五輪メダルと縁がなかった男 バドミントン桃田が代表引退を発表「約10年間は誇らしいものだった」賭博行為でリオ出られず、交通事故から復帰後の東京は1次L敗退

 すっきりとした表情で会見する桃田賢斗(撮影・吉澤敬太)

 バドミントンの男子シングルス元世界ランキング1位、桃田賢斗(29)=NTT東日本=が18日、27日から開催される国別対抗戦・トマス杯を最後に、日本代表を引退すると発表した。都内でNTT東日本の川前直樹監督とともに会見し「日本代表としての約10年間は誇らしいものだったと思う」と話した。

競技活動は継続する。

 昨年5月から始まった2024年パリ五輪選考レースは、今月末で終了。桃田は日本勢6番手で、日本勢上位2位に入ることは不可能となり、五輪出場を逃していた。

 桃田は2019年に世界選手権2連覇など国際大会で11勝するなど、18年9月27日から21年11月23日付まで121週連続で世界ラインキング1位を維持した。しかし、五輪でのメダル獲得とは無縁だった。

 16年4月、当時世界ランク2位だった桃田は、12年ロンドン五輪代表の田児賢一らNTT東日本所属選手と、都内の違法カジノ店で賭博行為をしていたことが発覚。日本協会は、桃田に日本代表の解除と無期限出場停止処分を科し、確実視されていたリオデジャネイロ五輪出場はなくなった。

 17年5月15日に処分が解かれ、19年に国際大会年間11勝を挙げて20年東京五輪金メダル最有力候補となったが、同年1月マレーシアで交通事故に巻き込まれて大けがを負い、2月に右目の眼窩(がんか)底骨折の手術を受けた。12月の全日本総合で復帰して優勝したが、久々の国際大会となった21年3月の全英オープンは準々決勝敗退。コロナ禍で1年延期された東京五輪には復帰後二つ目の国際大会として出場したが、1次リーグで敗退した。

 東京五輪の試合を「今思い返しても悔しい思いしかない。攻撃的な相手に気持ちが引いてしまった。自分の気持ちの準備ができていなかった」と振り返った。一方で「昔からあこがれていた五輪の舞台に立てたのはすごくいい経験だと思う」と前向きに捉えた。

 特に出場停止処分から17年に復帰後は「勝つことだけがすべてじゃない。コートの中の振る舞い、コートを出てからの行動。勝つだけじゃなく、応援される、周りに応援される選手になりたいと思った」と言う「達成できたかわからないが、今ではたくさんの人に応援してもらえるようになった。日本代表としての約10年間は誇らしいものだったと思う」を胸を張った。

 五輪への思いについては「バドミントンを始めてから本当に五輪の舞台はあこがれだった。出場できたのはすごくうれしかった。その五輪で結果を出せなかったのはすごく悔しい気持ちでいっぱい」と話した。その上で「日本代表を引退して五輪を目指さなくなるのは、いまは後悔はない」と言い切った。

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