年金4万円、団地でひとり暮らしの小笠原洋子さん74歳。1日1000円でやりくりする「ケチカロジー」とは?[前編]

東京郊外の団地でひとり暮らしをするエッセイストの小笠原洋子さん。ひと月4万円足らずという年金受給額の低さによって節約がライフワークとなり、1日1000円でやりくりする生活を長年続けています。そんな小笠原さんの著書『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)より、小笠原さんが名づけた「ケチカロジー」=節約(ケチ)で環境に優しい(エコロジー)生活のコツをご紹介します。

モッタイナイ精神が身につく、ケチの心得

私は低所得者ですから、なんといっても人並みの衣食住生活はできません。皆と同じように、とは考えないのが「ケチカロジー」の心得です。しかし人並みに生活できないことを、みじめだとは思わないこともポイントです。そして、「ケチカロジー」の極意は、貧しさを生きるパワーに変える工夫でしょう。

まず自分が使えるお金は、1日いくらか? 私の場合は1日1000円ですが、皆さんはいかがでしょう。現実を受け入れるため知ることも大切です。計算して、ため息をついている余裕はありません。

限られたお金を最大限活かすため「なにを買うか」をよく考えます。今日いちばん必要なものはなんだろう。好物のケーキだとか焼き肉だとか即答しないでくださいね。時には栄養価の高いサツマイモを茹でて食べ、寒さに備えて漢方薬の購入に回したほうがいい場合もあるからです。

また、せっかく節約しているのに、「食品ロス」はご法度です。たとえば冷蔵庫の奥に、しなびたニンジンなどを見つけたら、その日のメニューはニンジン炒めに決定。残った野菜は冷凍です。さらに、歯磨き粉がないと慌てたときは、すぐ買いに行ったりしないでハサミでチューブを切断してみましょう。最尾部やフタの周りにも、ほら相当残っているでしょう? これを歯ブラシや爪楊枝で取り出せば、少なくとも5日分にはなりますよ。

そんなふうに、なにか他のもので補えないかと探したり、考え抜くのです。普段見逃していても、自分の生活圏ですからじつはわかっているはずで、なにかしら見つかったり、思いついたりするものです。そんなことでも脳トレになりますし、探しながら片づけに結びついたりもします。もし、やってみようという意欲が出ましたら、それを持続させ、発見の喜びを一種の活力に変えていきましょう。

外出はもっぱら、遠出よりも近所の散策。気がつかないでいた地元の細部の発見も喜びの一つ。

食品ロスとは無縁。生ゴミの出ない生活

生ゴミの量は食品ロスにもつながります。最近、地元のタウンニュース紙に、ロス削減の記事が出ていました。『買いすぎゼロ・つくりすぎゼロ・食べ残しゼロ』の推奨です。自治体ではゴミ処理によほど困っているようで、路線バス内では「生ゴミを減らそう、水きりをしよう」という放送が流れます。

年金暮らしであまりものを買えない私は、ほとんど買いすぎがなく、少ない量の食材でやりくりするのでつくりすぎもなく、ケチな私には食べ残しなどもってのほかです。

お茶を飲めばその葉を食べます。大根やニンジン、リンゴはむろんキウイや柿の皮、キャベツの芯、それにスイカの白い部分、またはゴーヤのワタやピーマンの種、焼き魚の頭など食べられる限りは骨まで食べつくしますので、ゴミは微量です。ジャガイモの皮をむくときは、流しに直接皮を落とし、あとは指でつまんでゴミ袋に入れるので水分はほぼゼロです。

ティッシュペーパーもゴミを膨らませる要因なので、買いません。汚れを拭く場合はなるべくふきんを使ったり、必要な分だけちぎれて、水に流すこともできるトイレットペーパーを代わりに使っています。汚れたプラスチック容器などは、切り刻んで捨てるとかさばらず、チラシなどは資源ゴミに出すので、生ゴミになるものは少量で済みます。

ティッシュボックスは買わないので、室内ではトイレットペーパーを活用。むき出しは嫌なので、お菓子のパッケージや箱に入れます。

また、流しに、生ゴミ用の三角コーナーを置きませんし、台所には調理道具も少なく、大小の鍋とレンジ対応の一合炊き釜くらい。ザルは大小ありますが、お玉はレンゲで代用します。ひとり暮らしにはそれで十分です。そんな私がよく使うのが、切れ味抜群の調理用ハサミです。包丁も持ってはいますが、いちばん使うのは切れ味のいい果物ナイフとこのハサミです。

キッチンバサミは大活躍。食材は、ほぼほぼ全部食べ切ります。

食器もわずかで、飯碗と汁椀、大小の小鉢と中小のお皿くらいです。食生活に器は欠かせませんが、戸棚を食器でいっぱいにするのも地震の際、危険です。大小で5器ほどが入れ子になった木のお椀を、マイ食器とする僧侶に憧れる私は、いつかその程度に収めたいと夢見ています。食器は調理道具と共にシンク下の収納に収まっています。

ものを少なくすると、今あるものを大事に扱うようになったり、大切に食べ切ったりして、物品ロスや食品ロスが減るものです。

高齢者向けの3LDKの賃貸。住まいの基準は、とにかく「もの」を最小限にすること。

※この記事は『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

撮影/星 亘(扶桑社)

【後編に続く】


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