入社2年目「男性バスガイド」のやりがい… 求人で “男女差別”は禁止だが、例外職種も

すっかり仕事も板につき、顧客とのコミュニケーションもよどみない武藤さん(はとバス提供)

「奈良交通」で81年ぶりに男性バスガイドが誕生し、話題となった。さかのぼること5年、東京の名所を巡るツアーで有名な「はとバス」では、2019年に男性ガイド2人が採用されている。こちらは同社創業70年の歴史の中で初だった。

当時採用されたはとバスの男性バスガイドはいま、どうしているのか。同社に聞くと「一人は昨年卒業し、もう一人は、いまもガイドとして活躍している」そうだ。同社にはその後、昨年、そして今年も新たに男性ガイドが各1人入社。開拓者の男性ガイドに続くように、同社での男性バスガイドの活躍フィールドは広がっている。

入社2年目の男性バスガイドのやりがい

昨年、はとバスに男性バスガイドとして採用された入社2年目の武藤柊人(むとう しゅうと)さんに話を聞くことができた。

「人と話すことが好きで伝える仕事がしたくてこの仕事を選びました。女性が多く、最初は不安もありましたが、先輩方がやさしく接してくれるので安心して業務ができています。性別のことは特になにも気にしていません」

すでに違和感なく業務に取り組む武藤さんは「自分のご案内でお客さまが笑顔になったときや感謝のお声をいただいたときにやりがいを感じます」と初々しく語った。

バスガイドから運転士に転身した女性も

同社にはバスガイドからバス運転士に転身した女性も存在する。「もともとは運転士志望だったのですが、大型二種免許が取得できる満21歳までバスガイドとして働いた後、ドライバーに転身しました」(同社広報部)という。

2つのバス会社とも、これまでに男性ガイドへの応募自体はあったという。しかし、選考の末、採用に至らず、結果的に長い空白ができていた。

乗り物のガイド的役割でバスガイドとの類似性も多い客室乗務員。同職も女性の印象が強いが、日本航空は1953年の第一期生から10人の男性客室乗務員を採用している。同社は今年4月、創業以来初めて女性社長が誕生するなど、保守的なイメージがあるだけに、当時の先進的な人材活用は意外な印象だ。

2007年の改正男女雇用機会均等法で求人での男女差別は禁止に

もっとも、いまの日本は2007年4月に改正された男女雇用機会均等法により、そもそも求人における男女差別が禁止されている。それまでは、女性に対する差別的な取り扱いのみが禁止されていたが、この改正により晴れて、職業における”男女平等”の土台が整備されることになった。

これにより、女性がより積極的にいわゆる男性的な職業に就くことが環境面からも推進され、女性の職業選択の幅は広がった。一方で、女性比率の高い職種には、男性の参入が進まない状況もみられる。

意外に高い、男性→女性中心の職種の壁

こうした状況に着目し、2007年にリクルートワークス研究所の徳永英子氏が、調査リポートをだしている。そこでは、女性が中心となっている7つのサービス職種から、現状と課題が報告されている。

7つのサービスは、客室乗務員、看護師、旅館の仲居、保育士、幼稚園教員、ベビーシッター、エステティシャン。いずれも女性のイメージが強い職種だ。

徳永氏は女性中心の職種に男性がつきやすくするポイントとして、「伝統的な女性の職業と言われる職種・業種であっても男性がつくことができる。むしろ女性だけの環境に男性の視点を望む声が顧客からも寄せられており、企業側も認識している。留意点はあるが、顧客の要望をくんだサービスを考慮したサービス体系を整えれば、(男性が就くことも)難しいことではない」とリポートに記している。

女性中心の職種はそもそも女性が多く、男性志望者が少ないことに加え、サービスを受ける側もそうした職種に女性を望む傾向が高いことなども男性が女性の多い職に就く障壁になっている、とも徳永氏は考察している。

当時から17年が経ったいま、7つの職種においてそこまで男性が珍しくなくなっている状況は、社会の変化や企業努力も推進力となり、職業における日本の男女平等が着実に前進した証しといえるだろう。

性別を超えた就業が難しい例外職種も

とはいえ、どうしても性別を超えての就業が難しい職業も存在する。守衛、警備員等のうち、防犯上、男性に従事させる必要がある職務や宗教上、風紀上あるいは協議の性質上等の理由で男女いずれかの身に従事させる必要のある職務などだ。

巫女や助産師は、例外職種の代表例だ。助産師は2001年に保健師助産師看護師法が改正され、「助産婦」から改称されたが、「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう」(第一章第三条)と記されている。

「初の男性○○」「初の女性○○」。職業関連のトピックでこうしたことが取り上げられる職種はまだまだありそうだが、それらが珍しくなくなればなるほど、社会の底力が発揮されていく――。実質的に”壁”はなくなっていることを考慮すれば、こうしたアクションはより活発化してほしいところだ。

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