注目・国内初アイヌ民族先住権訴訟…原告訴え退ける サケ捕獲…札幌地裁の判断をより詳しく解説

北海道浦幌町のアイヌ民族団体が、地元の川でサケをとるのは先住権の一部であるとして確認を求めていた裁判で、札幌地裁は原告の請求を棄却しました。

原告側は「不服」として控訴する方針です。

(原告 アイヌ民族団体 差間啓全さん)「率直に言ってこの判決は不服です」

判決後の報告会で悔しさをにじませた、原告で浦幌町のアイヌ民族団体・差間啓全さん。

差間さんらは4年前、地元の川でサケをとるのは先住権の一部であるとして、国などを相手に日本で初めて「先住権」の確認を求める裁判を起こしました。

アイヌがサケをとってきた歴史的な事実に基づき、浦幌十勝川でサケ漁ができる権利の確認を求めています。

一方、国は一貫して「現行の法律で認められていない」と反論していました。

2024年4月18日の判決で札幌地裁は「アイヌ文化を享有する権利は最大限尊重されるべき」としました。

一方で、経済活動としてサケをとる権利については、河川は公共の物であることから「特定の集団が排他的に漁業を営む権利を有すると認めることは困難」などとして訴えを退けました。

(原告側 市川守弘弁護士)「河川を公共用物として管理する国がどういう権利が認められるのかを決められるという流れになってしまって、その結果 経済活動として自由にアイヌがサケをとる権利は認められませんよ、そういう先細り判決になっている」

(原告 アイヌ民族団体 差間啓全さん)「先祖のアイヌの人たちが生活や交易でサケをとっていた(道の許可が必要な)特別採捕で限られた数だけで終わるのではなく、経済活動として生活の糧になるようにしたい」

裁判所が初めてアイヌを「先住民族」として認めた1997年の二風谷ダム裁判で、当時、原告として国とたたかった貝澤耕一さんはー

(二風谷ダム裁判の原告 貝澤耕一さん)「あのときは画期的(な裁判)だったよね。それからみるとはるかに後退している。あの判決はどこにいったんだろう」

国際人権問題に詳しい専門家はー

(中央大学法務研究科 小坂田裕子教授)「札幌地裁が歴史的な不正義の問題を若干考慮しているとはいえ、しっかり正面から向き合わず現代的な権利関係のみに焦点を当てて判決を出したのは残念。国際的な潮流から外れるものではないかと思っています」

原告は判決を不服として控訴する方針を示しています。

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