“音質も最高”の「グラミー賞2024」受賞曲、人気のPolk Audioスピーカー3機種で聴き倒す!

Polk Audioのスピーカーを使って、グラミー賞の受賞作とノミネート作品を聴いた

2月4日、ロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナで、アメリカ(実質的にはワールドワイド)で最も権威ある音楽賞、「グラミー賞2024」の授賞式が開催された。

グラミー賞はロック、ポップス、クラシック、ジャズなどの幅広いジャンルで、主要4部門 (最優秀新人賞/年間最優秀楽曲/年間最優秀アルバム/年間最優秀レコード賞)を筆頭に、アルバムやシングル曲がノミネートされ、2月4日の授賞式で各賞が発表される。なお、ノミネートの候補期間は2022年10月1日から2023年9月15日までに全米でリリースされた作品となる。

現在の音楽シーンでは実質的に歌詞が入らない、いわゆるインストゥルメンタルのダンスミュージックは、いわゆるクラブやフェスによるDJが選んだ曲がトレンドリーダーとなっている、と僕は思っている。対するグラミー賞は、同じく米国のビルボードチャート同様に、特に洋楽のポップスのベンチマークとなるほか、上述した各ジャンルから選ばれた優秀作が発表される。

僕はオーディオショーなどのイベントを中心に、グラミー賞の受賞曲を積極的に再生している。オーディオ的かつ音楽的な魅力のある楽曲が多いのが理由だが、個人的な感覚として、グラミー賞(およびノミネート)は音質が良くないと受賞できず、イベントの来場者からも好評だ。

それでは、受賞作品は具体的にどのような音なのか? ということで本企画では、アメリカ繋がりということもあり、安価でも再生能力が高いPolk Audioのスピーカー3種を使って、グラミー賞受賞作とノミネート作品の音色、音調、サウンドステージなどの傾向を皆さんと共有したい。

今回試聴した楽曲

手が届く価格も魅力の「Polk Audio」で “グラミー賞” を堪能

Polk Audioは、アメリカ東海岸のメリーランド州ボルチモアに本拠を置くスピーカーブランドだ。ラインナップはエントリーから順に「Monitor XT」「Signature Elite」「Reserve」があり、それぞれのシリーズで小型のブックシェルフから比較的大型のフロア型、ビジュアル用途で使用できるセンター等も用意されている。

アンプにはマランツ「MODEL 40n」を使う。出力は70W×2ch(8Ω)、100W×2ch(4Ω)の2チャンネルハイファイプリメインアンプだ。試聴楽曲はHEOSプラットフォームを活用したネットワーク再生機能を使い、定額制動画配信サービスのAmazon Music Unlimitedから再生した。なお、Amazon Music Unlimitedは今回紹介した楽曲を全て試聴可能だ。しかも、その多くをロスレス以上で聴取できる。

「MODEL 40n」286,000円(税込) ※2024年7月1日から385,000円(税込)に改定予定

先に述べた通り、今回はPolk Audioのラインナップのうち、Monitor XTシリーズ、Signature Eliteシリーズ、Reserveシリーズの全てを使用。受賞作品のなかから、それぞれ3作品をピックアップして再生する。

「MXT20」と「MODEL 40n」を組み合わせた様子

まずはエントリーのMonitor XTから試聴

しっかりとしたディテールで高い完成度、エントリー「Monitor XT」を試す

「MXT20」38,500円(ペア・税込)

まずは、エントリーラインとなるMonitor XTシリーズに属す「MXT20」を利用した。外形寸法は191W×330H×280Dmm、重量は5.5kgの小型の2ウェイ・ブックシェルフスピーカーだ。価格はなんとペアで38,500円(税込)。

ドライバーは2.5センチのテレリン・ドーム・トゥイーターと、16.5センチのバイラミネートコンポジットウーファーで構成され、周波数特性は38Hz - 40kHzと高域限界も広い。コストを大きく左右するキャビネットの表面仕上げは良い意味で簡素化されているが、マットブラックの仕上げはある意味視覚的な迫力もある。

音質を含めた総合的なコストパフォーマンスは、圧倒的だと言わざるをえない。絶対的な情報量や質感表現は上位2モデルには敵わないが、高音域から低音域のディテールがしっかりして質感が統一されていること、低域の量感も不足しておらず、プアな音という印象は全くない。完成度の高いスピーカーだ。

