【社説】ガソリン補助 時限措置まだ続けるのか

ガソリンや軽油などの価格を抑える補助金をいつまで続けるのか。富裕層や好業績企業も対象となるばらまきは、早急にやめるべきだ。

政府は、4月末に期限を迎える燃油価格抑制策を5月以降も継続することを決めた。延長は7回目となる。今回は「一定期間延長する」として新たな期限を示していない。無節操ではないか。

ガソリンなどの価格補助は原油高騰に伴い、2022年1月に始まった。

岸田文雄政権の発足4カ月目で、生活への目配りを国民にアピールする思惑もあったのだろう。新型コロナウイルス禍で低迷した経済活動の回復を妨げないよう「時限的・緊急避難的な激変緩和事業」と説明していた。

当初、実施期間は2カ月強で、補助金は燃油1リットル当たり5円が上限だった。事業は延長と拡充を繰り返し、補助額は一時40円台まで増えた。

最近は補助金による引き下げ額は20円台で、レギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル当たり175円程度に抑えられている。

燃油価格の高騰は国民生活や経済活動に重くのしかかった。価格抑制策により、車がなくてはならない地域の家計負担は確かに軽減された。

それでも際限なく続けるわけにはいかない。補助金の予算総額は6兆円を超え、財政負担は重い。

価格抑制は化石燃料の消費を促し、政府が推進している脱炭素化に反する。国際通貨基金(IMF)による対日審査でも見直しを求められたばかりだ。

家庭や企業の電気・ガス代の負担を抑える補助金について、政府は予定通り、今年5月使用分を最後に終えるという。燃油補助金だけの延長はちぐはぐ感が否めない。

物価高対策として続けるのであれば、全国一律の補助ではなく、低所得層、離島などの燃油価格が特に高い地域、運送業や農水産業などに対象を絞るべきだ。

その場合も、費用対効果を確認するため、過去2年余りの政策効果を検証することが当然必要だろう。

補助の終了でガソリン価格が上がれば国民の不満が高まり、内閣支持率に響く。政権内部にはそんな心配があるかもしれないが、国民負担を避け続ける姿勢こそが不信を招いた要因である。

防衛費増額の財源の一部は増税で賄うと決めながら、開始時期の決定は先送りしたままだ。少子化対策の財源となる子ども・子育て支援金は、公的医療保険料に上乗せして徴収するのに「実質的な国民負担は生じない」と詭弁(きべん)を弄(ろう)する。こうした対応は責任ある政治とは言えない。

首相がこだわった所得税減税が6月に実施される。この時期を狙って、衆院解散・総選挙に打って出るとの観測もある。期限なきガソリン補助延長を政権維持の手段にしてはならない。

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