繰り返す事故に病気の影も 県警DB、クレーン車事故契機に12年 免許取り消し・停止87人

 鹿沼市で2011年4月、登校中の児童6人が死亡したクレーン車事故に関連し、栃木県警が再発防止策の一環として12年から運用を始めた「交通事故情報データベース」(DB)で、24年3月末までの約12年間に、てんかんや統合失調症など一定の病気の影響で運転に支障があるとして計87人が運転免許の取り消し・停止処分となったことが18日までに、県警への取材で分かった。DBは交通事故を繰り返す悪質運転者の摘発などにつながっているという。

 6児童が死亡した事故では、クレーン車の運転男性が過去に10回以上の交通事故を起こしていたことが後に判明。鹿沼市内で登校中の男児をはねて重傷を負わせたこともあったが、病状を明かしていなかった。

 県警はクレーン車事故の発生まで、男性の過去の物損事故情報などを共有できなかった。再発防止策として県警は12年3月、従来の人身事故に加え、物損事故情報のデータベース化を開始した。事故を頻繁に繰り返す運転者を把握し、重大事故の防止や事故捜査の強化に役立てている。

 県警交通指導課によると、DBには交通事故の発生日時や場所、運転者、事故形態を警察官が入力する。DBには過去10年分の人身事故と過去5年分の物損事故が登録され、24年3月末現在、32万4243件を保存している。このうち交通事故が2回以上の当事者は8万5166人、4回以上は6910人に上る。

 12年の運用開始から24年3月末までに、複数回の事故当事者のうち、事故状況などから一定の病気の疑いがあるとされたのは3372人だった。このうち診断書の確認などで一定の病気に該当したのは1201人。医師の診断などに基づき、運転免許の取り消しとなったのは50人、免許の停止処分は37人だった。

 DBの運用について、県警交通指導課の担当者は「以前は頻回事故者の把握が難しかったが、DBによって捜査対象者を早期に抽出できる。悲惨な交通事故の抑止に努めたい」としている。

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