2022年7月に結成し、2023年4月にデビューした吉本興業所属のはるかぜに告ぐ(通称、はる告ぐ)。ツッコミ担当のとんず、ボケ担当の一色といろ、二人は結成1年目ながら『女芸人No.1決定戦 THE W』では、2023年の決勝に進出して大きな話題となった。
結成1年目ながら見事なネタの構成と場馴れ感、そして個性的なルックスにも注目が集まる二人。ニュースクランチ編集部は、コンビ結成からネタ作りについて、そして今後の展望までをインタビューで聞いた。
▲はるかぜに告ぐ(とんず / 一色といろ)【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】
NSCに入ったきっかけは運動不足の解消?
――とんずさんから、といろさんに声をかけてコンビを結成したとのことですが、改めてコンビ結成の経緯を教えてください。
とんず:もともと別のコンビを組んでいたんですけど、解散して相方を探していたときに、といろさんを見つけたんです。といろさんはピンで活動していて「私と真反対の人おる!」って目を付けていました。でも、期待したのにゲボおもんないネタやってて。私がネタ書いたほうがおもろくなると思って。それで「とりあえず1か月だけやろか」って声をかけました。
といろ:声かけられるまでネタを見たこともないし、会ったこともなかったんですよ。誘われて悩みましたけど、ピンでやっているとネタを作らないといけないじゃないですか。“ネタを作り続けるのめんどいなぁ……”と思っていた時期だったので、ちょうどいいかなって。
――といろさんはNSCに入った経緯が特殊だとお聞きしました。
といろ:運動不足解消です。
――斬新な考え方ですね(笑)。
といろ:お笑い芸人になるつもりもなかったんです。所属だけして、フリーランスとして働こうと思っていました。だから、コンビを組んだらネタやらないといけないのか……って悩みましたね。
とんず:運動不足解消でNSCに入ったなんて、誘った当初は知らなかったですよ。ようわからんことゴチャゴチャ言ってんなって。まぁ、こんなこと言ってますけど、(宣材写真を指差して)表に出たくないヤツが、こんなノリノリで写真撮られないですから。
――たしかに(笑)。
といろ:とんずのほうがやる気なさそう。
とんず:今も“大丈夫か?”と思うことはあったりするけど、1年目の間はOKにしてます。そもそも、やる気がないと言うより、何をしたらいいかわからんみたいな感じやから。
▲NSCに入った理由を「運動不足解消」と語るといろ
――といろさんには何を考えているのかわからない、不思議な感じがありますよね。
とんず:そう! そうなんですよ!
といろ:そんなことないですよ。
とんず:でも、意外とお笑いを「仕事」としているので、言ったことはちゃんとやってくれる。年齢的にも私が25で、といろさんが27。女のケンカも避けて通りたい年齢じゃないですか。だから一緒に仕事するのは楽ですね。
といろ:そうねぇ。
とんず:もうちょい……あとほんのちょっっっと、やる気がなかったらだいぶヤバいです。
――ギリギリのところなんですね(笑)。
とんず:むしろ、やってくれているとは思うんです。でも、お笑いに対するモチベーションが……全くわかんない。
といろ:例えば、収録があるときは、その準備をするのがモチベになっている感じですかね、仕事として向き合っているので。今後の目標としては、奈良をブラブラ旅する番組か、VTRを見て微笑むだけの番組に出演したいです。
といろの伝わってなさがエグい
――とんずさんがネタを書いていますが、といろさんも“言わされている感”がないように思えました。お二人の共通認識が近いかなのかと思ったのですが、いかがでしょう?
とんず:といろさん、空っぽやからな~。何も思ってないんじゃない?
といろ:覚えにくいネタとか、覚えやすいネタとかは思ったりしますけど、別に“こうしたほうがおもろくなる”とかは思ったりはしないですね。
――といろさんに完成したネタを送り、それからネタ合わせをするって感じでしょうか?
