漫画家志望の外国人に熱視線 「日本で学びたい」を叶える取り組み全国で増加の背景は?

■日本唯一のマンガ学部がある京都精華大学

日本の漫画やアニメが、海外での人気が高まっている。海外では日本の漫画カルチャーを紹介するイベントが盛んに開催され、アニメも続々と放映されるなど、そうした影響もあり、漫画家・アニメーターを志望する外国人が急増しているという。しかも、わざわざ日本を訪れて、「日本で漫画家を目指したい」と希望する人も多いようなのだ。

4月14日付の日本経済新聞によると、漫画家を志望する人たちが入居するいわゆる現代版のトキワ荘が各地に誕生しているようだが、その入居者の中にも外国人の姿が見られると報じている。事実、このような傾向は強まっているようだ。

リアルサウンドブックでは2022年に、日本唯一のマンガ学部がある京都精華大学を取材、その一環でギャグ漫画家のおおひなたごうが指導する授業の風景を見学した。取材して驚いたのは、授業中に外国語が飛び交っていたことである。聞けば、クラスの62人中、半数くらいが中国、韓国などの出身者であるという。

取材すると、「漫画の最先端である日本で学びたい」という動機で、入学を志望したという学生がいた。この傾向は大学だけでなく専門学校でも見られるようで、漫画に対する関心がグローバルなものになっていることを実感させられた。

■近い将来連載する漫画家は3分の1が海外出身者に?

さて、漫画家を目指すために重要なことは、出版社が主催する新人賞への投稿、そして編集部への持ち込みだ。大手の出版社に勤務する現役の編集者によると、外国人の姿が見られるようになったという。

「外国人の投稿や、持ち込みはここ数年で増えましたね。もちろん大半は日本人なのですが、外国人はわざわざ日本にまで来て漫画を描こうとするくらいだから、ハングリー精神はあるし、最初から画力が高い人も少なくない。ひょっとすると、10年後くらいには漫画雑誌で連載する漫画家の3分の1くらいが海外出身者で占められている、なんてこともあり得ると思いますよ」

漫画の良いところとして、「もちろん国籍は一切問わないし、とにかく面白ければいいんです」と、この編集者は語ってくれた。さらに、ネット環境の発達で海外から日本の出版社とやり取りできるようになり、外国人の参入障壁はグッと下がったのも大きいだろう。

ちなみに、ある連載漫画家は「現在、中国にいる漫画家志望者にアシスタントを頼んでいます。一度も会ったことがないのですが(笑)、即戦力で画力も高いですよ。日本の漫画雑誌での連載を志望しているそうで、このままだとデビューできるんじゃないですかね」とのことである。漫画のグローバル化は、今後ますます加速するに違いない。

(文=山内貴範)

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