【シンガポール】清掃ロボット社が新工場開設[製造] 東南ア最大、年4千万Sドル目標

工場の開所式に出席したアルビン・タン国務相(右から3番目)とライオンズボットのディランCEO(同4番目)=18日、シンガポール北部(NNA撮影)

業務用の自動清掃ロボットを製造するシンガポールのライオンズボット・インターナショナルは18日、新工場を開設した。生産能力を従来の5倍に引き上げ、清掃ロボット工場としては東南アジア最大規模となった。年間4,000万Sドル(約45億4,000万円)の売上高を目指す。【藤原絵美】

ライオンズボットは2018年設立。シンガポールで業務用自動清掃ロボットを自社で一貫して企画開発・製造し、床のモップ掛けや洗浄、バキューム清掃、清掃機器のけん引など多様な機能を持つロボットを展開している。

新工場は北部クランジに設置した。延べ床面積は4,908平方メートル。ロボットの製造に必要な部品などを保管する倉庫スペースと、部品の組み立てや計測器などを用いて機器の偏りを計測、調整するキャリブレーション、テストゾーン、品質チェック、配送・梱包(こんぽう)などを行う生産スペースから成る。

投資額は1,200万Sドル。製造、医療、教育、小売り、物流などさまざまな分野に向けた高度な清掃ロボットの生産能力を強化した。

ショッピングモールなどの大規模な施設で利用する4種類の異なるタイプのロボットを生産する。人間による設定を必要とせず、意思決定に人工知能(AI)を活用する次世代のスマートロボットの研究開発も進める。

既存工場は東部チャンギのオフィスに併設する形で設けている。新工場では生産能力を既存工場の5倍に拡大し、年間最大4,000台のロボットを製造できるようにした。年間4,000万Sドルの売り上げを目指す。

現在の従業員は約200人だが、新工場の開所に伴い、生産、エンジニアリング、製造、貿易サービス、エンジニアなど55人を新たに雇用する予定だ。

ライオンズボットは、オランダ、米国、英国、インドに子会社がある。これまでに欧米や南アフリカ、オーストラリア、香港、日本など世界30カ国・地域で2,500台の清掃ロボットを販売してきた。

共同創業者であるディラン・ウン最高経営責任者(CEO)は、「新工場の開設で国内外の顧客へ提供できるロボットの数が4倍となる。年内に売り上げを3,000万Sドルに倍増し、25年までの黒字化を目指す」と明らかにした。

自動清掃ロボットを製造するライオンズボットの新工場の内部=18日、シンガポール北部(NNA撮影)

■新たなイニシアチブ始動

シンガポールのタン・シーレン人材開発相兼第2貿易産業相は今年3月、政府によるロボット導入促進策「国家ロボティクス・プログラム(NRP)」で、約6,000万Sドルを用意すると明らかにしていた。施設管理や製造・物流、ヘルスケアなどの分野へのロボット技術の導入を強化するのが狙いだ。

ライオンズボットの新工場の開所式に出席したアルビン・タン国務相は、国家ロボティクス・プログラムの取り組みの一環として、「ロボクラスター・イニシアチブ」を立ち上げることを正式に発表した。同社は同イニシアチブに参加する最初の主要企業となる。

ロボクラスター・イニシアチブではワークショップなどを通じ、研究者や教育機関、施設管理会社、ロボティクス、オートメーション企業や業界関係者を結び付けることで、ロボット技術の導入を支援・強化する。まず施設管理の分野から始動し、今後さまざまな分野を対象とする計画だ。

タン国務相は「シンガポールが新たな事業機会を獲得するためにロボット技術の強化に取り組んでいる」と強調。投資や新たなロボティクスソリューションの共同研究や協力を促すことでロボット工学の導入を促進し、研究市場の開拓を支援することを目指していると付け加えた。

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