『水曜日のダウンタウン』が“第5の賞レース”に? 「30-1グランプリ」の充実度

17日に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS系)は「30-1グランプリ」企画。「30秒以内のネタ」を唯一のルールとする“賞レース”で、今年で4回目の開催となった。

「名だたる賞レースの仲間入りをしてきてるんじゃないか」とプレゼンターのバカリズムが語っていた通り、今回の「30-1グランプリ」は特に充実した内容だった。エントリーは過去最多の776組、「『THE W』(日本テレビ系)と同じくらい」(バカリズム)だという。

決勝に残った40組は8組×5ブロックに分けられ、各ブロックから1組が最終決戦に進出。残った5組が2本目のネタで優勝を争う。審査員にはバカリズム、くっきー!、霜降り明星・粗品、サンドウィッチマン・富澤たけし、千原ジュニアという豪華メンバーがそろった。

今回は、そんな「30-1グランプリ」からトピックを拾ってみたい。

■ほぼ半数がファイナリスト、2組の王者

現在、お笑い界で“4大賞レース”とされているのが『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)、『キングオブコント』(TBS系)、『R-1グランプリ』(フジテレビ系)、『THE W』である。

今回の「30-1グランプリ」では、『THE W』2022年王者の天才ピアニストと21年王者のオダウエダという2組のチャンピオンが決勝に進出。17年準優勝の牧野ステテコも出場している。

さらに、『キングオブコント』からは23年準優勝のカゲヤマ、18年準優勝のわらふぢなるお、22年3位のや団をはじめとして、いぬ、滝音、ラブレターズ、ファイヤーサンダー、そいつどいつ、ななまがり、やさしいズという10組のファイナリストが参加。『M-1』ファイナリストからはトム・ブラウンも上がってきている。

さらに『R-1』からはサツマカワRPG、キンタロー。、マツモトクラブがピン芸人として参加。賞レース時代の『THE MANZAI』(フジテレビ系)で優勝経験のあるウーマンラッシュアワー・中川パラダイスとのユニット「鳥居パラダイス」として参加した鳥居みゆきとレイザーラモンRG、ななまがり・森下直人も『R-1』ファイナルを経験しており、今回の「30-1グランプリ」参加者のほぼ半数が“4大賞レース”のファイナリスト経験者ということになる。

華やかなラインナップがそろった反面、若手にとっては高い壁の立ちはだかる大会になった。

■本ネタか、一発勝負か

「30秒」という縛りしかない大会だけに、出場者が選んだネタのタイプもさまざま。本ネタから一部を切り出した者もあれば、この大会向けに新ネタを用意した者もあったようだ。

印象的だったのは、サツマカワRPGが今年3月に行われた『R-1』ネタのつかみをそのまま持ってきたこと。カツラを外すくだりのインパクトは強烈で、スタジオでも大いにハネてブロックを通過した。

このシーンで思い出したのは、19年の『キングオブコント』である。「大きなイチモツ」で優勝を果たしたのはどぶろっくだったが、どぶろっくは前年のローカル賞レース『歌ネタ王決定戦』(毎日放送)で同じネタを披露し、メンバーに敗れている。同じ流れになる予感がしたが、サツマカワは決勝で惜しくも敗退した。

また、このところ一部で不運にも「顔ファン論争」の対象になってしまったラニーノーズが完全覆面のネタを選択していたことにもしみじみと感じ入るところだった。この宇宙人ネタはラニーノーズの劇場定番ネタだが、顔を見せなくてもちゃんと面白いことを証明して見せた。

■真っ当にドラマが生まれだしている

優勝は、ななまがり。過去の「30-1」では昨年、一昨年と最終決戦に進出しており、見事に三度目の正直を果たした形だ。昨年『M-1』ラストイヤーを準決勝敗退で終えたななまがりだが、今年に入ってからは絶好調だ。正月のネタバトル特番『お笑いエスポワール号』(TBS系)で優勝、この「30-1」でも優勝を果たし、現在、ノックアウトステージが進む『THE SECOND』(フジテレビ系)でもベスト16に残っている。

優勝報告のVTRでは、スタッフから「今回、松本(人志)さんはいなかったんで」と水を差されてうなだれる2人だったが、この「賞レース優勝しても松本人志はいない」というツッコミは、今後チャンピオンに対するトレンドになりそうな予感を残した。

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たった30秒だが、キャリアの中で「30秒ネタ」を作った経験のない芸人はいないだろう。来年以降の「30-1グランプリ」は、さらなるレベルアップが期待できそうだ。

(文=新越谷ノリヲ)

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