直近5年で3度目の対戦となるマブズvsクリッパーズ。“プレーオフ皆勤賞”のハーデンが意気込み「チームをうまくプレーさせたい」<DUNKSHOOT>

NBAのプレーオフは全ラウンドが4戦先勝のシリーズで、チャンピオンシップを勝ち獲るためにはファーストラウンド、カンファレンス・セミファイナル、カンファレンス・ファイナル、NBAファイナルと4つのシリーズで4勝しなければならない。

現地時間4月20日(日本時間21日)からスタートするファーストラウンドで、最も実力が拮抗しているのは第4シードと第5シードによるシリーズ。ウエスタン・カンファレンスでは、21日に初戦を迎える4位のロサンゼルス・クリッパーズ(51勝31敗)と5位のダラス・マーベリックス(50勝32敗)によるカードだ。

シーズン中の直接対決はクリッパーズが2勝1敗とリードしているが、両者が最後に対戦したのは昨年12月20日まで遡る。マブズはその後、2月のトレード・デッドラインでフォワードのPJ・ワシントン、ビッグマンのダニエル・ギャフォードをロスターに加え、オールスター後はウエスト3位の18勝9敗と成績を伸ばした。また、試合時間残り5分で5点差以内のクラッチシチュエーションではリーグ2位の勝率71.9%(23勝9敗)を残している。
チームの中心は言うまでもなく2人のスターガード。平均33.9点で今季の得点王に輝き、なおかつ9.2リバウンド、9.8アシストを誇るルカ・ドンチッチと、同25.6点、5.0リバウンド、5.2アシストを残すカイリー・アービングという、勝負所で無類の強さを発揮するバックコートコンビだ。

マブズとクリッパーズは過去4年間で2回、ファーストラウンドで対戦しており、2020年は4勝2敗、21年は4勝3敗でいずれもクリッパーズが制している。ただし、当時のマブズはドンチッチに次ぐ得点源がクリスタプス・ポルジンギス(現ボストン・セルティックス)とティム・ハーダウェイJr.だっただけに、アービングがいることはこの上なく心強いはずだ。

一方、クリッパーズではカワイ・レナードがマブズ相手にいずれもシリーズ平均30点超えと爆発し、ポール・ジョージが2番手スコアラーとして機能。今季はジェームズ・ハーデン、ラッセル・ウエストブルックも擁していることから、過去の対戦以上の白熱のシリーズになることが容易に想像できる。 もっとも、レナードは修復手術を受けた右ヒザが炎症を起こしているため、レギュラーシーズン最後の8試合を欠場。16日のチーム練習でも5対5には参加できていなかったが、タロン・ルーHC(ヘッドコーチ)はレナードがシリーズ初戦からコートに立つと想定して準備していると、米スポーツ専門局『ESPN』が報じている。

マブズの顔がガードコンビなら、クリッパーズの中心はレナードとジョージのウイング陣。その周囲をハーデン、ウエストブルック、ノーマン・パウエルらが支え、ペイントにはイビツァ・ズバッツやメイソン・プラムリー、ダニエル・タイスという職人タイプのビッグマンたちが並ぶ。

シリーズ開幕を前に、ゴールデンステイト・ウォリアーズのドレイモンド・グリーンが自身のポッドキャスト番組で、“選手目線”としてキープレーヤーを挙げていた。

「シリーズのXファクターはラッセル・ウエストブルックになるだろうな。カイリー・アービングをガードしなきゃいけないからだ。そしてあのチーム(クリッパーズ)にとっても彼がXファクターになる。彼がいなかった3月にチームは苦しんでいた。ラスがカイリー、カワイがルカへつかなきゃいけない。タイ・ルーは、シリーズを制するためにウエストブルックをベンチではなく先発に転向させる。俺はそう見ている」

ドンチッチとアービングはどちらも1試合50得点以上が可能な爆発力を秘めているため、クリッパーズとしては彼らを乗せたままシリーズを進めたくないだろう。
そうしたなか、クリッパーズにはポストシーズンでどうしても結果を残したいと強く望む男がいる。今季終了後に契約が満了し、完全FA(フリーエージェント)になるハーデンだ。ルーキーシーズンから15年連続でプレーオフに登場する34歳はこう話す。

「いつだって俺はプレーオフでいいプレーをしたい。凄いとは言えない試合もあったけど、本当にいいゲームもあった。俺としては勝つことがゴールであり、(これまでは)NBAキャリアのなかで最高レベルの競争の機会を逃していたんだ」

ハーデンはオクラホマシティ・サンダー時代の2012年にファイナル進出を果たしたほか、ヒューストン・ロケッツ時代も含めて計4度のカンファレンス・ファイナルを経験。しかし、いまだ優勝の経験はない。

昨季はフィラデルフィア・セブンティシクサーズの一員としてカンファレンス・セミファイナルに進出し、ボストン・セルティックス相手に最初の4戦のうち2度の40得点超えをマークして3勝2敗と王手をかけた。だが最後の2試合で計22得点、16アシストと不発に終わり、後味の悪いなかでの終戦となった。

「もちろん、俺個人としてもいいプレーがしたい。それで自分のチームをうまくプレーさせたいんだ。それがこのチームのリーダーの1人として俺がやるべき仕事で、試合ごとにチームメイトたちが持ち込んでくれるものを最大限に引き出したい」とハーデンは意気込む。

クリッパーズの先発ポイントガードとして臨む今季のプレーオフで、ハーデンはチームを機能させてシリーズを突破することができるか。この男の出来が、シリーズの行方を左右しそうだ。

文●秋山裕之(フリーライター)

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