訪れる外国人観光客 “爆買い”だけではない新たな傾向 見えてきた今後のインバウンド戦略【鹿児島発】

円安傾向が続く外国為替相場。海外からの外国人観光客、いわゆるインバウンド需要は高まっているが、鹿児島県内への経済波及効果について調べてみると、一時の「爆買い」だけではない、新たな傾向が見えてきた。

止まらない円安…“当面は続く”と分析

4月10日のニューヨーク為替市場での円相場は、1ドル = 153円台と、約34年ぶりの円安水準となった。この歴史的な円安について、鹿児島のシンクタンク・九州経済研究所の福留一郎経済調査部長は、「当面はこの動きが続くと見ないといけない」と分析する。

理由は、アメリカの景気がある意味ずっと過熱気味で収まる気配がないことだとしていて、「少なくとも2024年の1年ぐらいは、この傾向が続く可能性があるのではと見た方がいい」と予測している。

円安は、海外からの輸入品の価格上昇につながり、日本国内では「物価高」として影響がある一方、日本を訪れる外国人観光客にとっては、よりお金を使いやすい状況が生まれていると言える。

外国人観光客は円安をどう考える?

鹿児島に寄港するクルーズ船の数は、コロナ禍以前の水準に回復している。2024年4月17日、鹿児島市に寄港したクルーズ船の乗客。

“円安”を知っているのか聞いてみたところ、「あなた(日本人)にとっては残念なこと。米ドルにとっては良いことだ」「以前は日本は物価が高いことで知られていたが、今はもっと安いようだ」との答えが返ってきた。

円が安いと買い物を楽しみたい気持ちになるようで、こんな会話も聞かれた。

クルーズ船の乗船客(奥さん):
靴、バッグ、ドレスを買いたい

クルーズ船の乗船客(旦那さん):
私には、何もありません(笑)

観光客の“人種”が多様化している?

外国人観光客の買い物需要は、鹿児島の市場にどんな影響を与えているのだろうか。
鹿児島市の繁華街・天文館にある「かごしま特産品市場」には、欧米の観光客が訪れていた。

最近の外国人観光客の傾向について、鹿児島県商工会連合会の鳥丸亮さんは、「コロナ禍前と比べてお客様の“人種”が多様化しているのは何となく感じる。いわゆるアジア圏以外の、ヨーロッパ、アメリカ圏の人が多く来店しているのでは」と話す。

九州経済研究所・福留調査部長の分析によると、鹿児島県内に入港するクルーズ船の数は従来に戻っているものの、10万トンを超える大型船の割合が減少しているという。

福留氏は「コロナ禍前は、大型船が中国から大挙して、いわゆる爆買いが鹿児島でもあった。でも国内景気の鎮静化で、中国からのクルーズ船が少なくなった」と説明する。その一方で「欧米から来ているのは、以前の大型のクルーズ船とは違って中型、小型、ラグジュアリーやプレミアムのクラス」だという。

中型、小型クルーズ船の客層は富裕層が多くを占める。彼らは生活用品を大量に買うのではなく、訪れた土地でその文化を楽しむ傾向があるようだ。

「客層に合わせての戦略を追求」

市場にいた外国人女性に「円安だからたくさん買い物をする?」と聞くと、「必ずしもそうではない」との答えが返ってきた。“文化やおいしいお店、提供されているものを楽しんでいる”のだという。外国人観光客の増加は、必ずしも、店舗や飲食店の売り上げに直結しているわけではないといえよう。

九州経済研究所・福留部長も「客層に合わせて戦略が異なるので、そこを追求していかないとコロナ前の常識は通用しない」と指摘する。

鹿児島県商工会連合会の鳥丸氏は、「消費行動の違いはあるかと思うが、せっかく鹿児島にきてくれたのだから、鹿児島のいい物を積極的に発信し、たくさん買ってもらえるよう努力していきたい」と今後の展望を語った。

外国からの観光客が何を求めているのか、しっかり見極めて戦略を立てていく必要がありそうだ。

(鹿児島テレビ)

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