福島県いわき市に大規模製材工場 住友林業など共同出資会社 県産原木利用 林業振興後押し 2026年稼働目指す

 木材製造・住宅建築大手の住友林業(東京都)など3社の共同出資会社は、製材や木材加工品製造の大規模工場を福島県いわき市のいわき四倉中核工業団地に新設する。住宅用の製材は県産原木を中心に扱う計画で、地元を中心に30~40人を新規雇用する。7月に着工し2026(令和8)年3月の稼働を目指す。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被害を受けた本県林業の活性化や地域の雇用創出に寄与する。住友林業が18日、発表した。

 新工場の建設予定地は【地図】の通り。事業主体の共同出資会社は「木環(こわ)の杜(もり)」で、住友林業と恒栄資材(東京都)、和田木材(いわき市)の3社が昨年11月に設立した。それぞれが販売、工場管理、製造などを分担して担う。

 工場の敷地面積は10.4ヘクタール。主にスギを原料とし、高断熱などの長所がある2×4(ツーバイフォー)住宅で使う製材を生産する。操業当初の原木使用量は年間11万立方メートルを目指す。関係者によると、一般住宅の千軒分以上に当たる量だという。段階的に引き上げ、最終的には県内有数規模となる年間20万立方メートルにしたい考えだ。林野庁が今月公表した今年の「森林・林業・木材産業の現状と課題」によると、国産原木消費量が10万立方メートルを超える製材工場(2022年)は全国で14カ所となっている。

 扱う原木は県内産に加え状況に応じて近隣県からも調達する。市内常磐下船尾町にある恒栄資材の湯本工場も「木環の杜」の製造拠点として使う。既存の製品に加え、国産材を利用した集成材の製造などを計画している。

 住友林業によると、県内は森林資源が豊富で木材の消費地である首都圏への交通の便も良い。輸出の玄関口となる小名浜港もある。海外需要の拡大で木材価格が急騰した「ウッドショック」が再び起きる事態に備え国産材を安定供給する体制を確保する狙いもあり、いわき市進出を決めた。

 震災と原発事故の発生後、県内の木材生産量や森林整備面積などは浜通りを中心に一時的に落ち込んだが、年々回復傾向にある。「木環の杜」は工場の整備や販売先の確保を通して今後も生産量の増加が見込まれる本県の林業振興を後押しする。住友林業の担当者は「新工場で製造を続けることで、地元の伐採業者は計画的な伐採や雇用が可能になる。当社としても地域活性化と福島県産木材の利用促進に貢献したい」と話している。

 いわき市の内田広之市長は「市の面積の7割を占める森林資源を活用してもらい、雇用の創出や地域経済活性化につながると期待している」と歓迎した。

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