圧倒的コストパフォーマンスを誇るエントリーモデルだ

試聴した3つのソフトとその聴きどころ

マイリー・サイラス「フラワーズ」

【主要4部門/レコード・オブ・ザ・イヤー】マイリー・サイラス「フラワーズ」

主要4部門の1つ「レコード・オブ・ザ・イヤー」を受賞したのが、アメリカ合衆国出身の女性シンガーソングライター、マイリー・サイラスの 「フラワーズ」。ミディアムテンポの楽曲で、イントロのボーカルは極端なオンマイクでも過度なリバーブもかからない、バランスの良い声質だ。

ベースは現代の楽曲なので若干強力だが、とはいっても、ビルボードチャートに上がるようなヒップ・ホップほど低域過多ではなく、ソースに対してアキュレイトな帯域バランスで音階もリアルで印象が良い。バックのコーラスとボーカルの質感も描き分けている。

ココ・ジョーンズ「ICU」

【R&B(ソウル)部門/R&B歌唱賞】ココ・ジョーンズ「ICU」

R&B(ソウル)部門のR&B歌唱賞を受賞したのは、アメリカの歌手、シンガーソングライター、ココ・ジョーンズのシングル「ICU」。まず気がつくのはサウンドステージの広さで、イントロから逆位相成分のコーラスが眼前に幅広く展開し透明感がある。ベースなど低域の立体感も表現されている。

本楽曲はココ・ジョーンズのボーカルが、メローで伸びやか、つまり雰囲気が抜群だ。それをよく伝えてくれるし、音像はピンポイントに提示されている。分解能を強調するようなことはなく、フラットな音色、安価なスピーカーだが必要十分な表現力を持っている。

ビリー・チャイルズ 「ウィンズ・オブ・チェンジ」

【ジャズ部門/ジャズ楽器アルバム賞】ビリー・チャイルズ 「ウィンズ・オブ・チェンジ」

ジャズ部門/ジャズ楽器アルバム賞は、アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれのベテランジャズピアニスト、ビリー・チャイルズの「ウィンズ・オブ・チェンジ」が受賞した。表題曲を試聴したが、本楽曲はシンプルな編成で、現代ジャズの音質チェックにも最適だ。

まず気に入ったのはピアノの音色の良さ、そしてブライアン・ブレイドとスコット・コリーによる、リズムセクション。また、アンブローズ・アキンムシーレのワンホーントランペットにも、それぞれ適度な音色と、空間へしっかりとした定位を感じる。左右方向に加えて前後の定位感も良質に表現し、独特の緊張感を表現している。

2:16くらいからテンポが上がって本楽曲の魅力が出てくるのだが、スピーカーがもつ音楽表現としてメロディアスであり、音楽的な盛り上がりもしっかり感じ取ることができた。

次にミドルクラスのSignature Eliteを試聴

一聴してわかる豊富な情報量、ミドルクラス「Signature Elite」を試す

「ES20」57,200円(ペア・税込)

続いて同社ミドルクラスにあたる、Signature Eliteシリーズの2ウェイ・ブックシェルフスピーカー「ES20」を利用した。外形寸法は215.9W×375.9H×350.5Dmmと、MXT20と比べて一回り大きくなり、重量は7.71kg。価格は57,200円(税込)と、値ごろ感が強い。

2.5センチのテレリン・ドーム・トゥイーターと16.5センチのマイカ強化ポリプロピレンウーファーを搭載。フロント面に独立して搭載されたバッフルやブラウンの振動板が視覚的な高級感を演出する。カラーも3色(ブラウン/ブラック/ホワイト)が用意されているので、インテリアや好みに合わせてチョイスできるのも嬉しい。

背面には、歪みや乱流を大幅に抑える独自のバスレフポート「Power Port」が設置され、低域の表現力を上げている。音が出た瞬間に編集者と「お、いいね!」と盛り上がったモデルだ。一聴して情報量があり、音楽的に楽しいサウンド。少し大型になったキャビネットのおかげで低音域に余裕が出て、透明感も抜群に良い。

