〈新潟水俣病訴訟〉原告は安堵と悔しさ…26人を水俣病と認定 昭和電工に賠償命令も国の責任認めず

国の基準で新潟水俣病と認められなかった患者たちが国と原因企業の昭和電工を相手取り、約10年前に起こした裁判で原告の一部に4月18日、判決が言い渡されました。新潟地裁は47人のうち26人を水俣病と認め、昭和電工に対し賠償を命じた一方、国の責任は認めませんでした。

18日正午ごろ、新潟地裁前で集会を開いていたのは、新潟水俣病第5次訴訟の原告団です。

【中村洋二郎 弁護士】
「皆さんの声は必ず通る、必ず通って勝つということは間違いないと私も確信しております」

【新潟水俣病第5次訴訟原告団 団長 皆川榮一さん】
「10年という年月、原告の私たちにとっては長い10年の戦いであった」

1965年5月31日に公式に確認された新潟水俣病。

昭和電工・鹿瀬工場の排水に含まれたメチル水銀を川魚などを通して、摂取した人たちが手足のしびれなどの感覚障害に悩まされ、中には命を落とす人も。

被害者の中には差別や偏見を恐れ、なかなか声を上げられなかった人が多くいました。

【新潟水俣病第5次訴訟原告団 団長 皆川榮一さん】
「(水俣病患者だと)手を上げれば何を言われるか分からないという人もまだまだいるのではないかと思うが、そういう人たちも救済できる道筋をつけるのが今回の裁判の大きな目的でもある」

皆川榮一さんも退職するまで症状を隠し続けた一人。

その皆川さんを原告団・団長に、国の基準で水俣病と認定されず特措法の救済対象からも漏れた男女22人が国と昭和電工に損害賠償などを求め、2013年12月に起こしたのが新潟水俣病第5次訴訟です。

同様の裁判では、去年9月に大阪地裁が原告128人全員を水俣病と認定。国と原因企業などに損害賠償を命じています。

【新潟水俣病第5次訴訟原告団 団長 皆川榮一さん】
「大丈夫。これは大阪とともに新潟でも勝てるのではないかなと」

この大阪の判決に希望を見出した新潟の原告団でしたが、3月、熊本地裁は原告144人のうち25人を水俣病と認定したものの、発症から20年以上が経過し、損害賠償の請求権が消滅しているとして原告全員の請求を棄却したのです。

裁判所によって判断が分かれる中、提訴から10年あまり…

【新潟水俣病第5次訴訟原告団 団長 皆川榮一さん】
「必ずや良い結果が出ていることを私は信じてこれから入廷します」

ようやく迎えた判決のとき。新潟地裁は18日、原告149人のうち審理が終わった47人の判決を言い渡しました。

午後1時半に始まった裁判で下された判決は…

【記者リポート】
「原告の弁護団が出てきました。出された紙には『国の責任を認めず、多数水俣病と認める』と書かれています」

原告47人のうち26人を水俣病と認めた一方で国の責任は認めないという結果に。

今回の裁判の主な争点は原告が水俣病と認められるかどうか、水俣病の発生・拡大を防げなかった国の責任の有無でしたが、新潟地裁は…

【新潟地裁】
「行政認定を受けていない原告45人のうち26人は水俣病にり患している高度の蓋然性が認められる」

すでに水俣病患者として行政認定を受けている2人を除き、原告45人のうち26人を水俣病と認定。

そして、昭和電工に対しては過失による不法行為責任を負うとして、この26人に対して1人当たり400万円の支払いを命じました。

一方、健康被害が生じることを認識・予見し得たとは言えず、国家賠償法上の違法はないとして、国の責任はないとの判断を示しています。

3月の熊本地裁では発症から20年以上が経過し、損害賠償の請求権が消滅する除斥期間を過ぎているとして原告全員の請求を棄却していましたが、今回、新潟地裁は差別・偏見などによって損害賠償の請求権の行使が困難な事情があったと指摘。請求権が消滅したとすることはできないとの見解を示しています。

この判決に対し、原告団の団長として先頭に立って闘ってきた皆川榮一さんは…

【新潟水俣病第5次訴訟原告団 団長 皆川榮一さん】
「きょうの裁判で一区切りというか、私もちょっとはホッとした」

半数以上が水俣病と認定されたことに安堵した一方で、国の責任が認められなかったことについては悔しさをにじませました。

【新潟水俣病第5次訴訟原告団 団長 皆川榮一さん】
「今まで何回も裁判で闘ってきた国の責任というものが、また今回も国に負けたと思うと本当に悔し涙が出る」

判決を受け、昭和電工は「判決内容を確認し、今後の対応を検討する」とコメントしています。

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