放射線治療市場に関する調査を実施(2024年)~放射線治療施設へのアンケート調査も含め、2年間で125台のリニアックが更新されたことが判明、同一メーカーへの更新が40.0%(50台)を占め、最多となる~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の放射線治療市場を調査し、放射線治療市場推移、放射線治療施設の動向、放射線治療機器メーカー動向、将来展望を明らかにした。ここでは、放射線治療施設における治療器の更新調査の結果を公表する。

1.市場概況

国内では放射線治療機器が広く普及し、がん診療連携拠点病院や大学病院を中心とした放射線治療実績は着実に増加している。
2023年4月から始まった第四期がん対策推進基本計画では、患者の状況に応じて適切な放射線治療が受けられるように、国や都道府県が標準的治療の提供と粒⼦線治療、核医学治療、画像誘導即時適応技術を⽤いた⾼度な放射線療法の提供体制の在り⽅を検討するとしており、今後も放射線治療市場の活発化が想定される。
がんの放射線治療に関する認知度は向上しており、IMRT(強度変調放射線治療)や、IGRT(画像誘導放射線治療)、VMAT(回転型強度変調放射線治療)などの高度放射線治療や、粒子線・重粒子線治療などの粒子線治療が幅広く選択され、また、温熱治療や放射線増感剤などの併用治療を実施している医療施設が増えつつある。

2.将来展望

本調査に関連して、全国の放射線治療を実施している188施設に対して、放射線治療の状況(患者数や治療件数、治療内容等)や、治療器の使用状況(更新、新設・増設、評価等)などの郵送アンケート調査、電話ヒアリング調査及び当社データベースによる調査を実施した。

前回調査(2022年1月~2月)で使用されていた放射線治療器(リニアック)のうち、125台が更新(リプレース)されたことが今回の調査でわかった。
更新前と更新後の治療器メーカーを確認すると、同一メーカーへの更新が40.0%(50台)と最も多かった。次いで、「SiemensからVARIAN Medical Systems」への切り替え更新が26.4%(33台)、「SiemensからAccuray」へは9.6%(12台)、「SiemensからElekta」へが7.2%(9台)となった。現在、「Siemens」ブランドの放射線治療器は販売されていないため、評価が高いグループ企業の「VARIAN Medical Systems」への切り替えが多いものの、他ブランドへの切り替えがみられた。

また、現行販売している治療器がありながらの他社への切り替えとしては、「VARIAN Medical SystemsからAccuray」への切り替え更新が6.4%(8台)、「ElektaからVARIAN Medical Systems」が4.0%(5台)となった。放射線治療器は新設が少なく更新需要が多くを占める市場ではあるが、調査結果からは同一メーカーでの更新が多いものの、他社への切り替えも一定数発生していることが判明した。

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