音楽的な一体感やグルーブの強さがあるミドルモデルだ

試聴した3つのソフトとその聴きどころ

テイラー・スウィフト 「ミッドナイツ」

【主要4部門/アルバム・オブ・ザ・イヤー】テイラー・スウィフト 「ミッドナイツ」

先だって5年ぶりとなる来日公演を成功させた、テイラー・スウィフトの 「ミッドナイツ」が主要4部門/アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。本アルバムからトラック4『アンチ・ヒーロー』を聴いたが、ES20で聴くと、本アルバムの受賞理由やミテイラースイフトがなぜ人気があるのかが改めてわかる気がした。

一聴して音数と粒立ちが良い透明感あるサウンドで、とにかくボーカルがリアルだ。声に実体感と透明感があるし、低域表現はより明瞭かつローレンジが伸びている。コーラスが加わった時の音数の増え方など、念入りに仕上げられたマスタリングの様子もよくわかる。

ボーイジーニアス/「ノット・ストロング・イナーフ」

【ロック部門/ロック演奏・歌唱賞】ボーイジーニアス/「ノット・ストロング・イナーフ」

続いて、ロック演奏・歌唱賞とロック楽曲賞を受賞した。アメリカのインディーズグループ、ボーイジーニアス「ノット・ストロング・イナーフ」は、イントロのギターリフの金属的な質感と音色を秀逸に表現する。

小レベルの分解能もより高くなり、ギターなどの細かな演奏のニュアンスやテクニックもより理解できるようになる。センター定位するボーカルを取り囲むギターの距離感も良く、グループの持つ音楽的なセンスの良さが理解できる。

サマラ・ジョイ「タイト」

【ジャズ部門/ジャズ演奏・歌唱賞】サマラ・ジョイ「タイト」

ジャズ演奏・歌唱賞を受賞したのは、ジャズの女性ボーカル、サマラ・ジョイ「タイト」。ベティ・カーターにより作詞/作曲された楽曲のカバー曲だが、ES20の少し明るく色彩感のあるES20の音色と、アップテンポな本楽曲の相性の良さを感じた。リズムを作るマイキー・ミリオーレのベースには立体感とリアリティがあり、右チャンネルから聴こえるドラマー・エヴァン・シャーマンのシンバルは金属的な表現が出ている。

ES20は、現代ポップスに加えてジャズとの相性も良さそうだ。ボーカルのピンポイント定位とバックミュージックの分離についてはMXT20を超えており、デビュー当時にサラ・ヴォーンの再来と言われた、圧倒的なボーカルを楽しんだ。ミドルクラスのモデルだが、音楽的な一体感やグルーブの強さでいうと、個人的にはES20がイチ押しだ。

最後は最上位のReserveを試聴

フロア型ならではの壮大さ、シリーズ最上位「Reserve」を試す

「R600」103,400円(1台・税込)

最後は、同社最上位クラスとなるReserveシリーズから、2ウェイ・3スピーカー構成のフロアスタンディング型モデル「R600」を使用する。外形寸法は281W1064H×382Dmm、質量21.5kgと、比較的大型のモデルで、価格は103,400円(1台・税込)となる。

3ウェイ構成ということで、1センチのピナクル・リングラジエーター・トゥイーター、6.5インチのタービンコーン振動板によるミッドレンジ/ウーファーを2基搭載する。これにより、低域の迫力とともに、負荷分散による分解能を高めている。キャビネットカラーはブラウンとブラックの2色。試聴したモデルはブラウンで、高級感に優れている。

視覚的なポイントとなるのが2発のウーファーで、タービンコーンと名がつくように、渦巻き状の振動板がアイコンとなっている。独自のフォームコアとタービン形状を組み合わせることで、振動板の質量を増加させずに、剛性と内部損失を飛躍的に高めた独自技術だ。そして、独自のバスレフポート技術「Power Port 2.0」は底面部に設置されている。オーバーオールの音質については、分解能、高音域から低音域にかけてのfレンジ、質感表現も高い。サウンドステージについてはボーカル表現に目を見張った。

フロア型だからこそ実現する、壮大さやグルーブ感の表現が魅力的

試聴した3つのソフトとその聴きどころ

ビリー・アイリッシュ/「ホワット・ワズ・アイ・メイド・フォー?」

【主要4部門/楽曲賞】ビリー・アイリッシュ/「ホワット・ワズ・アイ・メイド・フォー?」

2019年3に発売した「bad guy」が社会的にヒットしたビリー・アイリッシュ。同氏の新作「ホワット・ワズ・アイ・メイド・フォー?」が、主要4部門/楽曲賞を受賞した。R600で音が出た瞬間にゾクっとするほどの実体感のあるボーカル。驚いたのはピアノの音が生々しさと同時にしなやかな質感。これは表現力の高さがもたらしているのだろう。

