【保護司の不足】持続可能な制度に(4月19日)

 犯罪や非行からの立ち直りを支援する保護司のなり手不足が深刻だ。企業が定年を延長したり、地域の結び付きが薄れたりしていることなどが背景にある。法務省の有識者検討会は人材確保に向けた中間報告を先月まとめた。法務省は、年内の最終報告を経て来年の保護司法改正を目指している。議論を尽くし、社会の変化に対応した持続可能な制度に改善する必要がある。

 全国の保護司は昨年1月現在、総定数5万2500人に対して約4万6000人にとどまる。福島保護観察所によると、県内の保護司は今年3月末現在939人で、定数1010人を満たしていない。

 保護司は法相が委嘱する非常勤の国家公務員で、刑務所の仮出所者や保護観察中の少年と定期的に会い、生活上の助言や就労援助などに当たる。日本発祥の更生保護制度として国際的な評価は高い。しかし、平均年齢は全国65.6歳、県内66.3歳で、近年は高齢化が進み、制度の維持が困難と指摘されていた。

 現行法は新任保護司を66歳以下と規定している。企業などでの定年延長を踏まえ、中間報告は66歳以下の条件では人材を取り込めないとして制限の撤廃を盛り込んだ。現在は各地区保護司会の推薦が必要だが、今年度中に試験的に公募し、幅広い層の受け入れを目指すとも明記した。

 保護司に給与は支払われず、報酬の在り方を巡っては有識者間で意見が分かれている。報酬制への切り替えは人材確保に有効との声がある一方で、「無報酬だからこそ、支援対象者やその家族が心を許してくれる」との慎重意見も根強い。交通費など活動に伴う実費は支払われる半面、所属する保護司会の会費負担も求められる。無給なのに「持ち出し」が生じる形となる。慈善活動とはいえ、経費支給の拡充など待遇面の見直しは検討すべきだろう。

 双葉郡内で昨年、女性保護司が17年ぶりに誕生した。東京電力福島第1原発事故で避難生活を経験し、「誰かの力になりたい」と引き受けたという。保護司は再起を期す人たちの心の支えになり、「社会の見守り」という大切な役割も担う。社会的な信望、生活の安定などの要件は前提としつつ、志と熱意のある人が広く関われる制度になるよう期待したい。(浦山文夫)

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