追加利上げ「他中銀に比べゆっくり」、物価2%上昇には相応の時間=野口日銀審議委員

Takaya Yamaguchi

[佐賀市 18日 ロイター] - 日銀の野口旭審議委員は18日、政策金利の調整ペースに関し、「他の主要中央銀行の最近の例とは比較にならないほどゆっくりとしたものになることが予想される」と述べた。佐賀県金融経済懇談会での挨拶内容を公表した。物価が基調的に2%近傍で上昇し続ける状況に至るまでには「相応の時間を要する」との認識も示した。

経済環境を巡り、野口委員は「バブル崩壊以降、ながらく続いてきた名目成長なきデフレ型経済からようやく離脱しつつある」と指摘した。

一方で「目を引くのは個人消費の弱さ」とし、「コロナ禍後のペントアップ需要が一巡する中で、インフレによる実質賃金の低下が実質消費の押し下げ要因として働いてきたためと考えられる」と語った。

こうした傾向が払拭されるには「実質賃金が上昇へと転じていくことが必要。消費者物価上昇率が2%近傍で安定していく一方で、名目賃金上昇率が2%を超えて高まっていくことが重要」との見方も示した。

物価安定2%目標が持続的・安定的に実現されるためには「2%を明確に上回る名目賃金上昇がトレンドとして定着する中で、サービス価格が上昇し続けることが必要」と言及。賃金と物価の好循環が進ちょくし、2%の物価安定目標が見通せる段階となれば「縮小ないしは解除されていく」と述べた。

今後の金融政策運営に関し「政策金利の段階的な引き上げ、国債購入額の調整を通じたバランスシート調整などが、情勢を慎重に見極めつつ行われることになる」との選択肢も示した。

もっとも「日銀が今後も緩和的な金融政策を継続することを通じて労働需給の適切なバランスを保ち続けることこそが、物価目標達成のための必須の要件」とし、次の一手に慎重な姿勢をにじませた。

野口委員は、政策金利の最終到着点である長期中立金利に関し、「他国対比では高くなるよりも低くなる可能性が高い」との見方も併せて示した。

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