ありそうでなかったアメリカ発のシニア向けサービス--世界の一次情報からDXの光を照らす「World DX Journal vol.06」

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2018年に創業し、アメリカ各地に拠点を広げているシニア向けのサービスがあります。ニーズを上手にとらえて、テクノロジーがニーズのマッチングを可能にしました。2024年3月の時点で10拠点。このサービスが生まれた背景と、テクノロジーの活用をご紹介します。

「ご近所さん」がコンセプト

田舎での暮らしは、都会と比べて近所付き合いが濃いといえるかもしれません。

収穫したての野菜をくれる。出かけるから、留守番をご近所さんにお願いする。子どもの面倒を交互にみる。お隣さんのおじいちゃんが具合が悪くなったら病院に連れていく、など、日常生活のいろんな場面で、助け・助けられで成り立っているような間柄、そんな一面が田舎の生活に残っている地域もあるかと思います。

筆者もそれに近いような環境で子供時代を過ごしました。家を離れて、たまに田舎に帰ると、ご近所さんに声をかけられて嬉しかった記憶があります。

時代の変化とともに、そうした光景も少なくなってきました。特にシニアの方々は、年齢とともにできることに制限がでてきたりします。

スーパーの買い物、家での洗濯、病院への通院など…。

「助けが欲しい」。でも、自分は仕事で離れられない。かといって、頼めるご近所さんもいない…。そんな経験から、Naborforceのシニア向けサービスは始まりました。

創業のヒントは「自分の困りごと X Uberで働く友人」

Naborforce創業者のペイジは、母親が職場に何かと電話してきて、困っていました。
母親を助けたい。でも、いまは仕事で手が離せない。仕事が終わったら、買い物をして持っていくからね、そんなやりとりを繰り返したといいます。投資銀行で働いていたペイジは、代わりに手を貸してくれるサービスがないか探しましたが、見つかりませんでした。そんなあるとき、弁護士の友人がUberで働いるのを知って、理由を訊ねました。もう9時-5時の仕事には戻らない、私はこうやって時間に自由に生活して、それなりの収入があればいい…

友人の話を聞いて、ペイジはひらめきました。

自分の母親の手助けをしてくれるサービスがない。一方で、時間の自由と収入が欲しい人たちがいる。これらを結び付けたらビジネスになるのではないか?そう思いついたペイジはNaborforceを始めました。

テクノロジーがつないだニーズとニーズ

冒頭にお伝えしたように、Naborforceのサービス拠点はどんどん広がっています。それを可能にしているのが、ニーズとニーズをマッチングするアプリのテクノロジーです。

仕組みはこうです。

ユーザー:
助けが欲しい内容と時間を記入してリクエストを出す。

事前に申請した「お手伝いスタッフ」の空き時間をシステムが自動的に選んで予約をする。

お手伝いスタッフ(Nabor)が現地到着時にアプリで「到着」をクリック。
完了時に「完了」をクリック。

勤務時間が登録されてお手伝いスタッフに支払いがされる。

既存のものの掛け合わせ+ニッチなサービス

(写真提供:原田朋)

6年ほどで10拠点に広がっている現状を見ると、潜在的なニーズは大きかったのではと感じます。サービスとしては、シニア向けにUberとダスキンやヘルパーさんをかけあわせたようなイメージが近いかもしれません。

そして、非医療、非介護と明確に線引きをしています。医療行為、介護行為は免許がいるので提供できないし、しません。シニアの多くは、簡単なお手伝いが必要で困っている、だから、そこの部分にフォーカスしてサービスを提供する。

一方でサービスの担い手は、隙間時間を活用したい自由度の高い「ナイスな」人々。バックグラウンドチェックと面接を行い、スクリーニングをされたみなさんが働いています。シニアのみなさんも安心して利用できる。シニアの方々と、隙間時間を活用したい人々のニーズをテクノロジーが見事につないだサービス、今後の成長が楽しみです。

NaborforceのHP

ありそうでなかったアメリカ発のシニア向けサービス編のまとめ

今回はシニア向けのニーズをテクノロジーでつなぐサービスをご紹介しました。2018年の創業以来、アメリカ各地に広がっています。満たされていなかったニーズをテクノロジーがつなぐことで、利用者の満足度を高めつつ、サービスの拡大が拡大しています。
機会があれば、アメリカで活用してみてください。

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