横浜ゴム、オフロードタイプの新スタンダードオールテレーンタイヤ「ジオランダー A/T4」発表会 スノーフレークマークを全サイズで獲得

by 編集部:小林 隆

2024年5月から順次発売

オープンプライス

アサマレースウェイ(群馬県)でスタンダードオールテレーンタイヤの新商品「ジオランダー A/T4」の発表試乗会を開催

横浜ゴムは、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR(ジオランダー)」の新商品として、スタンダードオールテレーンタイヤ「GEOLANDAR A/T4(ジオランダー・エイティフォー)」を5月より全世界で発売する。日本で展開するサイズは5月に発売する19サイズを皮切りに、7月までにLTサイズを含めて計31サイズまで拡大する。それ以降も順次サイズを拡大していくとのこと。

4月18日には今回のジオランダー A/T4の発表試乗会をアサマレースウェイ(群馬県)で開催。本稿では発表会の模様をレポートする。

今回のジオランダー A/T4は従来のスタンダードオールテレーンタイヤ「GEOLANDAR A/T G015」の後継モデルで、1996年に誕生した「GEOLANDAR A/T」の第4世代商品。オールテレーンタイヤに求められるオンロード性能とオフロード性能を、従来モデルよりも高次元で両立しながら、よりオフロードイメージの強いデザインを実現した。

アグレッシブなトレッドパターンとサイドウォールのブロックデザインでオフロード感を高めるとともに、オフロード性能や耐カット・チッピング性能を向上。同時にオンロードでの優れたウェット性能や快適性も実現したほか、タイヤの接地形状を見直すことでオフロード性能およびオンロードでの耐摩耗性能を高めたという。

また、雪上性能も向上しており、冬用タイヤとして認められた証「スノーフレークマーク」を全サイズで獲得し、冬用タイヤ規制時でも走行可能(全車チェーン規制の場合はいかなるタイヤもチェーン装着が必要)なタイヤとして認められている。

アグレッシブなトレッドパターンとサイドウォールのブロックデザインが特徴のジオランダー A/T4。日本での発売サイズ数は7月までにLTサイズを含めて計31サイズまで拡大
標準仕様(写真右)に加え、アウトラインホワイトレター仕様(写真中)を15サイズ、ホワイトレター仕様(写真左、185/85R16 105/103N LT)を1サイズ用意する

スタンダードオールテレーンの中でもオフロードタイプに属するジオランダー A/T4

横浜ゴム株式会社 執行役員 タイヤ製品開発本部長 兼 タイヤ第一設計部長の松田将一郎氏

発表会には横浜ゴム 執行役員 タイヤ製品開発本部長 兼 タイヤ第一設計部長の松田将一郎氏、タイヤ消費財製品企画本部 タイヤ消費財製品企画部 製品企画第3グループ グループリーダーの小島弘行氏、タイヤ製品開発本部 タイヤ第一設計部 設計3グループの坂本洋祐氏が参加した。

横浜ゴムは2024年度~2026年度までの新中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」を2月に発表。「YX2026」では従来の「YX2023」から推進してきた既存事業における強みの「深化」と新しい価値の「探索」をさらに推し進め、次世代に負の財産を残さないという強い意志を持って変革の総仕上げを行なうという。

こうした考えの下、YX2026中または2027年度に「Hockey Stick Growth」(「うなぎ昇り」の成長)を果たすことを目指すとしており、現在見込んでいる2026年度の経営目標は、売上収益1兆1500億円、事業利益1300億円、事業利益率11%、ROE(自己資本利益率)10%超を掲げている。

初めに登壇した松田氏はYX2026について触れ、消費財事業としてはグローバルフラグシップタイヤブランド「ADVAN(アドバン)」、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR(ジオランダー)」およびウインタータイヤに力を入れていくと述べるとともに、今回の発表試乗会が開かれた浅間の地は横浜ゴムのモータースポーツ活動がスタートした場所であることなどが紹介された。

横浜ゴム株式会社 タイヤ消費財製品企画本部 タイヤ消費財製品企画部 製品企画第3グループ グループリーダーの小島弘行氏

次に登壇した小島氏からはジオランダー A/T4のコンセプトや開発に至った背景などについて語られた。小島氏によると、日本国内におけるSUV・ピックアップ車両の販売台数はここ10年間で右肩上がりに伸びており、特に近年はアウトドアブームもありオフロードカスタムの需要も増えているという。

