さらに大きな構えでアンダルシアに挑戦する”Greater West Japan”

地図が教えてくれる可能性

広域観光を考える時、地図は、必須のアイテムとなっています。空港の配置、鉄道や高速道路網の広がり、山脈と海、そしてそれらに囲まれる都市域、それぞれの地理的条件の下で長い歴史を紡いでいる地域を旅行者はどのように巡るのか、想像を巡らせると行政単位はどんどんと霞んでいきます。

昨年10月、大阪でツーリズムEXPOジャパンが開催されました。国内外の出展ブースの中で、あるところで目が留まりました。「アンダルシア州政府観光局」。スペイン屈指の観光圏アンダルシアは、耳にこそすれまだ訪れたことのない私にとって、直ちに興味がわき、ブースのアテンダントの方としばし会話を楽しみました。

確かに魅力があふれている

改めて申し上げるまでもなく、アンダルシアは、ジブラルタル海峡を挟んでアフリカ大陸をにらみ、ヨーロッパ文化とイスラム文化が混ざり合い、あるいは融合し、気候も温暖で、観光の3大要素といわれる「自然・文化・食」に恵まれた州です。マラガからグラナダを1週間で巡る広域周遊ルートが有名で、年間2500万人が訪れる世界のメジャーな観光エリアです。その面積8.7万㎢。スペイン自治州の中で2番目に大きな州です。

さらに大きな構えで

関西は、国際拠点空港である関西国際空港を擁していることもあり、隣接の観光圏から連携のお誘いがコロナ前から少なからずありました。関西の広域観光の骨格作りが道半ばの中、どのように連携できるのか考えがまとまらなかったのですが、2025年には大阪・関西万博を控え、昨年5月、四国、瀬戸内及び山陰のDMOの皆様とマルチの連携協定を結びました。

まずは、商品化されている西日本エリアのレールパスやインバウンド向け高速道路割引などを活用して沿線各地の観光コンテンツを紹介していくことを基本に、モデルコースを創ることから始めることとし、西日本の17府県を”Greater West Japan”と名付けたわが国初の広域・広域連携がスタートしました。

その面積が、8.7万㎢! アンダルシアとほぼ同じ広がりなのです。観光コンテンツをやや手前勝手に比べてみても、その豊富さ、多彩さにおいては、決して引けを取らないと考えています。他方、2019年ベースでインバウンドの入込み数を推計すると1500万人。地図を見ながら” Greater West Japan” に大きなポテンシャルを感じています。

一層大きな構えを

その”Greater West Japan”は、今年3月、共通のウェブサイトをオープンしました。これから、モデルコースをどんどん掲載し、誘客活動に取り組んでいかなければなりません。

【Greater West Japanホームページ】

関西国際空港をゲートウェイとしてエリア内の海外路線を持つ空港と連携して出入り口を整え、山陽新幹線・中国自動車道を動脈として、そして瀬戸内海を共通の内海として、関西を超えたさらに大きな構えで活動をしてまいります。「パイを大きくして、皆がその効果を分かち合う」ことが活動の目標です。

ここまでは勢いで進められましたが、これからは旅行商品の造成や、海外での共同プロモーションの具体化など、地道な取り組みを重ねていく必要があります。コロナ禍明けのインバウンドの勢いに、焦り半分、期待半分です。

さらに、北陸新幹線の敦賀開業が実現した今日、北陸の復興支援も念頭に置いた北陸・中部エリアとの連携も視野に入れなければなりません。 「一層大きな構えを創るべし」。地図が耳元でそう囁くこのごろです。

寄稿者 東井 芳隆(とうい・よしたか)(一財)関西観光本部 / 代表理事・専務理事

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