マルセイユの海で金メダルへの風を読む! セーリング日本の男女第一人者がペアに、意思疎通を深め自信【男女混合470級】

パリ五輪で日本勢初の金メダルを狙う岡田(右)と吉岡

パリ五輪の開幕まで100日となった。九州勢の金メダル候補が自信を深めている。セーリング混合470級代表の岡田奎樹(トヨタ自動車東日本)=北九州市出身=は、吉岡美帆(ベネッセ)とのペアで4月に代表内定。同種目はパリ五輪から男女混合となり、2人は日本勢初の金メダルを見据えて結成した。ともに東京五輪で味わった悔しさを糧にして、大舞台での決戦に挑む。(山田孝人)

盛夏の地中海マルセイユ沖で頂点を目指す。男女それぞれの470級の「エース」だった岡田と吉岡は、同種目が混合となったことに伴い、日本セーリング界にとって悲願の金メダルを獲得するため、3年前に結成。昨年の世界選手権で優勝を飾るなど、自信と実力を積み重ねてきた。

金メダル、3回やれば1回は取れる

パリ五輪の代表内定後に開かれた会見で、岡田が「(大会を)3回やれば(金は)1回は取れるかな。しっかりと、金をたぐり寄せるようにしていきたい」と自信を示すと、吉岡は「確率は6割から7割ぐらいかなと思う」と口にした。

五輪での躍進は2人にとっても悲願だ。28歳の岡田は2大会連続2度目、33歳の吉岡は3大会連続で3度目の出場ながら、過去の大会では悔しさを募らせた。東京五輪は男女の同級で出場した2人は、メダルが期待される中、ともに7位にとどまった。

陸上で徹底的に話し合いながら

吉岡は去就に思いを巡らせた時期もあったが、大舞台への思いを断ち切れずに再挑戦を決意した。東京五輪を終えた岡田は同級がパリから混合種目となることを受け、吉岡に連絡した。岡田は「このチームが一番金メダルを取れるとお互いが思っていた」と振り返る。ペアの結成は自然な流れだった。

ともに国内の第一人者で面識もあったが、一瞬の判断が必要な海上での意思疎通には苦労もあったという。その課題は陸上で徹底的に話し合うことで解消した。岡田は「(吉岡の考えは)ほとんどのことは分かる」と理解を深めた。

【次ページに続く】「趣味の延長線」

昨年は8月の世界選手権に続き、9月のアジア大会も制した。今年のパリ五輪の選考対象大会も上位を維持した。かじ取り役のスキッパー岡田は地元・福岡の玄界灘などで養われた風を読む能力にたける。趣味もヨットで、東京五輪後は息抜きで1人乗りの艇で風を切っていた。「趣味の延長線に今がある」と笑う。

最少の言葉で全てが伝わるように

177センチの長身と力強さが持ち味のクルーの吉岡は高校時代にヨットを始め、女子470級で世界選手権を制した実績を持つ。これまでの経験を踏まえて「五輪に一番いい状態で臨めるかが重要」と気を引き締める。

開幕まで100日。道具の選定や調整にも細心の注意を払う。今後はマルセイユで海外勢との合同練習を行うほか、岡田は「コミュニケーションの量を減らして、意思を伝えることもしていく」とも明かした。極度の緊張状態に置かれる可能性が高い五輪。体力が削られ、集中力も損なわれる中で、最少の言葉で全てが伝わるようにしていく。「たくさんの方に支えてもらった。結果で恩返しをしたい」との思いを胸に刻む2人が金への海路を進む。

【次ページ】岡田&吉岡コンビはこんな選手

岡田奎樹(おかだ・けいじゅ)1995年12月2日生まれ。北九州市出身。東京五輪では男子470級に出場して7位。2021年秋に吉岡とペアを結成した。佐賀・唐津西高から早大。170センチ、65キロ。

吉岡美帆(よしおか・みほ)1990年8月27日生まれ。広島市出身。2016年リオデジャネイロ五輪に女子470級で初出場して5位。21年東京五輪は7位。兵庫・芦屋高から立命大。177センチ、73キロ。

【次ページ】470級とは?

470級 全長470センチの2人乗りの艇で通称は「ヨンナナマル」。五輪では1976年のモントリオール大会で始まり、女子は88年のソウル大会から。男女の役割分担はなく、どちらがスキッパーでもクルーでも可能。日本勢は96年のアトランタ大会で女子の重由美子、木下アリーシア組が銀、2004年のアテネ大会で男子の関一人、轟賢二郎組が銅を獲得した。

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