とんず:そうですね。といろさんがネタ送れって言うんで……。
といろ:だいたいは覚えておきたいので。
とんず:で、ライブ前にネタ合わせをするみたいな感じです。といろさん、最初は何がウケるかよくわかってなかったよな?
といろ:バラエティ番組はよく見ていたんですけど、ネタはあまり見たことがなくて。ネタはフィクションやし、どうせお客さんのなかに“笑い屋”みたいなのがおるんやろうなって。
とんず:よくない! よくないって!
といろ:だから、ベタなお笑いとかも知らなくて。これがウケるとか、わからなかったですね。
――狙いにいっていないからこそ、おもしろいというのもあるんですかね?
とんず:そうですね。おもろいと思っている線がズレているのがおもしろい。ピンネタとかはヤバくて。気持ち悪いネタやってましてね。
といろ:気持ち悪くないやろ。お嬢様ネタみたいな感じで、言葉遊びするネタだったんです。
とんず:どこがや! そのお嬢様ネタっていうのが「面接のときに、賄賂で株式のほうの『株』を渡さないといけないのに、球根の『カブ』を渡しちゃいましたわ。まさに晴天の霹靂!」……どんなネタ!?
――(笑)。「晴天の霹靂」はブリッジで。
といろ:そうです! おもしろい言葉遊びですよね。
とんず:違う、ただのバグ。といろさんはバグってるだけ。発想はおもしろいんですけどね。一個先に行きすぎてわからん感じがあるんです。伝わってなくてウケてないのか、単純に面白くなくてウケてないのか……二択ってよく言いますけど、といろさんの伝わってなさがエグかったですね。
先輩のネタは見ないようにしてます
――といろさんも最近は少しずつお笑いがわかってきたんですよね。
とんず:それがちょっと寂しいんですよね。ついに小ボケも覚えてきて。YouTubeでファッションの紹介をするときに「これは本当に素晴らしい服です。こちらはイオンで買いました」みたいな小ボケを入れだして、わかりやすくなってきたなとは思いますね。それをナメた顔しながら言うんですよ。“これでいいんでしょ?”みたいな感じが鼻につく。
▲といろが少しずつお笑いがわかってきたことを寂しいと表現するとんず
――ネタを作るにあたって、とんずさんが影響を受けている先輩芸人やネタはありますか?
とんず:あえて見ないようにしてますね。やっぱり口癖とかうつっちゃうので。
といろ:意図してなくても似てるって言われることもあるよね。
とんず:よう言われるのは、金属バットさんとか尼神インターさん。でも、全く見ないようにしていて。偶然似ることはあると思うし、そんなん言い出したら、誰しも何かしらに似てる部分ってあるんじゃないですかね。
といろ:それはそうやね。
――ネタというより、見た目やキャラクターで似ている、という方が多いのかもしれないですね。
とんず:そうですね。似ているって言われる芸人さんは、私たちみたいな偏見ネタやってないんで。吉本がお金を出して作家さんにネタを書いてもらってるって書き込みがあったり。
――それは頭にきたんじゃないですか?
とんず:先輩にもめっちゃ心配されました。でも、怒ってないというか。逆に作家が書いているくらいのクオリティのネタだったってことですよね。
といろ:たしかにね。うれしいことではある。
とんず:若手芸人のために吉本がお金出して作家雇うかー!!
『THE W』決勝進出での大きな変化
――昨年の『THE W』での決勝進出は大きな話題となりました。周りの反響はいかがですか?
といろ:それまでは週1も仕事がないレベルだったので、それで言うとすごい変わりましたね。
とんず:ネタ作る時間もなくて限界ですね。
といろ:違うネタやってほしいって言われるよな。
とんず:でも、ネタのストックがなくて。NSCのときに『M-1』の3回戦にいったから、1本のネタをこする時間が長かったんですよ。みんながネタを作ってるとき、こすり続けてたのもストックがない原因ですね。で、『THE W』に出るとなって、ネタが完成したのが6月ぐらい?
