北陸新幹線石川県内全線開業から1か月 加賀温泉駅と小松駅それぞれの現在地

3月16日に北陸新幹線の金沢ー敦賀間が開業し1か月がたちました。石川県内では全線開業となり、新たに小松駅と加賀温泉駅が停車駅に加わりました。

期待されていた開業効果はあったのか。街の変化を探ります。

13日、県内有数の温泉街を誇る加賀温泉駅には、新幹線を利用してひっきりなしに観光客が訪れていました。

東京からの観光客「1本で来られるのすごく楽、駅がすごくきれいなので、またぜひ次も新幹線で来ようかなと思っています」

加賀市山中温泉のメインストリート・ゆげ街道には、週末大通り沿いに多くの観光客が散策を楽しんでいます。新幹線延伸後、温泉街の様子は一変したと地元の人は話します。

AmuShop&Cafe荒谷敏子オーナー
「(客は)実感でいうとほぼ倍に増えた。温泉入って今ここに来たという客もいる」

地元の伝統工芸品などを扱う店でも、買い物を楽しむ客の姿が目立ちました。

観光客「家族旅行で温泉行こうって調べてここに来た」
「海鮮とかもいっぱい食べられて、地元にないものにたくさん触れあえたので良かった」

一方、開業を目前にした元日に能登半島地震が発生し、被災地から離れた加賀温泉郷でも風評被害が危ぶまれ、一時は客足が遠のいた時期もあったといいます。

しかし、新幹線の開業と同時に始まった最大で1人2万円の割引が受けられる政府の観光支援策「北陸応援割」が誘客を後押ししました。

北陸応援割の利用者
「昔は結構来たけど最近来てなかったので、また来てみてもいいかなって」
「私の80歳の誕生日のプレゼントで連れてきてもらった」

AmuShop&Cafe荒谷敏子オーナー「加賀温泉郷の中でも、特に山中温泉は本当に自然が美しくて、風呂もいいので何度でも来てほしい」

ただ、地震とは無関係なまま加賀温泉郷がこの春を迎えているわけではありません。加賀市山代温泉の「みやびの宿加賀百万石」では、今も100人ほどの2次避難者を受け入れています。

みやびの宿加賀百万石・吉田久彦社長「最初はやはり観光の方がたくさん多くいらっしゃるというので多少心配していたが、大きなトラブルはなく、皆さんに快適に過ごしていただけているかなと」

当初は観光客と2次避難の人たちとの対応を両立させることに不安もあったといいますが、双方が泊まる建物を分けることで、互いに気にせず過ごせる環境を整えています。

みやびの宿加賀百万石・吉田久彦社長「今後も受け入れをして、行き場所がなくなることがないように努めていきたい」

開業から1か月、首都圏からのアクセス向上で、加賀温泉郷ではさらなるにぎわいに期待が高まっています。

開業日の3月16日、加賀温泉駅とともに、石川県内で新幹線の停車駅となった小松駅周辺の商店街を多くの人が埋め尽くしました。

地元の人「すごく賑わっている、いつもは閑散としているのでたくさん来てほしいですね、小松にもね」

しかし、あれから1か月近くがたった13日、週末にも関わらず、人の姿はまばらでした。

滝本茣蓙店・辻奈穂子店長「新幹線が16日に開業したから、次の日からバーッというわけではないが、週末には観光の方がちらほらと来るようになった」

通りの電柱を無くすなど、景観を整えにぎわいづくりに励んできた商店街ですが、一気に観光客が押し寄せることはないものの、少しずつ街にも変化が出始めています。

滝本茣蓙店・辻奈穂子店長「混んだところは嫌なので、ゆっくりと歩きながら楽しめる町で検索したら、小松が新幹線で降りられるとわかったので来たと」

今後、小松にきた人にもっと街歩きを楽しんでもらうため、商店街では今ワークショップを楽しめる店が増えています。

指輪作りができる店が新たにオープンしました。この日体験していたのは、輪島市から小松市に2次避難していた夫婦です。

男性「輪島の震災にあってしまって、その時指輪を焼失してしまったので、新しい指輪を作りたくて」
女性「新しくもう1回、復興する意味で2人で作れたのはよかったかな」

大切な思い出を残すきっかけとなったワークショップ。商店街で過ごしてもらうこの時間を、今後は小松のひとつの魅力として押し出します。

ANTWARP・滝本勢十店主「遊べるお店としてワークショップを楽しんでもらう時間を長くとって。特に小松は観光地ではないので、1つずつの店が楽しめる店になっていくと小松の魅力も増えるのかなって」

小松市の調査によりますと、開業後の4週間で駅周辺の来訪者は前の年に比べて10%ほど伸びています。観光客の姿はまだ多いとはいえない状態ですが、商店街は長い目で状況を見守ります。

滝本茣蓙店・辻奈穂子店長「一気にではない小松は。少しずつこの街の魅力を外の人に広がって言ってもらえたら。細く長くじっくりと外の人たちを待ちたい」

新幹線との付き合いが今後長く続くことを思えば、小松駅周辺のにぎわいは年輪を重ねるような気持ちで生み出していこうというのが、地元の人たちの思いのようです。

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