その右肩上がりの市場に投入するのがジオランダー A/Tの第4世代となるジオランダー A/T4となり、歴史を振り返るとジオランダー A/Tは1996年のジオランダーブランド誕生に合わせて発売された。その後、2001年に登場したマイナーチェンジ版の「ジオランダー A/T+II」までが第1世代となり、2006年登場の「ジオランダー A/T-S」が第2世代、2016年登場の「ジオランダー A/T G015」が第3世代となる。ちなみに2019年に「ジオランダー X-A/T」がデビューしているが、このタイヤは同じATタイヤではあるもののカテゴライズが若干異なるため今回のジオランダー A/T4が第4世代に位置付けされている。

また、ジオランダー A/T4の先代モデルとなるジオランダー A/T G015はスバルのウィルダネスシリーズ、日産のピックアップトラック「ナバラ」などに純正装着されるとともに、2019年にオーストラリアで行なわれたオフロードレース「FINKE2019」で出走したハイラックス、2023年のXCRスプリントカップ北海道に出場したライズがジオランダー A/T G015で優勝するなど、小島氏からはその実力の高さが報告された。

SUV・ピックアップ車両の販売台数推移
ジオランダー A/Tの歴史
ジオランダー A/T G015はスバルのウィルダネスシリーズ、日産のピックアップトラック「ナバラ」などに純正装着される

一方でA/Tタイヤのカテゴリーについても説明が行なわれ、小島氏は「A/Tタイヤというのは全世界で競争が非常に激しくなってきておりまして、大きく3つのカテゴリーに分かれています。X-ATがカテゴライズされるのが『アグレッシブオールテレーン』というところで、よりアグレッシブな外観とカスタムサイズを多く保有したカスタム用A/Tタイヤという位置付けになります。次が1番重要な『スタンダードオールテレーン』というところで、ここにジオランダー A/T G015と今回のジオランダー A/T4がカテゴライズされていますが、この中でも近年細分化が進みまして、オンロードタイプのオールテレーン(快適性を重視しつつオフロードに配慮)とオフロードタイプのオールテレーン(オンロード性能を考慮しながらオフロード性を重視)の2つに分類されるようになってきました。ジオランダー A/T G015がオンロードタイプのオールテレーンに分類されておりまして、今回の新商品ジオランダー A/T4はオフロードタイプのもので分類されます」と解説を行なっている。

A/Tタイヤのカテゴリーについて

また、日本におけるA/Tタイヤのニーズについても語られ、「A/T装着ユーザーの車両使用シーンおよびタイヤに求める性能についてインターネットで独自調査を行なったところ、重視する性能というのはA/Tだから特別な性能を求めるということはなくて、ウェット、乗り心地、ドライ性能、ハンドリングといった一般的な性能を求められるのが日本の市場での特徴」と説明するとともに、「A/Tを装着した車両の使用シーンというところですが、レジャーや買い物といった一般的な用途がほとんどで、本格的にオフロードを走行するというユーザーは今回の調査ではほとんど検出されませんでした。一方で悪路走破性がよいなどの実用性よりもデザイン・スタイルが好きといった嗜好性でSUV・ビッグアップを購入されるのがほとんどだと理解しておりまして、タイヤの選択基準も性能ではなく見た目というものが非常に重視されると見ております」と報告。そのため今回のジオランダー A/T4は、ジオランダー A/T G015の性能を損なわずにアグレッシブな見た目を実現するところを重視して開発したという。

日本におけるA/Tタイヤのニーズ

商品コンセプトはアグレッシブなルックスとオフロードタイヤらしいトレッドパターンとサイドブロックを実現すること、スノーフレークマークを獲得してスノータイヤ規制でも走行できること、耐摩耗性・耐久性にも配慮したタイヤであること。

商品特徴としては、オンロード性能と耐カット&チッピング性能を強化。オンロード性能は好評なジオランダー A/T G015の性能を維持しながらX-ATで採用したデュアルサイドウォールを採用し、アグレッシブなサイトデザインを実現した。ターゲット車両についてはSUV、ピックトラック、クロスオーバーSUVとなる。また、商品ポジショニングはジオランダー A/T G015の後継商品になるため若干オフロード寄りの味付けにはなるものの、ジオランダーシリーズのど真ん中の商品になるという。

