ゴジラ-1.0 アカデミー賞受賞の陰に⁉ 幻の戦闘機「震電」の模型

余市町の山間部にある一軒の倉庫。中には珍しいものがたくさんあると聞き、訪れてみると。建物を所有しているのは余市町で店舗デザイン会社を経営する坂本仁さん(74歳)です。趣味は古い自動車の復元=レストアで、所有している巨大な倉庫にはいわゆるお宝がいっぱい。

その中には、1942年式の軍用ジープ・フォードGPWも。第二次世界大戦時に量産されたアメリカ軍の車両です。畑に放置されているのを見つけ、譲ってもらったといいます。

ボロボロの状態だったものを引き取り、1人で綺麗に復元しました。もちろんエンジンもかかります。ビスの一本一本まで全て本物で、メーカーが作ったロールアウトの状態だと言います。

徹底したこだわりで古いものを復元する坂本さんは8年前にさらにすごいものを完成させていました。それが映画「ゴジラ-1.0」に登場し、注目を浴びた旧日本軍の戦闘機・震電(しんでん)です。

一般的な飛行機とは逆の、主翼とエンジンが機体の後部にある前翼型と呼ばれる特殊な機体。第2次世界大戦末期に試作され、そのまま終戦を迎えたため幻の戦闘機と呼ばれています。

ゴジラ-1.0のパンフレットには、映画製作スタッフの名前の中に、協力者としてなんと坂本さんの名が!

その理由とは?

坂本さん「実物がないということだよね。北海道の余市に実物大があるよということでそれで急きょ(ゴジラ製作スタッフが)飛んできたって感じですね」

坂本さんが作った震電の模型は、両翼11メートル、全長9メートルの実物大。

本物の震電は終戦直後にアメリカ軍に押収されたため、ゴジラ制作時は坂本さんの作った模型が原寸大としては国内にある唯一の存在でした。そのためゴジラ製作スタッフが何度も見学にやってきたそうです。

震電の制作で苦労したのが、機体の曲線を出すこと。素材にべニア板を使ったため、曲げるのが大変だったそうです。そして最大の苦労点は機体のデータを集めること。それに協力したメンバーの1人が、余市町にある宇宙記念館のスタッフです。国際航空大学校出身の縁で全国にいる仲間から震電の資料を集めたといいます。

坂本さんの模型がベースとなり、実写で映像化された震電。坂本さんは今回のアカデミー賞受賞をどう感じているのでしょうか?

坂本さん「本当にびっくりしちゃったね。だから東宝のここに来ていた人におめでとうって電話入れました。はははっ」「ライト兄弟が飛行機作ってからゼロ戦までの年数って40年くらいしか経ってないんだよね。その時にあれだけのスピードを出して、世界が驚いたというのはびっくりしますよね。だからそういうのは、若い人たちに見せてやりたいなと思って残しているんです」。

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