秋篠宮さまの流儀 多くの人へのお見舞いではないが…ご自分の立場から被災者に寄り添われ被災農家をお見舞い

秋篠宮さまは、4月18日、石川県穴水町の被災した農家を訪問されました。訪問されたのは、大日本農会による農事功労をうけた農家でした。石川県のご訪問は今年2回目です。

秋篠宮さまの被災地へのご訪問は、天皇皇后両陛下とは違った形でのアプローチから、被災者とふれあわれているような気がします。

大日本農会総裁として

大日本農会とは、農業の発展と農村の振興を目的として、1881年に設立された公益財団です。140年を超える歴史を持つ財団には、初代会頭を北白川能久親王が就任し、五代会頭には高松宮さま、六代は桂宮さまと歴代会頭には皇族が就き、秋篠宮さまは、7代目の会頭を務められています。

この財団では、農業事業において、改良を奨励したり実行した農家、また、農業に関し有意義な研究や発見をした人たちを「農事功労者」として毎年表彰してきました。さらに、表彰を受けた農家を秋篠宮さまは視察されてもいます。

今回秋篠宮さまは、石川県穴水町で農家を営み、2022年に農事功労の表彰を受けた前田忠男さんと2020年に表彰を受けた川原良正さんから、被災状況について話を聞き、また実際に被害を受けた農地などをご覧になりました。

このとき秋篠宮さまは、「これからの農業はどうするのですか」と質問されたということで、できる限りの作付けをしていきたいと川原さんが答えたと言うことです。前田さんは、「殿下がこういう個人の所をこられるのは本当に珍しいと思うので、きょう殿下が来られたことを心の支えと仕事の励みにして頑張ります」と伝えたということです。

台風被害の福島でも農家を視察

秋篠宮さまは、2020年にも大日本農会が表彰し、災害により被災した農家を、紀子さまと一緒に訪問されています。このとき訪問されたのは、前年に台風19号により大きな被害を受けた福島県伊達市でアンポ柿を生産する宍戸里司さんの作業場でした。

そして、宍戸さんらの説明で、台風により被害を受けた果実園の様子なども阿武隈川の堤防からご覧になっています。

秋篠宮さまは、大日本農会会頭という立場から、農業従事者から被災状況をお聞きになり、農業への影響をお見舞いされてきたのです。

今年2度目となった石川県ご訪問ですが、実は1度目も、似たような形でのご訪問でした。

2月14日、秋篠宮さまは、済生会金沢病院を訪問されています。病院では、全国の済生会から応援のため派遣されてきた看護師などの職員、被災した病院の職員、能登地方で怪我をして転院してきた病人の方や透析のため通っている患者さんなどと懇談されたということです。

秋篠宮さまは、事前にオンラインで金沢病院と結び、病院の受け入れ状況や職員の疲弊状況などについて説明を受けていたということですが、実際に対面で話をした患者の中には涙ぐむ方もいたということです。

病院側は、秋篠宮さまに「共感と励まし」をいただいた、「リアルにお伝えできたのではないか」と感想を述べていました。

実は、秋篠宮さまは恩賜財団済生会の総裁を務められています。このときは、被災地での病院の体制をお聞きになり、励まされたのです。

両陛下とは違うアプローチで…

多くの人へのお見舞いではないが、ご自分の立場から情報を把握し、現場を見て、被災状況を理解していく…天皇皇后両陛下とは違ったアプローチで、被災者たちとのふれあいを持たれていることがわかります。

両陛下のように広く多くの方にお見舞いの気持ちを伝えられたわけではありませんが、現地の抱える問題をポイントで把握していくことで、被災地への思いを伝えようとされているのです。

【執筆:フジテレビ皇室担当解説委員 橋本寿史】

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