「小商圏」に出店攻勢 ドラッグストア・スーパー 「飽和状態」でも…狭い土地活用

クスリのアオキが新店開業の準備を進める建物=金沢市田上の里1丁目

 北陸のドラッグストアや食品スーパーが、従来より集客する範囲を絞った出店を進めている。小売店が増えた北陸は「飽和状態で広い土地がない」とみられており、クスリのアオキ(白山市)は、中型・小型と位置付ける売り場面積約1千~1300平方㍍の店を増やす。アルビス(射水市)は、既存店の半分ほどの売り場の新業態店を石川で導入。各社は狭い土地を活用して出店を競い、収益拡大を図る。

  ●金沢・田上、有松で局地戦

 18日、金沢市田上の里1丁目では、中古品販売・買い取り店「セカンドストリート」が入っていた建物で、クスリのアオキが新店の準備を進めていた。売り場面積は従来の店舗より狭く、野菜などの生鮮食品、医薬品、日用品を扱う方針だ。

 同店の周辺には、ゲンキーやアルビス、イオン、Vドラッグなどが点在し、クスリのアオキの新店により小売店の激戦に拍車が掛かりそうだ。さらに、他社だけでなく、新店と同じく金沢外環状道路山側幹線沿いのもりの里3丁目には自社の鈴見店がある。

 「新店と鈴見店は商圏が重ならず競合しない。各店の周辺住宅街から集客できる」。クスリのアオキの担当者はこう強調する。金沢市有松5丁目でもコンビニ跡地で新店を建設しており、周辺の自社店舗と競合しない小商圏で集客を狙う。近隣の他社店舗との局地戦が激しくなりそうだ。

  ●「広い場所ない」

 同社は10年ほど前には、約1500平方㍍の大型店を増やしていた。しかし、ドラッグストアの急速な増加により、アオキが100店を展開する石川は特に「広い土地がなかなか見つからない」(業界関係者)という。その中で、小さい土地でも集客できる現在の出店方針に行き着いた。

 さらに、約1千平方㍍の既存店に生鮮食品を導入する改装も進める。2024年5月期の上期には約220店をてこ入れし、下期は約30店で実施する方針で、小型店の競争力を高める。

 同様に約1千平方㍍の店舗を増やしているのは、ゲンキードラッグストアーズ(坂井市)だ。この店舗は人口7千人の商圏を設定し、生鮮食品や日用品など毎日安い商品を充実。担当者は「商圏人口が少なくても来店頻度を上げて収益を確保している。この店なら石川でまだ数十店は増やせる」と説明する。

  ●「毎日安い」で集客

 アルビスは3月、新業態の小商圏店舗「アルビスくらす」の1号店「泉が丘中央店」を金沢市泉が丘2丁目に、2号店「内灘店」を内灘町大根布1丁目に相次ぎオープンさせた。売り場面積は約1千平方メートルを基準とし、半径2~3キロを商圏にする。

 新業態店では、商品をいつでも低価格で提供する「EDLP(エブリデー・ロープライス)」の商品を3千種類以上そろえた。特定の商品を日替わりで安くするのではなく、「毎日の安さ」を打ち出し、集客につなげる狙いだ。

 アルビスは1650~2145平方メートルの店舗が標準サイズだが、「くらす」はこれよりコンパクトとなるため、担当者は「ドラッグストアが出すような場所にも入っていける」と話し、出店の選択肢の広がりを指摘。金沢、内灘の2店舗の利用状況を検証し、今後の展開を検討する。

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