人手不足など同じ悩みを抱える事業者がタッグ!人×モノ×伝統をつなぐ地域循環型の縫製工房

各企業とも人手不足が大きな課題となっているなか、「縫製産業」も例外ではない。

どうしたら「縫い手」が確保できるのか?こうした悩みの解決を目指した小さな工房が、沖縄県宜野湾市にオープンした。

顧客の体型や好みに応じて手がける衣服

県道34号沿い、宜野湾市にある株式会社islandworks(アイランドワークス)。

ここでは、「KIZUNA(キズナ)」というブランド名で、自社開発のセミオーダーカスタムメイドのかりゆしウェアや、ウェディング参列衣装、アートとのコラボ企画で生まれた商品などを販売している。

アイランドワークス代表の野原真麻さんが主にデザインを手がけ、顧客の体型や好みに応じて作るセミオーダーのかりゆしウェアは、上質な一点ものを求めるお客さんに人気だ。

かりゆしウェアを購入した具志堅康宏さん:
いいですね。めっちゃかっこいい。思った以上にいい作品になっていて、めちゃくちゃ気に入っています。軽いし、あとこの紅型の全部に意味が込められているというのも聞いて、もっと愛着が沸きます

人手不足の対応で縫製工房を立ち上げ

2020年には「Kizunaセミオーダーかりゆしウェア」が宜野湾市特産品推奨品に認定された。

一見、順調に成長しているかのように見えるなか、野原さんはアパレル業界のある課題を感じていた。

洋服の作り手がいなく、オーダーをとっても縫う人がいないことで、納品が遅れたりと、自身のブランドとして歯がゆい課題がたくさんあった。

そんな課題解決に向け野原さんは、同じく沖縄県内でアパレル事業を手がける大坪育美さんとともに、縫い手不足への対応をするための縫製工房を立ち上げを決意し、2023年末にクラウドファンディングを実施した。

このプロジェクトは野原さん自身のためだけではなく、地域や母親たち、縫製業界の工場といった社会的な夢を一緒に叶えるチャンスだと感じたため、クラウドファンディングを行なった。

伝統工芸と資源と人が循環し、地域で自立したモノづくりを実現させたいという想いに賛同した100人以上の協力により、クラウドファンディングは成功した。

株式会社islandworks代表 野原真麻さん:
本当に身近な人たちからのすごく大きな支援がたくさんあったんですが、クラファンをやったことで、「縫製に興味があります」とか、同じような業界の人たちでも、「ちょっと話を聞いて、一緒に支援してあげるよ」「技術指導をウチでもやろうか」「仕事まわすよ」と声をかけてくださり、一気にこの輪が広がった感じがありました

もう一つの目的は「女性の自立支援」

2024年2月、こうして夢の詰まった小さな縫製工房「MAARU FACTORY(まぁるファクトリー)」は稼働を開始した。

株式会社islandworks代表 野原真麻さん:
ここがメインの広場になるんですけど、ここでは主に生地の裁断をしたり、あとはソーイングのワークショップとか、スクールもここで教えていきます

株式会社islandworks代表 野原真麻さん:
こちらがミシンで縫製する場所になります。これもシャツをいま縫ってもらっているところなんですけど、シャツを縫うミシンになっています

株式会社islandworks代表 野原真麻さん:
ここが一応休憩室になっていて、ここにまぁるファクトリーの中での大事にしたい“あいうえお”とか、今どういう仕事が入っているよとかということを載せているボードだったりします

実は、MAARU FACTORY立ち上げのもう一つの目的は、「女性の自立支援」だ。

野原さんは、工房に来て作業をするだけではなく、家にミシンがある方は家に持ち帰り、業務委託という形で仕事ができるようにも進めている。現状はシングルマザーの方が一人だが、今後は縫製をまったくやったことがない方も採用していきたいと考えている。

株式会社OLIFE 大坪育美さん:
私たちはやっぱり思いがあってこうした場所を立ち上げているので、もうひたすら前に前にと進むのみだなと、いま改めてすごい覚悟を決めてやっていこうと思っております

MAARU FACTORYでは、就労支援施設の利用者向けのワークショップも開催している。
この日は、廃棄されるマンゴーとウコンから抽出した染料を使った草木染めのワークショップが行われた。

株式会社OLIFE 大坪育美さん:
今回はマンゴーの草木と沖縄のウコンの皮の部分を使った染物になります。

株式会社islandworks代表 野原真麻さん:
モノづくりにはいろんなプロセスがあって商品ができるという工程を、まず商品を作る側としては体感してもらいたいなと思っています

ワークショップを担当した大坪さんは、「ただ草木で染めるというより、なるべく農家さんから出る、捨てられてしまう野菜といった資源を、最後まで活用して物を作ろうという想いで商品を企画しているので、捨てられてしまうものが、まだまだ色を出せて楽しむことができるということを、楽しんで知っていただきたい」とワークショップの意義を語った。

参加者 大城志紋さん:
初めてやったけど、オリジナルを作っているのが楽しかった

参加者 田中友梨さん:
やってみて、思っていたのと違う柄になっていったが、かわいくできていて楽しかったです

子育てをしながら仕事、キャリアを作る手段の一つに

工房を立ち上げからしばらくたち、受注も徐々に増え、工房も慌ただしくなっている。

従業員 船越清花さん:
私はいま大学生で、地域の人たちと伝統を繋ぐこのファクトリーっていうところにすごいひかれて、アルバイトをさせてもらいました

従業員 神田栞里さん:
いよいよ動き始めて、私もいま実感が沸いています。これからもっと地域に密着した場所になれるように私もサポートできたらいいなと思っています

地域の人が主役になったモノづくりの商品が、かりゆしウェアであるというストーリーを描きたかった野原さんは、地域の人が誰なのかを考えた。

そのとき、戦後の沖縄で男手がなくなったお母さんたちが、縫製を仕事にして家計を支えていたというストーリーに着目し、そこへ原点回帰しようと思いついた。

野原さんには、沖縄の女性が子育てをしながら新しい仕事やキャリアを作るときの手段の一つ、選択肢の一つになれる職業にしていきたいという想いがある。

株式会社islandworks代表 野原真麻さん:
この沖縄の商品が沖縄から飛び出して、県外や海外へ届き、沖縄の今までもってきたルーツと、ここで作っているというエコシステムでできたモノを、世界の人が同じようにシンパシーを感じて手に取ってもらえるのが、一番の理想として目指しています

小規模アパレルブランドが抱える課題、縫製業界の人材不足の課題、女性の経済的自立へ向けて始まった地域循環型の縫製工房「MAARU FACTORY」の挑戦は始まったばかりだ。

(沖縄テレビ)

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