といろ:そうやね。
とんず:ストックがないから、ほんまに5本ぐらい作りました。「といろさ〜ん……」って連絡しても「寝てました~」って。といろさんは今日も元気いっぱいです(笑)。
――『THE W』決勝進出もあり、見る人たちの期待も大きいですよね。
とんず:そうなんですよ。ライブを見に来てくれる人って、お笑いが好きだし詳しいので。新ネタ考えるのと、他のお仕事のバランスは難しいところです。
――仕事に対する姿勢で変化したことはありますか?
とんず:なんとなくですけど、得意・不得意みたいなのは見えてきましたね。うまくいっていなくても、“苦手なことだから気にせんとこう”と思えるようになりました。
といろ:しょうがないってね。
とんず:適当にやるとかではなくて、「難しい! 私にはダメやわ!」とか「あのとき助かったわ」って、お互い言い合うようになったかな。とくにテレビとかでな。
といろ:そうやな。本当に全くわかんない状態だったので。大勢いるときの立ち回りは難しすぎます。
とんず:前に出るスキルがないから、当てられたときにキッチリこなそうと。それで、なんとなくのパターンができてきて。といろさんがボケやから、最初の頃は“お前が出な、こっちはツッコまれへんやん!”と思っていたけど。でも、私が出たところで、といろさんはツッコミが全くできないので……。
といろ:全くしない。
とんず:失礼しました。できないんじゃなくて、しないでした。
――(笑)。
とんず:ツッコミがおらんから、私が出てしまってもボケが死ぬんですよ。ただ、といろさんが前に出るのは無理やって。将来的には出てほしいけど、今はまだ1年目だし仕方ないかなって。
といろ:大勢の芸人さんがいるなかで前に出るのは難しいですね。
とんず:むずいよな。私たちがどんなコンビなのかも知られてないってのもあるし。
母親が似ているから根っこの部分も似てるのかな
――見た目などは真逆に見えますが、似ていると思う部分はありますか?
とんず:根っこは似てるよな。がわ(側)の形成はちゃうけど。
といろ:お互いの母親が似ているんですよ。
とんず:パリピの母親な。
といろ:とんずのお母さんとお話しさせていただいたことがあるんですけど、うちの母親と性格が似ているんです。どちらの母親も兵庫出身で、年齢も近くて、共通点が多いんです。とんずのお母さんなんだけど、自分の母親と話しているみたいな感覚になるんですよ。
とんず:うちのお母ちゃん育ち悪いけどなぁ。
といろ:うちの母もよくない。
とんず:あ、そうなんや…(笑)。
といろ:母親が似ているから根っこの部分が似てるんじゃないですかね。
――ネタに違和感がないことに通じる部分がありそうですね。芸人さんじゃなくてもいいんですが、人生で一番影響を受けた方は誰になりますか?
とんず:バンドマンかなぁ。音楽好きで自分もバンドをやってたので、緊張はするけど舞台に立てているんだと思いますね。
――バンドマンで会ってみたい人なども?
とんず:そうですねぇ……。遠いところで言うとRADWIMPSの(野田)洋次郎。
といろ:私が一番影響を受けたのは櫻井翔さんですね。小学校の頃にめちゃくちゃ嵐が流行って、私も好きやったんです。高学歴で話も面白くて、社会的地位もある。
――社会的地位(笑)。
といろ:それでいて文章もおもしろいんですよ。でも、尖っている部分もある。私もそうなりたいなぁって思いますね。生き様もカッコよくて憧れます。
――賞を取ることが目標と語られていますが、その次の目標はありますか?
といろ:私は通販番組をやりたいですね。一度ハイヒールさんの通販番組に出させていただいたんですけど、意外と向いているなって。言ってみれば紹介するものも決まっていますし、リアクションも決まっているじゃないですか。
――リアクションも決まっている……?
とんず:……これはまずいぞ。ここらへんで終わりにしましょか!(笑)
▲さらに活躍の場を広げていく二人に注目したい
(取材&撮影:TATSUYA ITO)