“地元の川で行うサケ漁は先住民族の権利” 北海道浦幌町のアイヌ民族団体が「先住権」認めるよう国や道を訴えた裁判 札幌地裁「河川は公共物。特定の集団による排他的な支配は許されない」などと請求を棄却

北海道浦幌町のアイヌ民族の団体が地元の川で行うサケ漁は先住民族の権利だとして、国と北海道に権利の確認を求めた裁判。札幌地裁は4月18日、原告の訴えを退ける判決を言い渡しました。

原告 差間 啓全さん

「率直に言ってこの判決に不服。アイヌ民族の先祖の人たちが各地の河川で生業としてサケをとっていたのは間違いない事実」(原告 差間 啓全さん)会見場で話す、北海道浦幌町に住む原告の差間啓全さん。近くには叔父の差間正樹さんの遺影があります。

叔父の差間正樹さん

正樹さんはアイヌ民族の権利回復のため尽力してきましたが2024年2月、73歳で亡くなり、判決の日を迎えることはできませんでした。

この裁判は浦幌町のアイヌ民族の団体「ラポロアイヌネイション」が先住民族固有の権利である「先住権」を認め、川でサケ漁ができる権利の確認を求めて国や道を訴えているものです。裁判の争点は原告が主張する「先住権」です。「先住権」とは先住民族が土地や資源など伝統的に所有するものに対する権利のことです。2019年の「アイヌ施策推進法」ではアイヌ民族を先住民族と明示しましたが、この先住権には触れていませんでした。原告側はアイヌ民族が伝統的に地元の川で行っていたサケ漁は先住民族として認められる権利だとして、2020年8月、札幌地裁に提訴しました。

入廷する原告ら

「元々、持っていた権利を取り戻す」(原告の会見)裁判では原告側が「長年の慣習で確立したものであり、先住民族の固有の集団の権利として国際的にも認められている」と主張。一方、国と道は「原告が求める漁業権については法的根拠がない」などと反論していました。提訴から約3年半。4月18日の裁判で札幌地裁は「アイヌ民族の人々の文化享有権の行使との関係において、サケの採捕は最大限尊重されるべき」としたものの、「河川は公共物であり、特定の集団による排他的な支配は許されない」などとして原告の訴えを退けました。「この判決は正樹さんも願ってる判決ではない」「(Q・正樹さんになにか伝えるとしたら?)遺影は奥さんから借りてきた。帰ったら正樹さんの遺骨の前で、今のこの悔しい気持ちを引き続き訴えていきますと」(ともに 差間 啓全さん)原告は控訴する方針です。

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