勢最上位の4位につけ、初の五輪代表を確実にした。桃田は当時6番手の48位(現在7番手の52位)。2番手で11位の西本拳太(ジェイテクト)を残り大会で逆転する可能性が消滅していた。

自身の不祥事で16年リオ五輪出場を逃したが、18年から世界選手権で2年連続優勝。日本男子初の世界ランク1位に上り詰めた。しかし、20年1月のマレーシア遠征中に交通事故に遭い、右眼窩底を骨折。金メダルを期待された21年東京五輪は、初出場で1次リーグ敗退に終わった。22年8月の世界選手権は2回戦敗退。選考レース中は世界選手権などポイントの高い大会に出られなかった。

最も印象に残る試合については、18年のジャパンオープン初優勝という。「子どもの時から憧れた代表のユニホームを着て国際大会を戦うのは誇らしいこと。誰しもがなれるポジションではないので、しっかり誇りと責任を持ってチャレンジできた」と振り返った。今後について、パリ五輪に臨む後輩たちへエールを送った。

「代表は引退しますが、NTT東日本バドミントン部としての活動はまだまだ続く。チームの練習や地域貢献活動も積極的に参加していきたい。もっともっとバドミントンの楽しさを伝えられるイベントで自分から発信したい。バドミントンの活性化じゃないけど、もっといろんな人にバドミントンの楽しさ、スポーツの楽しさを感じてもらえるような活動をしたい。

(後輩たちへ)僕の立ち場から偉そうなことは言えませんが、一度五輪を経験した立ち場から言わせていただくと、いつも通りのことをいつも通り発揮することの難しさを痛感した。一発勝負なので結果を考えずいつも通りやってほしい。バドミントンが好きなので試合を見届けたい」

女子シングルスでもリオ五輪銅メダルの奥原希望(太陽ホールディングス)が今月のアジア選手権で1回戦敗退。五輪出場は絶望的になっていた。

THE ANSWER編集部

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