虎の勝利、キャディの誕生日も祝福する好発進 メジャーで「ハマった」勝みなみが取り組む“ショット術”

勝みなみはタッグを組むタナカキャディを祝福する好発進(撮影:南しずか)

<シェブロン選手権 初日◇18日◇ザ・クラブ at カールトン・ウッズ(テキサス州)◇6889ヤード・パー72>

最終9番で右の池に落としたティショットは悔やまれる。ただ、4アンダーという成績は「自信につながる」と誇らしい。勝みなみが海外メジャー今季初戦を2位タイで滑り出した。

序盤から安定感あるプレーが続いた。10番からスタートすると、12、13番でいきなりの連続バーディ。そして2つのバーディを積み上げ迎えた8番パー5が、ハイライトのひとつになった。

残り212ヤードの2打目で4番ユーティリティ(UT)を振ると、右サイドに大きく伸びるバンカーを越えピンの根元へ。これが左3メートルのイーグルチャンスになった。「惜しかったです。切れちゃいましたね」と次のパットは外れたが、楽々バーディを奪った。

スタッツを見ると、その数字も好スコアの要因を伝えてくる。平均飛距離は288ヤードでフェアウェイヒット率は85.7%(12/14)、パーオン率は83.3%(15/18)。唯一のボギーとなった最終9番も、ドロップした後の3打目を池側に切られたピンがある方とは逆の左サイドに落とし、2パットでロスを最小限に食い止めたものだ。「(キャディの)トムさんも、ここをボギーで切り抜く方法を考えようって。UTに苦手意識があるけど、自信を持って左に、と思ったショットがイメージ通りでした」。こういったすべての要素があす以降への糧になる。

2週前の「T-モバイル・マッチプレー」は、3日間行われたストロークプレーを勝ち抜き決勝トーナメントに進出、5位になった。ただその時は、ショット面で取り組んできたことを「意識しすぎて」、決して本調子ではなかったと明かす。

その取り組みとは、長年クセとして悩まされてきたという「バックスイング時に上体が起き上がることで手元が上がり、ショットが右に出てしまう」というミスの改善。昨季の自身最終戦となった昨年11月の「ザ・アニカ・ドリブンbyゲインブリッジatペリカン」で解決への糸口を見つけ、そこから意識的に練習してきた部分だ。

「私はもともと背中をピンと立てて構えるタイプなので、さらに上体が起き上がるとクラブが(球に)届かない。それを防ぐために、バックスイング時から体を少し沈めて、その状態を保ったままダウンスイングするようにしています」

2週前までは、その意識が強くなり過ぎて振り切れない状態が続いたが、置きにいけばいくほど曲がってしまうのがショットでもある。そこで「どうせ曲がるなら振って曲げたい」と一念発起。それでも練習してきたことはしっかりと体に染み込んでいたようで、メジャー大会での会心のショット連発につながった。「ずっとやり続けていたことがハマりましたね」。課題の打開にもつながったという意味でも、価値のある一日になった。

さまざまな思いを胸に抱いてのスタートになった。キャップには、今月6日に大腸がんのため42歳の若さで亡くなったキャディの渋谷一英さんを悼むため、手作りした喪章をつけプレーした。試合でバッグを担いでもらうことはなかったが、「アマチュア時代からフレンドリーに話しかけてくださった。喋る機会も多くて、すごくいい方でした」と故人をしのぶ。その気持ち、そしてこの日のナイスプレーはしっかりと届いたはずだ。

また初日の18日(木)は、今季から専属キャディを務めるトム・タナカキャディの46歳の誕生日でもあった。そこでサプライズを用意。「最初に“おめでとう”って言わないほうがいいと思って、黙っていました。プレゼントも用意したので、喜んでくれたらいいな」。すべての練習を終え帰路につく時、ラウンドで履けるランニングシューズを贈った。タナカキャディは、英語とカタコトの日本語を織り交ぜ大興奮。感謝や「スゴクウレシイヨ」などの言葉が、チームの雰囲気をより明るくした。

この日は大好きな“阪神カラー”のウェアで出陣。スタート直前に2-1でサヨナラ勝ちした巨人戦のハイライトを見てテンションも上がっていた。「阪神も勝ったし、テル(サヨナラ安打を打った佐藤輝明)も打ったし、最高!」。このノリノリのムードを、2日目以降もコースへと持ち込みたい。(文・間宮輝憲)

© 株式会社ALBA