【感染症ニュース】RSウイルス感染症全国定点1.0超え 医師「現状、流行に地域差も、いずれ全国へ波及」 3歳児肺炎・38℃の発熱・嘔吐…(経験談再掲)

流行地域とその周辺は注意

国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2024年第14週(4/1-7)によると、全国のRSウイルス感染症の定点あたり報告数は1.01。前週の0.8から、およそ26%増加しています。関西地方・北関東などで流行がみられ、関西地方の大阪府では、前週の2.63から、3.39と大きな伸びを見せています。周辺の奈良県では、前週の3.38から減少し、2.91となったものの、依然、高い水準です。また、関東地方でも、栃木県(1.25)・群馬県(1.02)・埼玉県(1.32)で定点報告数が1を超え、東京都(0.92)も定点1.0に迫る勢いとなっています。
RSウイルス感染症は、乳幼児…特に生後1か月未満の子どもが感染すると突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。現状について、感染症に詳しい医師に聞きました。

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感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「大阪府では、RSウイルス感染症の報告がさらに増加しています。翌第15週(4/8-14)には、定点で4を超える状況です。大阪府の流行については、ピークを迎えているようにも見えますし、まだ増える可能性もあり、今後の予測は困難です。見極めが必要な状況と言えます。一方で、全国的な流行は、これからと考えています。東京都も患者報告数が、徐々に増加しており、北関東での流行を受け、広がりを見せている印象もあります。RSウイルス感染症の流行の特徴として、流行地域から、ゆっくりと周辺に広がりをみせることが挙げられます。流行地域とその周辺では、注意が必要でしょう」としています。

RSウイルス感染症は、特に乳幼児が注意しなければならない感染症ですが、初感染のお子さんは、注意が必要な感染症です。2021年に寄せられた経験談をご紹介します。

肺炎を起こしたケース(3歳9ヶ月 北海道)2021年経験談

下痢から始まり37.5℃の熱。小児科受診しウイルス性と診断。38.0℃になり嘔吐。自宅に帰ると熱が36.8℃まで下がる。次の日、また次の日も36.8℃程度の軽い風邪症状。
3日目38.5℃の熱、嘔吐。小児科で貰っていた薬と座薬でゴールデンウィークをしのいだ。相変わらず熱は下がらず40.1℃まであがる。座薬が効かない。総合病院小児科で検査。RSウイルスと診断。肺炎をおこしている。点滴をしてもらい一時的に元気になる。
翌日また39.4℃。座薬投入36.8℃現在落ち着いている。咳はあるが食事も少し取れるようになった。長い熱…RS恐ろしい。家族も風邪ひき中。

RSウイルス感染症とは?

RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の人が1度は感染するとされています。症状としては、発熱や鼻汁などの軽い風邪のような症状から重い肺炎まで様々です。初回の感染時にはより重症化しやすいといわれており、特に生後6か月以内にRSウイルスに感染した場合は、細気管支炎、肺炎など重症化する場合があります。

乳幼児の感染には要注意!

RSは生涯にわたって感染を繰り返しますが、幼児期における再感染での発症はよくみられ、その多くは軽い症状です。また、成人では通常は感冒用症状のみです。初感染の乳幼児においても約7割は鼻汁などの上気道炎症状のみで数日のうちに警戒しますが、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などが出現します。重篤な合併症として注意すべきものには、無呼吸発作、急性脳症等があります。生後1か月未満の児がRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、また突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。
RSウイルスの感染経路は?
RSウイルスは主に接触感染と飛沫感染で感染が広がります。RSウイルスに感染している人との直接の接触や、感染者が触れたことによりウイルスがついた手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップなど)を触ったり、舐めたりすることで感染する接触感染。あるいはRSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、あるいは会話などをした際に口から飛び散る飛沫を浴びて吸い込むことによる飛沫感染で広がります。乳幼児に関しては、周りの大人やきょうだいから感染することが多く、風邪のような症状があるときには乳幼児になるべく近づかないなどの配慮が必要です。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2024年14週
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A(令和6年1月15日改訂)、

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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