土日チーム優先で「家族に迷惑かけた」 コーチ不足阻止へ…私生活を確保する“担当制”

大阪・和泉市の南大阪ベースボールクラブ。左は池西亮太監督【写真:チーム提供】

南大阪ベースボールクラブ・池西亮太監督は自身の経験から曜日担当制導入

指導者がそろっていなければ、チーム運営や選手育成は難しい。出身選手が全国の甲子園常連校に進学している大阪・和泉市の中学硬式野球チーム「南大阪ベースボールクラブ」では、コーチ陣の担当する曜日が決まっている。本人が希望しない限り、土曜も日曜も指導することはないため、プライベートな時間も確保できている。

「もちろん、野球の指導が大好きで続けています。ただ、今も出掛けるのは雨の日だけ。家族には迷惑をかけています」

2011年にクラブを立ち上げた池西亮太監督は、申し訳なさそうに話す。選手の成長をサポートするのは充実感がある。だが、限りある時間を野球の指導に使えば、家族と過ごす時間は当然ながら少なくなる。土日は毎週、自分の子どもではなくチームの選手と過ごしてきた。

「保護者の方々から大切な子どもたちを預かっているので、チームを最優先にしてきました。コーチ陣にはプライベートな時間を確保して気持ちをリフレッシュしてもらうことで、指導にも良い影響が出ると考えています」

南大阪ベースボールクラブには現在、8人の指導者がいる。中には、家族を持っている人もいる。池西監督は野球の指導と家族の時間を両立する方法を考え、曜日担当制を導入している。

チームの活動は平日2回と土日の週4回。「平日」「土曜日」「日曜日」と指導の曜日を振り分け、土日のうち少なくとも1日は、チーム以外の時間を取る仕組みとなっている。家族の予定や仕事が入れば、他の指導者と相談して担当する曜日を入れ替えられる。

曜日担当制で重要になるのは、指導者間の情報共有と連携。船頭が複数になり、指導者によって選手に伝える内容が変わると混乱が生まれるため、チームには投手と打撃にそれぞれチーフコーチを置いている。指導する曜日がチーフと重ならないコーチが、選手に技術的なアドバイスする時は、必ず事前にチーフに連絡して承諾を得るという。

池西監督は「野球への取り組み方や心掛けのような部分は構いませんが、テーマにしていた練習内容やフォームを変えるといった核になるところは、1人の指導者だけで決めるとトラブルの原因になりかねません」と語る。

8人の指導者がコーチングを担当。情報共有を密にしている【写真:チーム提供】

指導者の年代で役割分担…20代は“兄”、40代は“父親”

指導者の年代によっても役割が変わる。選手と年齢が近い20代の指導者は“兄”のような距離感で、選手たちとグループLINEで連絡をとる。一方、池西監督ら40代の指導者は“父親”の代わりを務める。選手と一定の距離を保ち、怠慢プレーやチームの士気を下げる態度は厳しく指摘する。30代の指導者は、20代と40代の間に入ってバランスをとっている。池西監督が意図を説明する。

「全ての指導者と選手の距離が近すぎると、チームに締まりがなくなります。大切な子どもたちを預かっているので、保護者が家庭において叱るようなことは、チームとしても叱っています」

保護者が指導者をする「パパコーチ」は、チーム創設から一度も取り入れていない。南大阪ベースボールクラブでは選手の自立と対応力を掲げているため、保護者にはグラウンドに来ることを控えてもらうよう伝えている。

ただし、自宅に戻って親子で上達する方法を研究し、新しい打ち方や投げ方をチームの練習で試すことは禁じていない。池西監督は「指導者が選手にアドバイスはしますが、その通りにするかどうかは選手次第です。YouTubeなどで見たフォームで結果が出るなら、その方が選手は野球が楽しいはずですから。一方。野球経験が豊富なお父さんほど、何も言わずチームの指導者に任せてくれる傾向があると感じるので、責任も大きいと思っています」と話す。

小・中学生の野球チームで指導者不足に悩むチームは少なくない。土日のどちらかは家族と過ごす時間を確保できる曜日担当制は、課題解決のヒントになる。(間淳 / Jun Aida)

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