誰もが自由に生きていける希望がここにある ハービー・山口写真集『Tokyo color_x』

By CAPA編集部

ハービー・山口さんの写真集『Tokyo color_x』が発売された。

ハービーさんのカラー写真は珍しい。かつてロンドン時代の1980年代前後に撮って以来、2度目だそうだ。最初にこの写真集を開いたとき、これまでとテイストが少し変わったなと感じた。しばらくして、彼のモノクロームの写真を、私自身が勝手にカラーに変換して記憶していたことに気づいた。

近年、街中では髪の毛を自由な色に染め、自己表現する人が増えてきた。そこに引かれて、数年前からカラーで撮り始めたという。屈託なく笑う2人組の女の子や、手すりに身体を預け物思いにふける人……、東京に集まってきた人たちの人生のひとコマが捉えられている。

何点か地方で撮影したものがあるから、タイトルに「_x」を加えたそうだ。サイクリング中の2人は、信号で停車しカメラを意識したとき、ごく自然に女の子が男の子の肩に手を置く。抱擁中のカップルの女性の手には、吸いさしのタバコが煙をくゆらせる。何かの、誰かのためではなく、一人一人が自由に生きていける。そんな希望の書だ。

ハービー・山口『Tokyo color_x』

体裁 220×230mm・88ページ
価格 7,000円(税込)
発売日 2024年1月13日
発行 SUPER LABO

ハービー・山口 (Herbie Yamaguchi)

1950年生まれ、東京都出身。23歳でロンドンに渡り10年間在住、劇団の役者を経て写真家になる。折からのパンクロックのムーブメントの中、ミュージシャンのポートレートが高く評価された。幼少期に患った病歴の末、写真のテーマを「生きる希望」とし人物を撮り続けている。また、エッセイの執筆、ラジオのパーソナリティーなど幅広く活動中。ギタリスト布袋寅泰には歌詞を提供している。2011年度日本写真協会賞作家賞受賞。個展・著作多数。『CAPA』でフォトエッセイ「You are a peace of art.」を連載中。
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〈文〉市井康延

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