なお、サイズについては今回はLTサイズ(計31サイズ)をまずは先行で発売する予定となっており、うちアウトラインホワイトレターが15サイズ、ホワイトレターが1サイズを予定している。

ジオランダー A/T4の商品ビジュアル
商品コンセプト
ポジショニングマップ
サイズ一覧

続いて登壇した坂本氏はジオランダー A/T4に搭載される技術について説明した。

ジオランダー A/T4の商品コンセプトは、既存商品であるジオランダー A/T G015のオンロードオールテレーンからオフロードオールテレーンへ移行となったため、それに伴い求められる商品特徴としてはアグレッシブなルックスを備えつつスノートラクション、オフロード、耐カット&チッピングの性能向上になるという。

横浜ゴム株式会社 タイヤ製品開発本部 タイヤ第一設計部 設計3グループの坂本洋祐氏

それを達成するために投入した技術としては、まず新開発のトレッドパターンで、既存商品のジオランダー A/T G015ではストレート溝基調のややおとなしめのデザインだったが、今回はブロック基調のダイナミックなデザインとした。さらに新開発のデュアルサイドウォールを用い、タイヤのショルダーからサイドウォール部にかけて大型なデザインとしている点が特徴の1つに挙げられた。また、タイヤのプロファイルはスクエア化を実施し、内部構造は補強構造、コンパウンドについては同社で実績のあるA/Tのものを採用した。

トレッドパターンでは「2in1センターブロック」「シングルピッチショルダーブロック」「3Dディープサイプ」「ジグザグ4本主溝」「ディープ&ワイドショルダー溝」「切り欠き溝」を特徴として挙げ、これらによってよりオフロードらしいルックスとオールテレーンタイヤに必要な性能を追求。アグレッシブなトレッドパターンがオフロード性能や耐カット・チッピング性能、快適性、ウェット性能、浅雪性能などをハイレベルな領域で実現したという。

ジオランダー A/T4の搭載技術
トレッドパターンについて

また、デュアルサイドウォールについては「セリアルサイドはタイヤ周方向に延びる水平線で構成した2in1デザイン、反セリアルサイドについてはショルダーからサイドブロックにかけて一体となる2in1デザインとしています。2in1デザインとすることで、既存商品のジオランダー A/T G015ですと、例えばワンピッチの小さいサイドウォールデザインだったものから2倍の大きさになっていますので、より強度が高まる。そこから耐カット性、耐久性の向上につながっております。また、このサイドウォールですが凹凸のあるデザインとしていますので、例えばオフロード走行に積極的に使っていただくことも可能です。さらにセリアルサイド、反セリアルサイドのどちらを車両の外側につけても性能の違いは出ませんので、ユーザーご自身のクルマにかっこいいなと思う、お好みでつけていただけるようになっております」とアピールした。

デュアルサイドウォールについて

加えてプロファイル、構造、コンパウンドについては「タイヤのプロファイルはショルダー部の形状を改良しており、既存商品のジオランダー A/T G015に対し、今回の新商品ジオランダー A/T4はショルダーの角張り具合をよりスクエアな形状にしております。ここの調整はタイヤの接地特性に非常に感度のある場所でして、ジオランダー A/T4の接地形状は設置端が特に伸びており、接地領域が拡大しております。この接地領域の拡大はタイヤのいろいろな性能によく働きまして、今回は特にトラクションや耐摩耗性の向上につながっております。また、内部構造についてはナイロンフルカバーと2plyポリエステルを採用した補強構造としつつ、全サイズにリムプロテクターを採用して対高荷重や耐サイドカット性の向上につなげております。さらにコンパウンドについては実績のあるA/T系のものを採用し、耐摩耗性、耐カットチッピング性を向上させつつ、低発熱性にも寄与しております」と説明している。

プロファイル、構造、コンパウンドについて
性能チャート

坂本氏は最後に「今回のジオランダー A/T4ですが、タイヤの外観がアグレッシブになっていることもあるのですが、性能的にもよりオールテレーンタイヤらしさを上げた魅力的な商品となっております」と述べ、プレゼンテーションを締めくくった。

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