水温上昇などでアユに異変 産卵時期・大きさ 専門家「漁期の再設定も」 岐阜

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塩焼きに、甘露煮…岐阜の名産品の「アユ」。5月から長良川でアユ漁が解禁されますが、今、アユにある異変が起きているといいます。

5月11日に、アユ漁が解禁され、長良川鵜飼も開幕します。それに先立ち、地元の漁協が主催し、豊漁と安全祈願に加え、稚アユの放流を行いました。 放流した稚アユ、その数約2万匹。体長は約10cm、重さにしても約10gです。 「鵜飼いが始まるころには、立派に成長しているはず」と鵜匠の杉山雅彦さん(63)もアユの豊漁に期待を寄せています。 「アユの遡上は順調ときいている。たくさんアユがとれるようがんばります。天然の長良川のアユは世界に誇るおいしいアユと思ってとっている」(鵜匠 杉山雅彦さん)

「昔に比べて小ぶりな魚が多くなってきた」

夏の川のシーズンに入ると、友釣りや漁などで県内の河川は賑わいます。 岐阜県にとって、アユは生活と文化に密着した魚です。一方で、近年アユにある「異変」が起きているといいます。 「昔に比べて小ぶりな魚が多くなってきた」(鵜匠 杉山雅彦さん) 今回放流した稚アユを育てた岐阜県美濃市の「岐阜県魚苗センター」。 このセンターの関係者は「アユの大きさ」だけではない「異変」を感じているといいます。 「温暖化の影響か、詳しいことはわからないが、秋の産卵時期が少し後ろ倒しになっている気がする。40年前は10月上旬にピークがきてたのが、最近では10月半ばに」(岐阜県魚苗センター 舩木和茂さん)

産卵のために川を下る時期に大きな変化

一体、アユに何が起きているか。 河川の生態などを研究する、岐阜大学高等研究院の永山滋也特任助教が、2020年に長良川のアユの生育分布などを調査。するとある変化が判明したといいます。 「(2020年)8月に岐阜市や関市あたりの本川で渇水して、水温もすごく上昇するという状況が起きたんですが、それによって中下流部のアユが非常に少なくなっているという現象が捉えられた」(岐阜大学高等研究院 永山滋也特任助教) アユは1年で生涯を終えるため「年魚」とも呼ばれます。 本来、秋に川でふ化をすると冬の間、海で成長し春に川を上ります。そして夏場に上流や中流で過ごし、秋に産卵のために川を下ります。 調査では、夏場のアユは、渇水や水温が高くなった長良川の中流や下流を避け、上流や支流に多く生息していたことが判明。 そして、水温の上昇により、産卵のために川を下る時期に大きな変化が出ていることが分かりました。

「産卵に川を下ってくる時期が遅れてきている」

「1日の平均水温が明確に18℃を下回ってきてかつ、そこに雨が降って川の水が増えると、アユが一気に川を下ってくるという現象がはっきり見えた。川の水温がなかなか下がらないために、産卵に川を下ってくる時期が遅れてきている。50年ぐらい前に比べると、どうも1か月ぐらい遅れている」(岐阜大学高等研究院 永山滋也特任助教) 産卵の時期が遅れている一方で、春の遡上する時期は変わっていないためアユの小型化につながっているのではないかと推測します。 アユの漁の時期や方法は規則で決められていますが、アユの行動時期が変わることでアユ釣りや鵜飼のシーズンを見直す必要がでてくる可能性があると話します。 「今後も温暖化で、川の水温上昇が続くと、そういう漁期の再設定みたいなこともリスク管理として考えておくということも大事だと思います」(岐阜大学高等研究院 永山滋也特任助教)

環境の変化に大きく左右される「アユ」

行政も、実態解明に向け動き出しています。 岐阜県などは、長良川のアユを温暖化に対応し、より大きく成長させるための実証調査に乗り出しました。 先月25日には、地元の園児らと共に稚アユを放流。 地球温暖化の影響で春の川の水温が高くなってきているため、これまで4月に行ってきた稚アユの放流を1カ月ほど早め、5月の漁解禁までにより大きく成長させる狙いがあります。 放流した稚アユは、ひれの一部が切除されていて捕獲した際の大きさを検証する予定です。 環境の変化に大きく左右される「アユ」。岐阜の名産品を守っていく取り組みはこれからも続きます。

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