ペットの花粉症は「治す」でなく「うまく付き合う」症状が改善されるケースも【ワンニャンのSOS】

もうかゆくないから、眠れるワン

【ワンニャンのSOS】#58

アレルギー症状についての治療はヒトも大変ですが、ペットも同じでこじれるケースが珍しくありません。

私のところにも、花粉症による皮膚炎を悪化させたワンちゃんがよく飼い主さんに連れられてきます。そんな飼い主さんは多くがこう思われるでしょう。

「アレルギーは、治らない」

この考え方は正しくありません。ペットもヒトも、減感作療法といって長期にわたって免疫反応を適正化する治療を行って成功すれば、根治することができますし、抗アレルギー薬やステロイド剤を適切に使用すれば日常生活に支障なく上手に付き合うこともできます。状況の悪化は、薬の使い方などがうまくできていない可能性があり、飼い主さんは考えを改めることが大切です。

では、アレルギーとうまく付き合う治療は、どんなものか。ひとつは前回紹介したステロイド剤や抗アレルギー薬の頓服です。

アレルギーの関与が疑われる症状が現れたときに、1回だけ使ってもらいます。ステロイド剤の場合、前回紹介した通り、規定量の半量、4分の1量にするのがポイントです。

もうひとつは、軽い皮膚炎が掻き壊しや舐め壊しに悪化したケース。これは2次的な感染を起こしていることが多く、感染源の見極めがとにかく重要です。まず細菌による日和見感染なら、効く抗生物質をしっかり調べ、さらに耐性菌を生まないように14日までの使用とします。真菌なら、ガサガサした皮膚の状況や特有の臭いから比較的分かりやすく、抗真菌薬を2~4週間使用するのがコツです。

もうひとつ、アレルギー性皮膚炎の場合は、アレルゲンが何か特定することが大切ですが、ワンちゃんで強く反応しやすいのがハウスダスト(ヒョウダニ)です。徹底した掃除でゼロにできればよいのですが、それはほぼ不可能。ヒゼンダニの駆除にも効果があるフィラリアの薬を使用しています。アトピーで困ったワンちゃんにこの薬を使用したところ、大幅な改善が見られたことが数多くあるのです。

■患部の洗浄で皮膚の改善をサポート

当院では、アレルギー性やアトピー性の皮膚炎で治療するとき、患部をキレイに洗浄します。湯船にお湯を張り、マイクロバブルを発生する装置で体を15~20分洗浄。角質や毛穴に入り込んだ雑菌やアレルゲン物質を洗い流すのです。これを毎週1回ずつ1~2カ月皮膚の改善をサポートしつつ、患部の状態の維持管理ができます。

これまでの診察経験から、花粉症で皮膚炎がこじれるのは抗アレルギー薬の連用が多い印象です。その背景にあるのが、「何とか治そう」という考え方。大切なワンちゃんを思うなら、「よい状態でアレルギーとうまく付き合う」という考え方に改めてみませんか。それで症状がよくなることがあるのですから。

(カーター動物病院・片岡重明院長)

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