中国戦で松木が先制弾も退場者「数的劣位」で戦う際の4大ポイント【U23日本代表パリ五輪予選「初戦の悪夢再び」に備える「10人での戦い方」】(1)

8分、松木玖生が先制ゴールを挙げるも、その後、苦しい展開に。撮影/原壮史(Sony α1使用)

サッカーでは、思いもよらないことが起こるから面白い。11人対11人で戦うはずが、そうではなくなることもある。U-23日本代表は現在、パリ五輪出場権を目指して奮闘中だが、その初戦で思わぬ苦戦を強いられた。相手より1人少なければ苦戦は必定であるが、単なる不運で済ませてよいものか。サッカージャーナリスト大住良之は、あえて「否」と異議を唱える。

■日本代表が犯した「大きな間違い」

前半17分にセンターバックが退場になり、残り73分間(アディショナルタイムを含めれば実際には86分間だった)を10人で戦わなければならないというのは、サッカーのチームにとって悪夢に違いない。だが時として、そんな悪夢とも向かい合わなければならないのが、サッカーというゲームだ。

AFC U-23アジアカップ(兼パリオリンピックアジア最終予選)の中国との初戦、センターバックの西尾隆矢の退場で10人になりながら、U-23日本代表はその後の時間を守りきり、1-0の勝利をつかんだ。しかし、その勝利は、相手のまずい攻めとシュートミスに助けられた、たぶんにラッキーなものだった。

この状況で、日本はチームとして大きな間違いをしたと私は考えている。「10人の戦いになることも想定していた」というが、それはごく表面的なもので、残り時間や相手の特徴を考慮してのものではなかった。

今回は、「数的劣位」の状況における戦い方について考えてみたい。最近よく使われるのは「数的不利」という言葉だが、「数的優位」に対応するものとしては「数的劣位」のほうが正しい日本語のような気がする。まあ、どちらにしても、「退場で10人になったとき、11人の相手に対する戦い方」ということであることに変わりはない。

■考えなければならない「4つのポイント」

考えに入れなければならないポイントがいくつかある。

1) 残り時間は何分あるか
2) 現在のスコアはいくつか
3) 勝たなければならない試合か、引き分けでもOKか
4) 相手の特徴

中国戦では、スコアは1-0で、残り時間は長かった。「1試合を10人で戦う」ほどの感覚である。残り時間が短ければ、たとえば「5バックにして守りきる」という考え方が普通だ。相手は力ずくで同点、そして逆転を目指してくる。しかし、中国戦は、普通に考えても守りを固めても守り切れる時間ではなかった。10人でも守りに回らず、しっかりとボールを保持して攻撃をかける時間もつくらなければならなかったはずだ。

4チームのグループリーグの初戦。チームの力は拮抗している。できれば勝ち点3を得たいが、最悪の場合、勝ち点1でも残り試合で取り返すことは可能だ。アクシデントで1点を失っても、逆転を許してはならない。

■1人減ったときに「混乱のない」システム

相手の中国は、フィジカルが強く、長身の選手をそろえ、単純に走るスピードでは日本選手を上回っているかもしれない。ゴール前に簡単に放り込ませたら、一発のヘディングシュートだけでなく、こぼれ球からさまざまなアクシデントが起こりうる。それを考えれば、できる限り日本のゴールから遠いところでプレーが進むようにしなければならない。

大岩剛監督は「4-3-3」システムの「インサイドMF」のひとりとしてプレーしていた山本理仁(シントトロイデン)に代えて、センターバックの木村誠二(サガン鳥栖)を送り出す。山本と並んで「インサイドMF」でプレーしていた松木玖生(FC東京)は藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)と並ぶボランチになり、両サイドのMFは、スタート時と同じ、右に山田楓喜(東京ヴェルディ)、左に平河悠(FC町田ゼルビア)、そしてワントップに細谷真大(柏レイソル)。「4-4-1」という形である。

「4-3-3」あるいは「4-2-3-1」で戦っていたチームが退場で1人減ったときには「4-4-1」の形にするのが最も混乱がない。押し込まれる状況であれば、両システムとも、「4-5-1」のような形になっているからだ。4人のDFラインの前にもう1列4人のラインがあり、その2列でブロックをつくって相手の侵入を阻止するという考え方は当を得ている。

だが、その形でどうプレーするか―。そこをもっとうまくできたのではないか。

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