【グーグルマップ悪評放置か】医師ら約60人が集団訴訟 事実無根の誹謗中傷も…日本には対応窓口なし“削除は困難”

約60人の医師が、グーグルに対し集団訴訟を起こした。医師らは、グーグルマップに掲載された医療機関の口コミ欄に悪質な投稿がなされたが、グーグルが十分な対策を講じなかったため、利益を侵害されたなどと訴え、損害賠償を求めている。

「院長が冷酷」と悪質な投稿も…

インターネットの地図サービス「グーグルマップ」の口コミに悪質な内容を投稿されても、グーグルが十分な対応をせず、利益を侵害されたなどとして、医師ら約60人が損害賠償を求める集団訴訟を起こした。

訴えを起こしたのは、グーグルマップに医療機関が掲載された全国の医師ら約60人だ。

医師らは病院の口コミ欄に「門前払いされました」「院長が冷酷」など悪質な投稿を書き込まれたが、グーグルは十分な被害防止や救済措置を取らず、利益を侵害されたなどと主張し、合わせて140万円余りの損害賠償を求めている。

グーグルは、「24時間体制で企業プロフィールを保護し、不正なレビューを削除しています。個別の案件に関しては、コメントを差し控えさせていただきます」としている。

「グーグルマップ」日本に削除対応窓口がない。

ネットの口コミサービスというと、買い物や食事などに行く時に参考にされている方も多いのではないだろうか。

その中で今回、このグーグルマップの口コミをめぐり、医師らが集団提訴をした。何が起きているのか見ていく。

ここからは取材センター室長・立石修が解説する。

今回の裁判では、この口コミを投稿した個人ではなく、それを放置したことで営業権が侵害されたとして、その口コミを掲載し続けたグーグル、つまりプラットフォーム側を訴えた。そういう意味で、極めて異例の訴えとなる。

その内容としてはグーグルマップの口コミ欄に、特定の病院や医師に対して「頭がいかれている」や、「人間扱いされなかった」など、誹謗中傷と取れる投稿があるケースがあった。

グーグルマップの口コミ欄を巡っては、アメリカでは既に問題が起きており、金銭を支払い、偽物の口コミを買うというケースもある。

もちろんグーグルマップの口コミ欄には、反論を投稿できる。だが、医師側は医療機関には「守秘義務」があり、公への投稿は難しく、十分に反論が出来ないとしている。

事実関係のチェックを含めて、グーグルに「これは違う」と削除してもらうことはできないのだろうか。

要請はできるが、こういった問題に詳しい梅澤康二弁護士によると、書かれた本人が不快に思ったという理由だけでは、削除の理由にはならないという。

たとえ、グーグルに削除依頼をしたとしても、裁判所の削除命令が必要とされることが多い。その手続きには短くても1カ月、金額にして20万円から30万円近くかかるという。

また、今回会見を行った弁護団によると、グーグルマップについては日本で削除に対応する窓口がない。そのため、アメリカの本社に掛け合うしかなく、事実上削除の要請というのが非常に難しいものになっている。

アメリカでの口コミの削除というのも非常に難しい。グーグルのポリシーに反する、ヘイトやハラスメントなど、そういった事例は割とすぐに削除されるが、申請しても「これは個人の意見だ」「その個人が握った情報だ」といって却下されることもある。

また、日本よりもアメリカは言論の自由が大事にされているため、その侵害だとされていれば、絶対に削除をしてくれない。

口コミについては意味のあるものや、非常に参考になるものもあるが、今回のケースについては、勝手に病院が閉業したことにされたり、事実関係が全く違うこと、住所が太平洋の真ん中に置かれてしまっているようなケースもあった。

このような明らかな虚偽や、人権侵害に当たるような書き込みがあったとしても、グーグル側の対応が取られていない。そのために、医師らはグーグル側に口コミの改善を求めているということだ。

巨大IT企業の独占是正 日本でも議論進む

グーグルは、今や巨大なインフラになっているため、社会に対する公的な責任は大きい。

日本での検索エンジン利用率を見ると、約11%のYahoo!を大きく引き離して、グーグルが約78%で1位になっている。

グーグルを率いるサンダー・ピチャイCEOは、インド系アメリカ人で現在51歳。2022年の報酬は2億2600万ドル(日本円で約350億円)となっている。

インターネットを閲覧するブラウザである「クローム」を開発した優秀なエンジニアでもあって、これもアップルの「サファリ」を大きく引き離して世界第1位となっている。

ただ、会社や市場が巨大化する中で、今回の日本での訴訟のみならず、グーグルが作り上げた世界に様々な疑問や反発が出ている。

グーグルの商品というのは「情報」だ。信頼性や信ぴょう性が落ちると、グーグル本社もマイナスの影響を受ける。そのために、実際に誰が情報を提供しているのか、その信ぴょう性に対する責任や投稿者の紐付けなど、そういう制度を早く作り上げてもらいたい。

ビジネス面でも、EUではグーグルのような巨大IT企業の独占を是正する法案の整備が進んでいて、日本でも新しい法案の準備が進められている。

政府や巨大IT企業の対応も大切かもしれないが、そもそも口コミというモノが、どれほどの信ぴょう性があるものなのか、私たちも理解した上で利用していかなければならない。
(「イット!」 4月18日放送より)

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