余韻など小レベルの音表現もリアルで、ビリー・アイリッシュが求める音楽の作り方がよくわかる。R600で聴く本楽曲により、改めてビリー・アイリッシュの凄さがわかった。また大型のキャビネットと2発のウーファーにより、低音域の表現力が高まり、現代ポップスの魅力を包み隠さず表現する。楽曲後半はより広大なサウンドステージとなるが、それを司る空間の支配感がよく理解できた。これは素晴らしいサウンドだ。

カウント・ベイシー・オーケストラ「ベイシー・スウィング・ザ・ブルース」

【ジャズ部門/ジャズ楽団アルバム賞】カウント・ベイシー・オーケストラ「ベイシー・スウィング・ザ・ブルース」

カウント・ベイシー・オーケストラの「ベイシー・スウィング・ザ・ブルース」は、トラック1の「Let’s Have A Good Time」を試聴した。イントロのピアノのディテールが明瞭で、ビックバンドの音が前へ出てくる。楽器数の多さや、ミスター・シップのボーカルがセンター前方へしっかりと飛び出してくる。

このスピーカーで聴いていると、楽曲が持つ表現力の素晴らしさとともに、少し泥臭い感じが伝わってくるのが素晴らしい。壮大さやグルーブ感の表現は、大型のフロアスピーカーが持つアドバンテージ、そしてこのスピーカーは音楽的に楽しめる。最高だ。

ロサンジェルス・フィルハーモニック/グスターボ・ドゥダメル「トーマス・アデス:バレエ音楽『ダンテ』」

【クラシック部門/オーケストラ演奏賞】ロサンジェルス・フィルハーモニック/グスターボ・ドゥダメル「トーマス・アデス:バレエ音楽『ダンテ』」

オーケストラ演奏賞を受賞したのは、ロサンジェルス・フィルハーモニック「トーマス・アデス:バレエ音楽『ダンテ』」。実は本楽曲、オーディオファイルには、かなりおすすめしたい。その理由はオーケストラとしての楽器数の多さと、指揮者グスターボ・ドゥダメルの大胆かつ斬新な解釈による、かなりアグレッシブな抑揚表現だ。

R600も含めてReserveシリーズのスピーカーは、オーディオ的な再生尺度である、fレンジ、分解能、サウンドステージ表現を高めた圧倒的な描写力がある。現代的な描写力をもつハイファイな音作りだが、音楽的なノリが良く、これはPolk Audioに共通するアドバンテージでもある。そしてReserveは最上位シリーズではあるものの、それでも控えめな価格は大きな魅力である。

グラミー賞受賞曲と “音楽的相性” が良いPolk Audio

今回Polk Audioのスピーカーを選んだ理由は、手に入れやすい価格ではあるものの、分解能や音色、音楽的表現のバランスに優れているから。そして抜群に、低域成分が多い “現在の楽曲” と音楽的相性の良さがあると思ったからだ。

ぜひPolk Audioのスピーカーでグラミー賞を堪能してほしい

Polk Audioは、学生の仲間によって1972年に設立された。創業当時からコストを抑えて、多くの方に良い音を提供することを基本理念としながら、30年もの間スピーカーを作り続けてきた(詳細は過去のレポート記事を参照)。

今回はPolk Audioの3シリーズ全てを聴いた。最も安価なMonitor XTシリーズであっても受賞作の音楽的な魅力を感じ取れたし(これ、かなり重要なこと)、最上位のReserveシリーズは流石の表現力を持っていた。だからこそ、グラミー賞を受賞した作品の良さや受賞の理由が良くわかるし、音楽的にノリの良さもPolk Audioの大きな魅力である。

現在、定額制動画配信サービスを使えば、ほとんどのグラミー賞の受賞作やノミネート作品を聴くことができる。ぜひPolk Audioのスピーカーを組み合わせて、現代最高の楽曲達を楽しんでいただきたい。

(提供:ディーアンドエムホールディングス)

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